
ライブの熱気に後押しされた〈この音楽は残さなきゃいけない〉という思い
――レコーディングの話は、どのように進んでいったのですか?
伊佐津「私がこの4人で音を残したいという思いがまずありました。信州ジャズは、私のオリジナル楽曲中心で、思い付いたメロディをメモするところから作り始めた曲をこのメンバーが音にしてくれるというのが最大の幸せです」
坂上「この2年間、安曇野、松本、長野市でライブをやるなか、お客さんの〈待っていました!〉感がすごくて、なかには泣いている人もいて。その熱気、雰囲気にも後押しされて、さゆりさんは、〈この音楽は残さなきゃいけない〉となったんだと思います」
伊佐津「なので、ライブで手応えがあった曲から選んでいます」
帆足「リハのたびにさゆりさんが5曲ずつくらい新曲を持ってくるので、待って! 候補曲がたくさんありすぎると(笑)。カバー曲もライブで演って楽しかったので、これも入れたいとなりました」
――以前ジャズ・イリゼのアレンジについて、アイディアが降ってくると話されていましたが、作曲もそんな感じですか?
伊佐津「そういうこともあります。基本的にメロディの出だしが大切で、いいものが浮かんだら発展させて、イマイチと思ったらやめてしまいます。
“Shooting Star”という曲は、20年以上前に書いたんですけれど、一瞬というか、ピアノに座って出だしのメロディが浮かんだら、その先が自然に出てきました。スーッと先まで書けた曲は、凝っていなくて素直でいいのかもしれないです」
坂上「素直で凝っていないと言ったけれど、転調がありすぎます。ハーモニーも凝ったものが多いし、さゆりさんの言うシンプルは、信用していない(笑)。油断できないです」
帆足「聴きづらくもなく、〈難しい〉とも違うけれど、シンプルではない(笑)。それは、さゆりさんが纏っている音なんだと思います」
涙が止まらなかった“Shooting Star”の録音
――東京在住のおふたりは、信州に行って自然に触れると、伊佐津さんの曲が生まれてくる理由がわかりますか。
帆足「信州に行くたびに、ここに住んでいるからこそ、さゆりさんは、こういう曲が書けるんだなと感じます」
坂上「満天の星や霧、新緑などを目にすると、さゆりさんが書いた曲とリンクしますね。しかも、さゆりさんがつける曲名は“霧”とか、“Green”とかダイレクトなものが多いので〈この景色かー!!〉と」
――“Shooting Star”は、20年間一度もレコーディングしたことはなかった?
伊佐津「信州ジャズになる前のアルバムで、1回録っています。でも、坂上さんのアレンジで、素敵なハーモニーなどを加えてバージョンアップしているので、それを残したかったです」
坂上「さっき言ったローテーションがスムーズにいった曲で、ベースにスポットを当てつつ、どうやってオーケストラ感を出そうかと考えました。フルートとバイオリンは、ピアノとベースに返答する役割を担っています。アレンジのイメージは、4人で話し合いながら、最後にみんなで星空を見上げている感じです」
帆足「演奏して、〈1回聴いてみましょう〉となったら、さゆりさんがブワ~ッと泣いていて、涙が止まらなくなっていました(笑)」
伊佐津「20年前と同じ家で暮らしていて、そこは何も変わっていないけれど、家族構成が変わるなど、時間は流れていて……。いろんな想いが重なって涙がね。それとサビで、流星群の感じが出ているのが気に入っています」
自然の風景だけでなく、そこに暮らす人の想いや生き方も表現できたら
――では、ここから収録曲についてうかがっていきたいのですが、まずは、伊佐津さんがどんな曲なのか、事前に用意してくださった文章があるので、それを紹介してから、みなさんのお話を聞いていきたいと思います。1曲目の“綺羅星”から。
伊佐津「〈毎日朝から時間に追われて、バタバタと1日が過ぎていきます。そして、気付くともう夕方。そんな時、立ち止まって空を見上げると満点の星。小さな人間社会を大きく大きく包み込むように輝く星たちの美しさに感動!〉という曲です。書きっぱなしのまま、放っておいた曲でした」
坂上「元々冒頭からドラムが入っているようなファンクっぽい曲だったんだけれど、代わりにバイオリンがジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッと4分音符でリズムを刻み、ベースとリンクするピアノの左手のパートを細かく決めたりするなかで、4人でやるファンキーさ、リズムのグルーヴ感が生まれたので、サビの〈いかにもさゆり節〉というところにどうもっていくかを考えました。いい意味で信州ジャズっぽくない冒頭になっていると思います」
――2曲目の“琥珀”。
伊佐津「〈琥珀色の美しい景色を思いめぐらす曲。今まで生きてきたさまざまな場面で、人生を彩る光景として心に残っています。それは、山々の朝焼けや夕暮れだったり、山から顔を出してきた大きな満月だったり、また、輝く街の夜景だったり〉。ウッドベースの響きが素敵な曲になっています」
帆足「ベースとバイオリンが一緒にリズムを刻むところがあって、倍音の出方がすごいんです。しかもバイオリンは重音で。重ね録りしていないのに、まさにオーケストラのような曲になっていると思います」
――3曲目は、自然以外がテーマの“To Believe”ですね。
伊佐津「〈時代が進み、世界も日本も変わり続けているなかで、日本人としての歩みを続け、日々前に進んでいきたいという想いを込めている曲〉です。“To Believe”は、自然の風景だけではなく、そこに暮らす人の想い、生き方も信州ジャズで表現できていたらいいなという気持ちを映した曲になっています」
坂上「アレンジは、全編とおしてフルートがリズミックな演奏をしている曲なので、酸欠寸前(笑)。レコーディング直前までボイスパーカッション的なリズムを入れようかと、試行錯誤した曲です」