
男と女か? 事実かファンタジーか? 聴き手に想像を委ねて
――そして、サウンドは先ほどもお話いただいたように“ULTRA”と同じ布陣です。制作アプローチで違ったことはありますか?
「“タイムトラベラ”はいろんなことを試しました。たとえば〈男女〉をどう表現するか。上ハモと下ハモで男女を感じさせるパターンもあるし、パンニングで表現するパターンもあるし、リスナーに委ねるパターンもある。それをいろいろ試して、耳で薄く男女を感じられて、かつリスナーが想像できるように落とし込みました」
――あえて男性と女性、どちらが歌っているかわからないようにしたと仰っていましたもんね。
「そう。かつ、これは事実なのかファンタジーなのか。サビの部分はリアルに近いけど、本当に存在しているのかもわからない。そういった部分も藤家くんと相談をしながら表現していきました」
――歌唱法はいかがでしたか?
「最初の仮歌はボカロに歌ってもらっていたので、音程に揺らぎがなくて必ず正しかったんです。なので、1回目のレコーディングの時はそれに寄せて歌ってみたんですね。でも何か違っていて。別日に僕が持っているノリや〈こう歌いたい〉という思いを自由に表現して、再レコーディングし直しました」

新たな歌声に挑戦して広げた表現の幅
――北山さんらしさが出ているボーカルに注目して、聴いてみます! そして3曲目の“11:11”。
「この曲はフィーチャリング曲なので、歌うことに特化していて。SHUNくん、Juaくん、SERINAちゃんの世界観に僕が混ざったらどうなるかな、と。今作で新しい発信をしていくのだから、こういう試みがあってもいいんじゃないかとチャレンジしました。
チームから楽曲ができたと言われたので、聴いてみたらこんなにいかついのが来て(笑)」
――でも、北山さんに合っているなと感じました。
「大変でしたけどね。中に入っても浮かないように表情や声色を探って、〈こういう表現方法もあるよね〉と挑戦してみて。自分の活動の幅を広げるという意味を持った楽曲になりました」
――他の3アーティストとすごく溶け合っているように感じましたが、それは北山さんが合わせたのか、それとも自ずと合ったのか、どちらだったのですか?
「どうだろう。デモを聴いた感じの雰囲気で何となく〈こっち方向ね〉というのはキャッチしていたと思います。〈こういうふうに歌ってほしいのかな。だけど、こういうふうに歌ってみようかな〉と探ってレコーディングしました。すでに3人の声が入っているところに僕が歌を入れていったので、世界観ができ上がっていたんですよ。なので、自然と自分のパートも合ったのかもしれません」
――やはり、“ULTRA”や“タイムトラベラ”とは歌い方を変えているのですよね?
「そうですね。“タイムトラベラ”は艶っぽく、“ULTRA”は爽やかさを出しつつも包みこまれるような感じを意識しています。だけど、どこかガツッとした強さも入れていて。感覚の部分が大きいのであまりうまく言語化できないんですけど、“11:11”は僕がラップをする時によく使う声を使いました」
――北山さんの中には〈こういう曲ならこの声〉という使い分けができている、と。
「明確ではないですが、あるにはあります。でも、ライブとなるとまた変わってきて。ライブだと声色というよりも音がよく鳴る歌い方や、喉を潰さない歌い方になるんです。レコーディングだと、テイクを重ねていく中でチャレンジした歌い方をしたり、いきなり試しで出してみる音があったり」
――それはこれまでの経験の中で培ってきたものだと思うのですが、普段聴いている音楽からヒントを得たりもするのでしょうか。
「ある時もありますよ。でも、僕は真似をしてもうまくできないんです。それで練習するじゃないですか。わざと変な声の出し方をしてみたりすると、〈自分の声帯ってこうなっているんだ〉と気づく。そこから〈この声は使えるかも〉と発見していくことの方が多いですね」