現在、デビュー30周年イヤーの真っ最中であるUA。2月18日には30周年を祝した約10年ぶりのフルアルバム『NEWME』をリリースし、今は同作を引っ提げた全国ツアーを実施中だ。
新作『NEWME』でUAは、ミュージカルでの共演経験もある藤原さくら、フィメールラッパーのMFS、息子である俳優の村上虹郎など幅広いジャンルのアーティストとコラボレーションを行っている。振り返ると、UAは様々なクリエイター/アーティストとの邂逅を通して、その独特な歌声や感性を作品へと昇華してきたキャリアを持つ。本稿ではこの30年、彼女の作品をともに創出してきた面々を紹介しながら、その豊かな化学反応の数々に注目してみたい。
藤原ヒロシ、朝本浩文、青柳拓次がバックアップしたデビュー初期
1995年リリースのデビューシングル“HORIZON”は、藤原ヒロシが作曲と編曲(朝本浩文と共同)を担当した楽曲だ。80年代、日本のクラブカルチャーを牽引していた藤原だが、“HORIZON”では90年代に入って自身の作品でも展開していたメロディアスなダンスミュージックの要素を全面に打ち出し、UAのハスキーな歌声を浮遊感たっぷりに響かせている。当時、小泉今日子や藤井フミヤといった既にキャリアのあるシンガーに楽曲提供していた藤原にとって、まっさらな新人であったUAは未知の可能性を秘めた存在だったのだろう。
藤原がトータルプロデュースを手掛けた1stミニアルバム『PETIT』は、親しみやすいポップスでありつつもアンダーグラウンドシーンとも調和するバランスを探り当てた作品で、UAのその後の活動の原点となるに相応しい1枚だった。
『PETIT』に収録され、後にシングルカットもされた彼女の代表曲の1つ“太陽手に月は心の両手に”を藤原とともに手掛けていたのが朝本浩文。ダブバンドMUTE BEATのメンバーとして活躍していた朝本は、“情熱”以降、彼女のヒット曲を数多く制作した。
朝本は、シングル版ではR&Bの要素が色濃かった“情熱”をアルバム収録時にはダブアレンジに仕立てたり、土臭いロックサウンドを基調とする“雲がちぎれる時”、レゲエのグルーヴが心地よい“甘い運命”など、次々に音楽性を切り替えながらUAの表現の可能性を拡張し、記名性の強い楽曲を生み出し続けた。UAも過去インタビューで朝本について「UAをUAにしてくださった方」と振り返っており、彼女のソウルフルな歌唱の魅力を引き出したクリエイターの1人と言えるだろう。
朝本と同様にデビュー初期からUAに携わっていたのが、LITTLE CREATURESの青柳拓次である。1stアルバム『11』収録の“大きな木に甘えて”の作曲を担当して以降、アコースティックギターや民族音楽風のアレンジを用いて印象的な楽曲を手掛けていった。
内省的でアンニュイなムードに傾倒した2002年の4thアルバム『泥棒』からは、同じくLITTLE CREATURESの鈴木正人も制作と演奏に加わり、2009年の8thアルバム『ATTA』ではLITTLE CREATURESがバンドとして一部楽曲に参加。制作陣の変化に合わせるように、UAの書く歌詞も恋愛のモチーフが多かった初期と比べ、この時期は幻想的かつ壮大な目線で生命や人の営みを捉えるようなものが増えていった。こうしたUA自身の成長と変化を踏まえても、強烈なアート性と特徴的な作風を持つクリエイターたちとの親和性が高かったことが窺える。
2016年、前作から7年ぶりのリリースとなった9thアルバム『JaPo』では青柳が全楽曲で編曲を担当。神秘的でありながら祝祭感も漂う作品に仕上げ、UAの精神性までサウンドに反映することに成功していた。
浅井健一とAJICO結成、レイ・ハラカミや内橋和久との先鋭的コラボも
2000年代の内省的な作品では先鋭的なコラボレーションも多かった。2002年の“閃光”ではレイ・ハラカミがアレンジャーとして参加。アンビエントな風合いのある、静謐でしとやかな電子音によるサウンドメイクはこれまでのUAにはない斬新なものだった。2005年の6thアルバム『Breathe』では、即興演奏家として異彩を放っていた内橋和久による不可思議なトラックを乗りこなした。これらの音像もまた、UAの心象風景や抱えている観念を表現するうえで必要不可欠なものだったと言える。
このようにUA自身の気分や感情と連動しながらサウンドを移行するというアプローチは、彼女が沖縄やカナダへ移住したこととも関連付けることができる。UAにとって様々なクリエイター/アーティストとその時々で結びついていくことは、精神的な〈移住〉に近いと言えるかもしれないからだ。朝本や青柳といった深く長く繋がり合って心の基底となる人物もいれば、レイ・ハラカミや内橋といった瞬間の心模様を描くために求められた人物もいる。その両方がUAのライフスタイルやバイオリズムを投影した楽曲を作る上では欠かせないのだ。
そうした意味でも、UAにとって大胆な〈移住〉と言えるのが、BLANKEY JET CITYを解散したばかりの浅井健一とロックバンドAJICOを結成したことだ。1999年の3rdアルバム『turbo』に楽曲を提供していた浅井だが、ラジオから流れてきたUAの曲を初めて耳にした時、〈自分の中ですごくしっとりとした音楽が生まれ、この人に歌ってほしい〉と思ったという。
AJICOではざらついたギターのロックナンバーやサイケデリックなサウンドを展開し、UAのキャリアにとって新たな風をもたらした。浅井の乾いた歌声に対してUAは凛とした歌声で応えており、歌唱面でも強い個性を交差させていた。
長らく活動休止状態だったAJICOだが、2021年には20年ぶりに再始動を果たし、2024年には2nd EP『ラヴの元型』をリリースするなど、より円熟味を増した艶めかしいロックナンバーでシーンを沸かせた。長い時間を経ても刺激的で緊張感のある異色のコラボレーションによるインパクトは絶大だ。
菊地成孔との邂逅で浮き彫りになった歌唱の特異性
そして、サクソフォン奏者であり、ジャズミュージシャンの菊地成孔とのコラボレーションも重要だろう。2004年のUAのツアーメンバーの1人として参加するなど、すでにステージ上での共演経験もあった両者だが、2006年にUA × 菊地成孔名義でのアルバム『cure jazz』を発表して以降、数年おきに音源のリリースやライブ活動を行っている。ジャズのスタンダードナンバーをカバーすることも多く、抑揚の効いた英語詞による歌唱が特徴的だ。セッション性の高いライブでは即興でのボーカルも披露し、UAの刹那的でエネルギッシュな表現が引き出されている。

元々UAは大阪のジャズクラブで歌唱していたことが音楽活動の原点にあるだけに、菊地とのコラボはその再確認の場になっているように思う。聴き馴染みのあるナンバーだからこそ、UAの歌唱の特異性が浮き彫りになるのだろう。
2020年代に入ると更にコラボレーションの幅は広がっていく。2022年のEP『Are U Romantic?』ではマヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)、JQ(Nulbarich)、中村佳穂に加え、永積崇(ハナレグミ)、岸田繁(くるり)、Kj(Dragon Ash)から楽曲提供を受け、自身と作り手とのカラーを混ぜ合わせるように新たな表現の境地を開拓した。
そして新作『NEWME』を締め括った“Twilight Before Sunrise”は、坂本龍一が生前に作曲していた楽曲だ。UAと坂本といえば、2023年に神山まるごと高専の校歌“KAMIYAMA”を共作していたが、“Twilight Before Sunrise”はそれ以前にUAからのオファーを受けて坂本がプレゼントしていたもので、そのたおやかで流麗なメロディが荒木正比呂と西田修大の手で美しく編曲されている。
UAが影響を受けた偉大なる先人アーティストと、彼女の現在の音楽を支える才能が時を超えて共作を果たす。UAを介することで、本来は不可能であったはずのコラボレーションが実現したのだ。
今のUAは圧倒的な個性を放つ表現者であると同時に、才気溢れる後進アーティストをフックアップする立場にもなりつつあるように思う。また、もうこの世に居ないアーティストが遺した表現を歌い継ぐ存在でもある。朝本浩文、レイ・ハラカミ、坂本龍一。彼らの魂を宿した楽曲は、この先もUAを介して何度でもステージで解き放たれていく。
生と死が混ざり合った大いなる自然について描いてきたアニミズム的な価値観を持つ詩人であることも影響してか、UAは年々〈歌い継ぐ存在〉としての説得力も強めている。30年間、絶え間なく様々なクリエイターと邂逅し、自身の表現を磨いてきたUAだからこそ到達し得たユニークでワンダーな境地だ。
■参考文献
https://news.j-wave.co.jp/2025/05/content-4211.html
https://www.asahi.com/and/w/article/15830196
https://www.bluenote.co.jp/jp/news/features/11358/
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年2月18日(水)
配信リンク:https://jvcmusic.lnk.to/UA_NEWME
■初回限定盤(CD+Blu-ray)
品番:VIZL-2450
価格:8,500円(税込)
■通常盤(CDのみ)
品番:VICL-66070
価格:3,630円(税込)
TRACKLIST
CD
1. NEWME
2. Mood
3. Happy
4. ZOMBIE feat. 村上虹郎
5. まわるみらい feat. 藤原さくら
6. WAKEUP feat. MFS
7. GORILLAS are still very shy
8. 変身
9. Tonic
10. ALK
11. Twilight Before Sunrise
Blu-ray *初回限定盤のみ
1. HORIZON
2. お茶
3. 微熱
4. リズム
5. スカートの砂
6. Mood
7. ALK
8. 愛を露に
9. 電話をするよ
10. TORO
11. 雲がちぎれる時
12. 数え足りない夜の足音
13. ミルクティー〜Love scene〜2人
14. AUWA〜TIDA
EN1. Happy
EN2. 情熱
EN3. 甘い運命
EN4. 太陽手に月は心の両手に
LIVE INFORMATION
NEWME 026 ※終了分は割愛
2026年3月27日(金)愛知・アマノ芸術創造センター名古屋
2026年3月29日(日)大阪・NHK大阪ホール
BOOK INFORMATION

発売日:2026年3月13日(金)
ISBN:9784401657070
価格:2,500円(税込)
サイズ:四六判
ページ数:320ページ
■タワレコ特典
しおり1枚(先着)
※ご予約済みのお客様も対象となります
※商品ページで〈特典あり〉の記載がない場合は特典対象外となります
※複数枚を1回でご注文された場合、商品がすべて揃うまでに特典の保管期間(発売日より1カ月)を経過すると、自動的に特典付与対象外となります
※特典の数には限りがございます。限定数満了次第、終了とさせていただきます
※タワーレコード店舗とオンラインでは特典の運用状況が異なる場合がございます。店舗でのご購入で特典ご希望のお客様は、各店舗に運用状況をご確認ください
詳細ページ:https://tower.jp/article/feature_item/2026/02/24/3002
PROFILE: UA
歌手。UAとは、スワヒリ語で〈花〉という意味を持つ言葉。大阪府出身。母方の故郷は奄美大島。1995年にデビュー。“情熱”“悲しみジョニー”“ミルクティー”などのヒット曲を持ち、AJICOやUA × 菊地成孔でも活動。2003年にNHK Eテレで放送された「ドレミノテレビ」では、うたのおねえさんとしてレギュラー出演。2023年には、UAが歌ったJR東海のCM曲“会いにいこう”が話題となり、20年ぶりに新たに東海道新幹線のチャイムに使われる。ボーカリストとして様々なアーティストの楽曲にも参加。また映画「水の女」「大日本人」「eatrip」にも出演。
また、α-STATION「FLAG RADIO」でDJを務めるなど、その活動は多岐にわたる。そんな幅広い活動と並行し、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。4人の子供の母親で、現在はカナダに居住。
デビュー30周年を迎えた2025年6月20日には、30th Anniversary Yearの最初のリリースとなる配信シングル“Happy”をリリース。そしてデビュー記念日となる6月21日には、日比谷野外大音楽堂にて〈30th Anniversary Live〉を開催。
2026年2月18日には約10年ぶりとなるフルアルバム『NEWME』をリリース。現在全国ツアー〈NEWME 026〉を開催中。







