自分の内面と向き合い、自身の過去と現在を見つめて切実に訴えかける稀代の才能……この夏に来日も控える話題のエルミーンが待望のファースト・アルバムをリリースした!

 今年の1月に藤井 風と行ったスタジオセッションの模様がSNSに投稿されたことで、俄かにその名前が話題となったエルミーン。そのタイミングでアルバムからの先行シングル“Reclusive”を発表し、さらには今年の8月に行われる〈SUMMER SONIC 2026〉への出演予定も発表され、早々にある種のリスナーの間では認知を確かなものとしたと言えるだろう。そしてこのたび届いたファースト・アルバム『sounds for someone』によって彼はまた一段上にステップを上がることは間違いないだろう。

 エルミーンは2001年生まれ、英国はオックスフォード出身の24歳だ。もともとドイツのフランクフルトに移住していたスーダン人の両親の間に生まれ、幼い頃に家族で英国に引っ越してきた。彼が最初に注目されたのは2021年、ヴァージル・アブローによる最後のルイ・ヴィトンのショウに起用された楽曲“Golden”によって。そこから2023年にはR&RデジタルからEP『EL-MEAN』を発表して評判を広げ、続く『Marking My Time』からはデフ・ジャム/ポリドールと契約。BBCの発表する〈Sound Of 2024〉で第4席に選出され、2024年にはブリクストン・アカデミーで単独公演を行ったり、エイサップ・ファーグとのコラボを経験するなど、さらに活動を軌道に乗せていく。ブリット・アワードの〈ライジングスター〉部門にノミネートもされた2025年にはミックステープ扱いの 『Heat The Streets』を発表。いよいよ準備が整ったところで、ついに登場したのが今回の『sounds for someone』だ。

ELMIENE 『sounds for someone』 Polydor/Def Jam(2026)

 繊細な美声を柔和に操りながら流麗なメロディーに乗せていく様子は誠実そのもの。歌い方によっては“Saviour”を制作したサンファに通じる響きを放つし、まっすぐなメロディーを唇に乗せれば同じくアルバムに参加したラファエル・サディークのようで、つまりはストークリーやベイビーフェイスといった名前をすぐに想起させる美しさでもある。このようにコンテンポラリーでありながらオーセンティックな心地良さにも溢れていて、通好みもしつつシンプルな大衆性も持ち合わせているあたりが今後のポテンシャルを感じさせるのではないだろうか。

 アルバムはエルミーンの人生観や自己認識を大きく形作ってきた、家族にまつわる約20年もの試練と喜びを辿る、極めてパーソナルな旅へとリスナーを誘う作品となっている。総監督を重鎮ノーIDが担い、先述のラファエルやサンファに加えてゴーストノートやジェフ“ギッティ”ギテルマンといった当代の売れっ子も大器をしっかりサポート。とにかく心に迫る楽曲が満載されているので、まずは没入してアルバムに聴き惚れつつ、〈サマソニ〉を楽しみに待つのが正解と言えるだろう。

左から、エルミーンの2025年作『Heat The Streets』(Def Jam/Polydor)、サンファの2023年作『Lahai』(Young)、ラファエル・サディークの2019年作『Jimmy Lee』(Columbia)