ジャンルを越えて活躍するミュージシャンたちが集うサマーフェスティヴァル――スペシャルな夏の週末をミューザ川崎シンフォニーホールで
クラシック・ファンにはすっかりおなじみとなった〈フェスタサマーミューザ KAWASAKI〉が、今夏も開催される。このイヴェントは、神奈川県のミューザ川崎シンフォニーホールが開館した翌年の2005年に始まった音楽祭で、首都圏のオーケストラが一堂に会するという贅沢なお祭りだ。日頃一般的に馴染みの薄いオーケストラのコンサートに気軽に足を運べるだけでなく、公開リハーサルやトーク・イヴェントなども行われ、ヴァラエティに富んだプログラムがおよそ20日間に渡って繰り広げられる。子どもたちが楽しめるコンサートも用意されており、まさに老若男女誰もが楽しめることだろう。
この音楽祭は、クラシックだけでなくジャズにも力を入れているのが特徴だ。今年は、7月21日に行われる〈ノット&東響 × JAZZスーパースターズ!〉と題されたオープニング・コンサートからジャズが大々的にフィーチャーされて話題を呼んでいる。というのも、ジョナサン・ノットが指揮する東京交響楽団によるガーシュインの“ラプソディ・イン・ブルー”でピアノを弾くのは、なんと大西順子。以前、彼女が小澤征爾との共演でも高く評価を得たこの曲が、またあらためて間近で聴けるのは非常に貴重な機会といえるだろう。加えて、ナンカロウの“スタディ第1番”と“スタディ第7番”という自動ピアノのための難曲がラインアップされているのも非常に興味深い。今回は室内アンサンブル用に編曲されたバージョンで演奏されるという。またこのプログラムにはバーンスタインの“ウェスト・サイド・ストーリー”やリーバーマンの“ジャズ・バンドと管弦楽のための協奏曲”も含まれており、他にもサックスの本田雅人、トロンボーンの中川英二郎、ベースの井上陽介、ドラムスの高橋信之介なども参加するというから楽しみだ。
さらにジャズ・ファンにとって見逃せないのが、7月28日に開催される〈サマーナイト・ジャズ〉だろう。オープニング・コンサートにも出演する中川英二郎に加え、ピアノの林正樹、ベースの川村竜という布陣で行われるアコースティック・ジャズのコンサート。しかも、スペシャル・ゲストに小野リサの出演も決定した。出演するトロンボーンの中川英二郎は、クラシックとジャズをまたぐ活動を行う世界的なプレイヤーのひとりだ。映画やCMの音楽も含めると、彼が奏でるふくよかな音色を聴かない日はないかもしれないほどの存在といえる。林正樹も様々なセッションで活躍するピアニスト。渡辺貞夫や菊地成孔から、椎名林檎にいたるまで振り幅は広く、ジャンルを越えて評価が高い。また、近年力を入れているピアノ・ソロ作品の静謐な世界観からは、ジャズやクラシックといった音楽の垣根を融解してしまうような静かなる革新性が感じられる。そして、川村竜は海外の著名なジャズ・ミュージシャンからの信望が高い一方で、ゲームやアニメ音楽におけるクリエイターとしての一面もあり、ジャズ・シーンにおいてはかなりユニークな存在のひとりである。
そしてこのメンツに日本が誇るボサノヴァのミューズ、小野リサが加わることで他では聴けないスペシャルな一夜になることは間違いないだろう。彼らが演奏するのは、“イパネマの娘”、“ワン・ノート・サンバ”、“黒いオルフェ”といったボサノヴァの名曲に加え、“サマータイム”や“チュニジアの夜”などの真夏の夜にふさわしいジャズのスタンダード・ナンバーが予定されている。曲タイトルとメンバーを照らし合わせるだけでも、贅沢なひとときを過ごせそうなイメージが膨らむはず。ジャズやボサノヴァのファンにはこの夏のハイライトになることだろう。
〈フェスタサマーミューザ KAWASAKI〉は、これら以外にも話題性の高いプログラムが盛り沢山だ。森山良子が読売日本交響楽団をバックにポップスを歌うコンサートもあれば、弱冠20代の指揮者である熊倉優がNHK交響楽団と共演し、ショスタコーヴィチの交響曲を、さらに話題の指揮者ミンコフスキがチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」を(オケだけで)都響と披露するという企画も控えている。スケジュールとにらめっこしながら、充実した夏の予定を立てていただきたいと思う。
LIVE INFORMATION
フェスタサマーミューザKAWASAKI 2018
サマーナイト・ジャズ
凄腕ミュージシャンたちが繰り広げる、究極のセッション
○7/28(土)18:00開場/19:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:中川英二郎(tb)林 正樹(p)川村 竜(b)
スペシャルゲスト:小野リサ
曲目:ワン・ノート・サンバ/サマータイム/黒いオルフェ/チュニジアの夜/イパネマの娘 ほか
東京交響楽団オープニングコンサート
ノット&東響 × JAZZ スーパースターズ
○7/21(土)14:00開場/15:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:ジョナサン・ノット(指揮)/大西順子(p)/井上陽介(b)/高橋信之介(ds)/中川英二郎(tb)/本田雅人(a-sax) ほか
曲目:ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー/リーバーマン:ジャズ・バンドと管弦楽のための協奏曲/ナンカロウ:スタディ第1番、第7番/バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」からシンフォニック・ダンス
www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/