(C)Photo: Ayako Yamamoto

約2年7ヶ月ぶりの新譜は、スケール感と繊細さを備えたロシア作品集!!

 2014年の衝撃のドイツ・グラモフォン・デビューから早いもので約2年7ヶ月。6歳の時に自らの意志でロシアに留学し、長年に渡って本場で研鑽を重ねる注目の若手、松田華音(p)が待望の2ndアルバムを発表した。収録曲には、プロコフィエフの《ロメオとジュリエット》から10の小品と、ムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》という近現代ロシアの傑作が並ぶ。

松田華音 ムソルグスキー:展覧会の絵 DG/ユニバーサル(2017)

 「前作は私が長い間弾き込んできたソナタや小品を集めた作品集でしたが、今回は今年で留学15年目になるロシアの大作に挑戦しました。まずは、昨年の夏から冬にかけて人前で弾く機会があった《展覧会~》を録音したいという想いから始まり、その対に大好きなプロコフィエフのバレエを選んだんです」

 最後の第10曲〈ロメオとジュリエットの別れ〉でも顕著なように、美しく精緻なピアニズムが光る《ロメオ~》。それは知性派の松田らしい取り組みの賜物と言えるだろう。

 「多彩な人間模様を描いた原曲(管弦楽)の色彩感を、ピアノ1台でどう表現するか。そのために旧ソ連最高のバレリーナ、ガリーナ・ウラノワが踊る映像を何度も視聴したり、シェイクスピアの原作を読んだりして、イマジネーションを喚起しました。あと、過去の巨匠が残した名盤も色々と聴きましたね。特に好きなのはピアノだとガヴリーロフとキーシン。管弦楽版だとムラヴィンスキーの指揮した演奏です。他にもロジェストヴェンスキーの録音がいいと聞いているので、ぜひ近いうちに視聴したくて」

 《展覧会~》に関しても、リヒテル、ホロヴィッツ、プレトニョフ、キーシンなどロシア系の愛聴盤を次々と挙げる松田。今年2月に軽井沢大賀ホールでセッション録音した当盤では、ミケランジェリが使用していたハンブルグ・スタインウェイの名器を使用している。

 「ホールも楽器も前作と同じ最高の環境で録音できて幸せでした。《展覧会~》は、昨年の音楽分析の授業(モスクワ音楽院)でも勉強した作品で、その際に教材だった冨田勲さんのシンセサイザー版を聴いたことで、各曲の風景をより鮮明にイメージできるようになりました。今回の録音で特に苦労したのは、全部で5回も出てくる〈プロムナード〉。中でも、調性とテンポが同じ〈第1〉と〈第5〉をどう弾き分けるかに悩みましたね」

 松田は今年、6月、8月、10~11月に来日公演を開催。10月30日には東京オペラシティで当盤の発売記念リサイタルが行われるので、「繰り返し弾いて磨いた録音とは違う、ライヴならではの緊張感やひらめきをお届けできれば」と語る彼女の妙技にも期待が高まる。

 


LIVE INFORMATION

アルバム発売記念リサイタル
○10/30(月)19:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール
【曲目】
プロコフィエフ:《ロメオとジュリエット》から10の小品、
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》 他

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