Meg BonusのEP『18PERSONAL』(2024年)は恐るべき新人による衝撃的なデビュー作だった。リリース当時、メンバーの野本慶は弱冠19歳。それ以降は彼のソロ・プロジェクトとなり、2025年のファースト・アルバム『New,man』では、ヒップホップやオルタナティヴR&Bからエレクトロ・ポップ、ポスト・クラシカルまでを同一線上に捉えたサウンドを展開した。物心ついた頃からYouTubeで音楽を貪ることが当然の世代ならではの、混沌とした音像は実に鮮烈だった。

Meg Bonus 『TO THE YOU (ME) I MET BEFORE』 Meg Bonus(2026)

 そんなMeg Bonusによるセカンド・アルバム『TO THE YOU (ME) I MET BEFORE』は、理想的な環境だったというスタジオで、高橋佳輝(ベース)ら信頼できるミュージシャンたちと創り上げた渾身の一作だ。“OVERLAP”“LOVE”といった曲では生のストリングスが壮麗な響きを添えており、これまで以上に構築的なアルバムとも言える。

 「いままでも作り込んではいたんですけど、今回は作り込み方の方向性が少し違いますね。前作までは、人の期待を裏切るとは言わないまでも〈ひねっておもしろいことをしてやろう〉という作り方をしていたんです。でも、今回はもうちょっと素直にパーソナルな部分を見せられていると思いますね」。

 そうしたモード・チェンジの結果、メロディーの精度が飛躍的に向上し、どの楽曲もこれまで以上の普遍性を宿している。そのサウンドメイクは、作曲というよりサウンドをデザインしているような印象を受ける。あるいは、野本は〈音の建築家〉と呼ぶのがふさわしいのかもしれない。

 「確かに構築美には惹かれますね。 フランク・オーシャンの『Blonde』のレヴューに〈音の建築〉って書かれていたのを覚えています。あと作曲家の坂東祐大さんも実は建築家になりたかったそうなんです。ただ今回は、音を積み重ねるんじゃなくて、音数を減らすことでひとつひとつの音にインパクトを持たせたかった。沈黙が続いたあとに大味なシンセが一発入ってきたら、感動してしまいますよね。ボン・イヴェールのアルバム『22, A Million』も途中までずっとベースレスで、6曲目で突然ベースがダブルで入ってくるんですけど、それも念頭にありました」。

 また、過去には1曲のなかに複数の音楽的リファレンスを取り入れていた野本だが、新作では特に50~60年代に生まれた、ノスタルジーを感じさせる米国のポップ・ミュージックからの影響を昇華したという。“OVER”における砂糖菓子のように甘美な旋律などはその筆頭である。

 「古き良きアメリカ音楽の多幸感溢れる感じがいいなと思ってました。 エルヴィス・プレスリー、オーティス・レディング、テンプテーションズ、グレン・キャンベルとか。タイラー・ザ・クリエイターがアル・グリーンをサンプリングしていたのにも共感したし。だけど、このアルバムは1曲1曲に明確なリファレンスがあるわけじゃなくて。前までは何かの曲に衝撃を受けて、〈こういうことをやりたい〉って参考にしてきた部分もあったけど、もうそれを楽しいと思えなくなった。もっとクリエイティヴなことがしたかったんです」。

 ドリーム・ポップを更新したようなテクスチャーがあるのも特徴で、野本は「アルバム全体で夢の中を旅するようなサウンドを意識していた」という。インタールード的な“YOU”などはその極端な例だろう。サイケデリックで催眠的なベースのドローンが、深い酩酊にリスナーを誘う。

 「昼寝していて、〈いま、絶対深い睡眠の中で起きていたな〉という瞬間があるじゃないですか? 夢と現実が混ざっちゃって、〈あれ? いま何していたんだろう〉となるような。そういう感じを音楽で再現してみたかったんです。だから意図的に不安定なまま進んでる曲もあって、それも今回の新しい試みでしたね」。

 


Meg Bonus
20歳のシンガー・ソングライター/プロデューサー、野本慶によるソロ・プロジェクト。2024年5月から活動を始め、同年10月に初EP『18PERSONAL』を配信で発表。2025年にリリースしたファースト・アルバム『New,man』が〈タワレコメン〉に選ばれるなど注目を集める。同年12月に初のワンマンライヴを新宿MARZにて開催。今年2月の配信シングル“MERMAID”を経て、4月8日にセカンド・アルバム『TO THE YOU (ME) I MET BEFORE』(Meg Bonus)をリリースする。