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Photo by Jackson Loria

初来日でのフジロックは機嫌が悪かった?

――いま振り返って、『A Love For Strangers』で誇りに感じているのはどういうところですか。

「ある意味ではアルバム全体かな。こういうことを言うと、ミュージシャンはみんなそう言うじゃないかって思われるかもしれないけど、本当にこの作品は自分自身のために作ったアルバムなんだ。それは自分でも間違いないとわかっている。というのも、僕自身がいまでもこのアルバムを聴いているから。これまで、自分のアルバムをリリースしたあとに聴き返すことなんて一度もなかったんだよ。普段は発売されたら、それっきり二度と聴かない。でも、この作品だけは違うんだ。

とくに1曲目の“Over You”は、歌が始まるまで1分近くイントロが続く。音楽業界では、シングルとしては〈そんなのあり得ない〉って言われるような作りなんだ。でも僕は、それでもシングルにしたいと思った。それでアルバムの1曲目に置いたんだ。みんなにまず聴いてもらいたかったからね。

その結果、この曲はアルバムのなかでもとくに人気のある曲になった。それが本当に嬉しいんだ。自分が信じた感覚を貫けたこと、そして僕たち人間は、すぐに答えが返ってくるようなものじゃなくても、ちゃんと耳を傾けられるんだということを証明できた気がしてね」

――なるほど。それらの楽曲にライブで感情的なつながりを感じることはありますか。

「ああ、それは毎晩あるよ。だからこそ、会場の雰囲気によってはあえて演奏しない曲もあるんだ。感情的にすごく消耗することがあるからね。バラードだったり、とくに重たい曲なんかは毎回セットリストに入れるわけじゃなくて、公演によって演奏したりしなかったりする。でも基本的には、毎晩その曲の感情とちゃんと向き合うようにしてるよ。

たぶん、それがツアーが大変な理由のひとつでもあるんだろうね。もちろん、とても美しい体験なんだけど。ツアーの終盤になると、何度も何度も心をぎゅっと絞られたような気分になるんだ。それはけっして悪いことじゃないんだけどね。家に帰る頃には、本当にもう……(苦しそうな表情を受かべる)って感じなんだよ」

――それくらい、あなたにとってライブは精神力を使うものなんですね。ところで、あなたの初来日ライブは2014年のフジロックでした。フェス3日目の深夜だったんですよね。何か印象に残っていることはありますか?

「じつは、あのときは機嫌が悪かったことを覚えてる(笑)」

――えっ、本当ですか?

「うん(笑)。あの頃は、いろんなことに圧倒されてしまう時期だったし、そういう状況との向き合い方もよくわかっていなかったんだ。それで、何かトラブルがあったのを覚えているよ。

でも、ライブ自体はよかったという記憶なんだ。ただ、そのときは何かに腹を立てていたことばかり覚えていてね。まあ、これは僕自身の性格なんだけど。僕はすごく繊細だし、気分の浮き沈みも激しいんだ。〈ムーディー〉って言えば通じるかな(笑)。でも、いまはずいぶんよくなったよ。

そうだ、ひとつ覚えているのはオーディエンスのみんながすごくかっこいいブーツを履いていたことかな(笑)」

 

Photo by Jackson Loria

日本のオーディエンスはライブそのものを楽しんでくれる

――フジロック名物の長靴ですね(笑)。日本のオーディエンスは集中して聴く傾向が強いぶん、静かだと言われることもあります。アーティストによっては緊張すると聞くのですが、日本のライブについてどのような印象を持っていますか?

「そうだね。やっぱり、みんな本当によく聴いてくれていると感じるよ。2年前に東京でライブをやったんだけど、僕の印象では東京のお客さんは大阪なんかに比べると少し控えめなのかなって思ったんだ。本当にそうなのかはわからないけどね。でも、すごくいいオーディエンスだったよ。正直、僕が想像していた以上にエネルギッシュだった。ちゃんと音楽を聴いてくれているんだけど、それと同時にしっかり楽しんでくれている感じもあってね。

はじめて日本に来た頃は、曲が終わるまで静かに聴いていて、それから拍手が起きる、という印象が強かった。でも……これは日本向けのインタビューだから言っているわけじゃないんだけど(笑)、僕は日本のオーディエンスが一番好きなんだ。ちゃんと耳を傾けてくれるし、それでいて拍手もしてくれるし、ライブそのものを楽しんでくれているのが伝わってくるからね。

それに、2年前の東京でのライブは僕にとって本当に特別だった。何より嬉しかったのは、お客さんのほとんどが日本の人たちだったことなんだ。東京の人たちが僕のライブを観に来てくれたということが、すごく意味のあることだった。

というのも、正直に言えば、日本でライブをするとなると、オーストラリアから旅行で来ている人や観光客ばかりなんじゃないかと思っていたんだ。でも、僕は日本まで来て観光客相手に演奏したいわけじゃない。日本の人たちに聴いてもらいたいんだよ」