まるで目の前で歌っているような、19年振りのジョビン曲集
ボサノヴァやサンバのリズムに乗せて爽やかに歌う小野リサに魅せられてから早いもので40年近い月日が過ぎた。やがて彼女はジャズやシャンソンといった世界中の歌を訪ね旅に出て、一巡りして日本の歌に戻ってきた。そんなリサが昨今活動を一緒にしているピアニストの林正樹とアントニオ・カルロス・ジョビン集をリリースする。アルバム自体が6年半。ジョビン集に至っては19年振りとなる。「昨年の築地JAMに林さんと出演したときに、皆さんからアルバムにしたら、と言われて、ジョビン生誕100周年がもうすぐだからやってみようかと」
これまでも数々のピアニストと共演してきたが、林とのデュオは彼女の歴史に刻まれるべき、高いクオリティに達している。「林さんと出会ったのは2014年のモントルージャズフェスティバルのジャパン・ディ。林さんはブルーノート東京ビッグバンドに参加していて私はゲストでした。包容力があって優しい音色のピアノですが、引き出しがいっぱいあるので、 なんでも対応できる。さらに時々面白いフレーズを出してきたり。遊び心がある方です」
そんな二人のジョビン集は、凄く密度が高く親密なサウンドに仕上がった。「今回はエンジニアの奥田泰次さんが、息づかいまで伝わるような撮り方をしてくれました。ゲスト参加してくださった渡辺貞夫さんのサキソフォンも、キーをパタパタ押さえる音まで入っている。コンサートでは聞こえないけれど、 もしも(貞夫さんの)隣にいたら聞こえる。そんな近さです」
目をつぶってみよう。目の前にリサが、すぐ後に林がピアノに向かっている。そして隣には笑みを浮かべる渡辺がいる。そんな光景が浮かんでくるだろう。収録された12曲。リサにとってはどれもが愛おしい。「全曲に思い入れはありますが“あなたのせいで”は貞夫さんの音色に身を委ねるような気持ちで歌いました。この曲はまず2回くらい 歌って、他の曲を録音したあとに貞夫さんが最後にもう一回やろうと言って演奏したテイクが採用されたんです」
アルバムタイトルになっている“スー・アン”では途中から自然な感じでリサのハミングが滑り込んでくる。「最初は歌う予定はありませんでした。でもメロディが綺麗だからリハーサルの時に歌っていたら林さんがそれ、いいですねって」
嬉しそうに話すリサの横顔からは、洗練されたジョビンの楽曲をリスナーと共に慈しむことができる慶びが垣間見えた。
LIVE INFORMATION
小野リサ ボサノヴァ・コンサート
Summer Breeze and Jobim
2026年6月27日(土)東京・小金井 宮地楽器ホール
開演:15:00
■出演
小野リサ(ヴォーカル/ギター)/林正樹(ピアノ)
https://koganei-civic-center.jp/calendar/2026/06/074320.html
