Photo by 鈴木 渉

東京都美術館100周年を、「サ道」のとくさしけんごの新作〈とおくのファンファーレ〉で祝う

 上野の東京都美術館といえば、〈東京府美術館〉の名で開館した日本初の公立美術館だが、このたび同館が100周年を迎えた。当初から公募展として有名な二科展がすでに開催されており、美術が身近で親しみやすいものになったのは、この美術館の功績も大きいだろう。早くも1970年代半場には、文化事業として造形講座や公開制作を行っており、これらの取り組みは美術館でのワークショップの源流とされている。公開制の美術の図書室もここが最初で、現在ではカフェやレストラン、ミュージアムショップやアートラウンジも併設。要するに、風通しが良く、肩肘張ることなく通える場所なのだ。かくいう筆者も、ここ数年で、ゴッホ展、デ・キリコ展、マティス展、エゴン・シーレ展などを見た。現在は、アンドリュー・ワイエス展が好評を博している。

 100周年を記念して、オリジナルのファンファーレをとくさしけんごが作曲、開館記念日の5月1日とその翌日に、ライヴがおこなわれた。とくさしは、サウナ音楽の第一人者としてつとに有名で、サウナを舞台としたドラマの劇伴や、サウナ内で流れるBGMも制作する鬼才。筆者が訪れた5月1日は〈とおくのアンサンブル〉の再演を含め、9時30分、15時、17時40分の3回演奏が予定されていた。あいにくの雨ということもあり、9時30分と15時の回では予定していた屋外での演奏をとりやめ、美術館のロビーでの演奏に。

 だが、これがまた災い転じて福となすというべき、格別の出来だった。15時の回の演目は2023年に初演が行われている〈とおくのアンサンブル〉。トロンボーン奏者4人 × 4組が数十メートル(あるいは数メートル)の距離を置いて、とくさしのスコアに基づいてアンサンブルを組み立てていくのだが、天井が低いこともあってか、天然のリヴァーブが心地よいのなんの。まさに法悦の境地である。

Photo by 鈴木 渉

 17時40分からの回では、晴れ渡った屋外でまたもや4グループに分かれ、新作〈とおくのファンファーレ〉を演奏。美術館の屋上、美術館入口に向かって右と左、そして左奥に4名ずつが位置されており、屋内とは音の響き方も情報量も異なる演奏を繰り広げた。屋外サラウンドというか人力バイノーラルというか、とにかく四方八方を音で囲まれているような環境は実に得難いものだった。とくさし、オーケストラ、観客、それぞれがゆるやかな連帯感とよって繋がれていたのだ。

Photo by 鈴木 渉

 ただ単なる美術館ではなく、人が集い、音を出したり話したりし、出逢いやコミュニケーションの場としても機能する。それが筆者の思い描いた東京都美術館の今であり、これからである。今後も持ち前の風通しのよさで発展していくだろう東京都美術館、100周年おめでとう!