TOWA TEIが手がけた話題のクライム・アクション・アニメのサントラ

 尽きせぬレコード愛を綴った通算10枚目『LP』から間を開けずに届いたTOWA TEIの新作は、「キャロル&チューズデイ」で知られる堀元宣が新たに手がけたアニメ「スーパー・クルックス」のサントラ『SUPER CROOKS (SOUNDTRACK FROM THE NETFLIX SERIES)』だった。一風変わったクライム・アクション作品を作るにあたり監督が求めたのは、TOWA TEIならではの持ち味が発揮された無国籍でお洒落な劇伴というものだったが、進行の問題から画を観ずに制作せざるを得なかった模様。これは相当苦労されたのでは?と想像したのだが。

 「それがまったくなくって。僕の音楽でやりたいという監督の強い思い入れがあったおかげで具体的なイメージが共有できて、頭のなかでパズルを作るようにやれた。提出した曲はいずれも一発OK。あと制約の少なさもあってかなり自由にやれたし、限りなくソロに近いアルバムになったと思う」

TOWA TEI 『SUPER CROOKS (SOUNDTRACK FROM THE NETFLIX SERIES)』 コロムビア(2021)

 かつての松本人志監督作「大日本人」の奇想天外な劇伴とも違うカラフルでポップな感触が漂うこのサントラ。UAをフィーチャーした“SUGAR”といったキャッチーな既成曲を随所に配しているせいもあって、アニメを抜きに単体のアルバムとしても楽しめる魅力的な作品集だと書き加えておきたい。ちなみに筆者お気に入りのトラックは、坂本真綾が演じるヒロインのテーマ曲“KASEY”で、全体を包み込む甘いムードには古き良きスクリーン・ミュージックを連想させる趣がある。こういうメロディにはテイ氏が思い描く理想的な映画音楽観が反映しているのでは?

 「そうだね。自分で言うのもなんだけどキャッチーだと思う。アルバムのなかでも唯一の常套手段を用いて作った曲で、ロジックではなく気持よさを優先してみた。最初に作ったドローン的な“AWAKENING”、ヒーローのテーマ曲であるウェスタン的な“JOHNNY”、この3曲が僕の考えるサントラ像の幅になるんじゃないですかね」

 最後にテイ氏が理想とする映画音楽、気になった映画音楽などを教えてもらおう。

 「細野(晴臣)さんが手がけた『万引き家族』の劇伴が好きで。ミニマムだけどマックスというか、引きの美学を追求したあの形にすごく憧れる。映画をいろいろ観てきたなかで思うのは、音楽が少なくて流れていたことすら気が付かず過ぎていったりするのがいいなって。あとライアン・ゴスリング主演の『ドライヴ』。全編四つ打ちのテクノっぽいサウンドで統一されているんだけど、シーン転換で効果的に使われていて良いんですよ。既成曲を使う場合だと『インヒアレント・ヴァイス』のカンや『ブロークン・フラワーズ』のエチオピアン・ジャズだとか、ああいう絶妙な組み合わせのものをやってみたいですね」