(左から)アンドリン・ハーグ、ヒューゴ・コッツ、オリバー・オーバーガード、アンソニー・ボートライト

英ロンドンを拠点に活動する新進気鋭のインストゥルメンタルバンド、ユーフ。2作のEPを合わせた日本盤『Alma’s Cove / Mt. Sava』をリリースした彼らは、クルアンビンやグラス・ビームスに続く多国籍的でハイブリッドかつサイケデリックなサウンドが注目されており、〈FUJI ROCK FESTIVAL 2026〉でのパフォーマンスも大きな話題になった。

そんな彼らがフジロック終幕直後の7月某日、タワーレコード渋谷店のTOWER VINYL SHIBUYAに来店。スペシャルインストアライブ&サイン会の開催前に好きなアナログレコードを選んでもらいつつ、話を聞くことができた。インタビュアーはライター松永良平(リズム&ペンシル)が務める。 *Mikiki編集部

YUUF 『Alma’s Cove / Mt. Sava』 Technicolour/BEAT(2026)

 

オリバーが夢中なカルトバンド、ヒューゴの心に響く特別な曲

──まずはみなさんが選んだレコードについて伺います。

オリバー・オーバーガード(ドラムス)「僕がまず選んだのはヴァイアグラ・ボーイズの4thアルバム『viagr aboys』。ちょっとややこしいタイトルだよね(笑)。

VIAGRA BOYS 『viagr aboys』 Shrimptech/Year0001/Silent Trade(2025)

彼らはスウェーデンのポストパンクバンドで、ここ何ヶ月か、僕は彼らに夢中になってるんだ。運よくライブを見ることができたんだけど、リードシンガーのセバスチャン(・マーフィー)はもはやカルト集団のリーダーみたいな存在感でね。彼の呪文にかかったみたいにみんなが熱狂していた。ものすごくパワフルな音楽だから、これをみんなに薦めたい。

もう1枚は、ジョー(Djo)の『The Crux』で、こっちも最近、僕のヘビーローテーションなんだ。ヴァイアグラ・ボーイズとは真逆だけど、こっちもすごくクールなアルバムだよ」

DJO 『The Crux』 Djo Music(2025)

──オリバーさんがレコードを選ぶ基準は?

オリバー「僕はライブの物販でレコードを買うのが好きなんだ。レコードって、そのバンドの音楽を形にしたという意味でのアートだし、何よりライブを見た自分へのおみやげにもなる。家に帰ってレコードに針を落とすと、あの素晴らしかったショーの時間がよみがえるよね。何より物販で買うことはアーティストに対するサポートにもなる。もちろんレコード店に行って、誰にも知られてないお宝をひたすら探すのも最高なんだけどね」

──続いてはヒューゴさん。何を選びました?

ヒューゴ・コッツ(ギター)「僕が選んだのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの4thアルバム『Loaded』。これは僕にとって、とても純粋なノスタルジアを感じるアルバムなんだ。15歳の頃、僕はこのアルバムを繰り返し聴いていた。ルー・リードの歌詞がすごく情景豊かだし、曲もとてもポップ。

THE VELVET UNDERGROUND 『Loaded』 Cotillion(1970)

ここに入ってる“Oh! Sweet Nuthin’”は僕にとって、すべての音楽で10本の指に入る名曲だよ。7分もあるバラードの最後にドラマーが狂ったようにフィルを入れて、高音のギターソロが鳴り続ける。あの時代が持っていた特別なフィーリングを感じるんだよね。僕らのレコーディングでは、基本的に僕がミックスをしているんだけど、最新EPの『Mt. Sava』では、リファレンスとして何度もこのアルバムを聴いた」

──ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、まずバナナのジャケットの1stアルバム(『The Velvet Underground & Nico』)をマストとして挙げる人が多いですけど。

THE VELVET UNDERGROUND, NICO 『The Velvet Underground & Nico』 Verve(1967)

ヒューゴ「もちろん、あのアルバムがいわゆるカルト的な名盤だって僕も知ってる。“Heroin”みたいな曲は、そのコンセプト自体がもうとんでもなくクレイジーだからね。あのアルバムでのルーのギターのチューニングは、どの弦も同じ音に合わせてるような気もする異常なもの。それがすごくかっこいいことはわかる。だけど、『Loaded』みたいには心に響かないんだ。

『Loaded』を作ってすぐにルー(・リード)は脱退するし、バンドは解散間際で、作曲もレコーディングもさっさと片付けた気がする。作品としての評価はいろいろあるだろうね。でも、なぜかこのアルバムのサウンドが僕には刺さるんだ」

 

アンソニーが大きな影響を受けたベーシスト、アンドリンを救った最愛のバンド

──次はアンソニーさん。お、ブラック・サバスですね。

アンソニー・ボートライト(ベース)「彼らの1stアルバム(『Black Sabbath』)は、マジでヤバい。10代の頃、このアルバムをCDで買って、寝る前にベッドの中でよく聴いていたよ。

BLACK SABBATH 『Black Sabbath』 Vertigo(1970)

オカルトなイメージがあるけど、このアルバムのサウンドプロダクションは本当によくできていて美しい。演奏もすごくいい。“N.I.B.”って曲が好きでね。ギーザー・バトラーがイントロで1分くらいの長いベースソロを弾いていて、それが最高なんだ。

あと、この時期まではブルースの要素もたくさん残っているし、ベースラインにもモータウンのソウルミュージックの要素がかなりある。ヘビーでホラーな要素と、彼らがそれ以前に好きだった演奏スタイルが同居していて、今聴くとサウンドがすごく新鮮なんだよ」

──ギーザー・バトラーは、アンソニーさんがベーシストの道を選ぶきっかけにもなっている?

アンソニー「他にもいろんな音楽の影響を受けているけど、ギーザーのベースプレイは僕のスタイルに大きく寄与しているかな。バンドを支えながらとてもメロディックで、同時に、ちょっと風変わりなところもあるから、曲からベースだけ突き出ているような、すごく奇妙な感じがする瞬間もある。このアルバムでは、彼のそんな個性がたっぷり感じられるよ」

──では、お待たせしました。ラストはアンドリンさん。

アンドリン・ハーグ(パーカッション)「僕が選んだのはフォンテインズD.C.の2ndアルバム『A Hero’s Death』。彼らは僕にとってもっとも愛すべきポストパンクバンド。このアルバムを聴いたのは新型コロナウイルスの蔓延でロックダウンが始まった直後だった。自由が制限され、部屋の中に閉じこもっている状況でなかなか吐き出せずにいた感情を、吐き出す場を与えてもらった感じがした。

FONTAINES D.C. 『A Hero’s Death』 Partisan/BIG NOTHING(2020)

僕は彼らの曲がすごく好き。リードシンガーのグリアンが歌うメロディの〈不完全さ〉がすごく好きなんだよね。政治的なメッセージを強く帯びているところも好きだ。重厚な雰囲気でありながら、どこか甘美な印象も残しているところがいいんだよ。

このアルバムは、聴くたびに僕がこれから作りたい音楽に対してインスピレーションをくれる。最後の曲“No”をギターのリファレンス用にプレイリストに入れたところなんだ。僕はギタリストじゃないけどね(笑)。本当に大好きなんだ。彼らの美的センスも本当に素晴らしいよ。このアルバムを知らない人は、ぜひ聴いてみて!」

──孤独な時期を救ってくれたアルバムでもあるんですね。

アンドリン「そうだね。あと、このレコードについては、もうひとつ個人的な思い出があるんだ。これを買った翌年だから、2021年かな、ウェールズの〈グリーン・マン・フェスティバル〉まで彼らを観に行った(フォンテインズD.C.はヘッドライナーとして出演)。彼らの音楽が僕にとってあまりにも大切なものだったから、涙が止まらなかったことを覚えてる。しかも彼らが出演した翌日、ドラマーのトム(・コール)とベースのコナー(・ディーガン3世)が会場をぶらついていたんだ! 少しだけど2人と会話することができて、まるで天国にいる気分だったよ」

 

レコードを聴くという美しい体験はサブスクで得られない

──ここからはみなさんのレコードとの付き合い方を話してもらえますか? 子どもの頃はCDで育った世代ですよね?

オリバー「初めて両親が買ってくれたCDはクレイジー・フロッグ(ドイツで考案された着メロのマスコットキャラクター。ヨーロッパでは2000年代に人気が爆発した)だったな(笑)」

アンソニー「僕の初CDはジョナス・ブラザーズだった(笑)。でも、レコードに囲まれている環境ではあったんだ。おじいちゃんやお父さんのレコードが家にあったからね。意識して聴くようになったのは10代半ばから」

ヒューゴ「僕はみんなよりちょっと年下だから、CDにすらあまり興味がなくて、MP3派だった。でも、初めて手にしたCDは今でも覚えてるよ。8歳の時に友達がくれたダフト・パンクのライブアルバム『Alive 2007』。特に“Too Long”って曲が最高で。(4人が声を合わせて歌い出す)僕らみんなこの曲が好きすぎるよね(笑)」

DAFT PUNK 『Alive 2007』 Virgin(2007)

──どうやってレコードはみなさんの音楽生活に入ってきたんでしょう?

ヒューゴ「14、15歳の頃、音楽に夢中になった。それで、両親にクリスマスプレゼントはレコードプレーヤーがいいって、せがんだ。そしたらなんと、買ってくれたんだよ。こんなラッキーないよね! それで僕はレコードを買いに行った。初めて買ったアルバムは、マーヴィン・ゲイの『What’s Going On』と、ジェームス・ブラウンのバンド、JB’sの1stアルバム(『Food For Thought』)。

MARVIN GAYE 『What’s Going On』 Motown(1971)
THE J.B.'s 『Food For Thought』 People(1972)

アンソニー「マジで? あれ最高じゃないか」

ヒューゴ「そう! JB’sは、ほぼインストだけど、最高だった。そこからはいろいろ徐々に集めていった感じかな」

オリバー「僕がレコードを買うようになったのは、デンマークからロンドンに引っ越してから。長いあごヒゲを伸ばして、レコードを買う。それこそヒップなやつがやるべきことだと思ったんだ(笑)。

レコードっていいなと思えた最初の体験は覚えているよ。友達がイーグルスのアルバム『Hell Freezes Over』をレコードで持っていたんだ。一緒に座ってレコードを聴きながら、見開きジャケットに書かれたクレジットを見たりした。その時間が最高だったんだよ。これはストリーミングでは得られない体験だなと痛感した。アートワークを通じてそこにいるみんなでつながりを感じたり、裏ジャケットからは一冊の本のように濃厚な情報を得る。ストリーミングじゃそれは無理だよね。つまり、レコードを聴くってことは、プレイリストのシャッフルボタンを押すよりも、ずっと美しく厳選された体験だと悟ったんだ」

EAGLES 『Hell Freezes Over』 Geffen/Eagles Recording Company(1994)

アンドリン「僕にとってレコードは、DJ文化やヒップホップのスクラッチとかと結びついていたんだよね。〈ああ、あんなのはやり方がわからないから、買う必要はないな〉とずっと思っていた(笑)。ずっとCD派だったよ。ようやくレコードを買い始めたのは、ここ2、3年だよ。

だけど、レコードというメディアの雰囲気を好きになってからは、レコード店に行ってマイナーなアーティストのコーナーをいろいろ探して回るのがすっかり楽しくなってる。運が良ければ隠れた名盤も発見できるしね。まあ、たまにハズレもあるけど、それでも経験として楽しかったからよし(笑)。そういレコードは誰かに譲ったりする。それもフィジカルだからできるリサイクルだし、楽しいことだと思う」

──バンドとしてのリリースは、レコードというフォーマットを意識してますよね?

アンソニー「すごく考えているよ。ライブ会場でもレコードはとてもよく売れる。まだ僕らは新しいバンドだから、ライブを観た後で何か形のあるものを手にして、〈ああ、これでこのバンドの音楽を本当に深く楽しめる〉と感じてもらうきっかけとして、レコードはすごく大事だ。 ジャケットもデザイナーたちと一緒に話し合って、いいものを作ろうとしている」

ヒューゴ「僕たちはいつもデジタルでのリリースを考える前に、まずレコードでどう体験してもらえるかということに重点を置いている。去年出した2枚のEP『Alma’s Cove』と『Mt. Sava』をミックスするときは、レコードでのリスニングを強く意識した。今は1曲をクリックして聴いて、気に入ったらプレイリストに追加する、みたいな聴き方が多いよね。でも、レコードだったら、最初から最後まで聴くしかないだろ。だから、曲と曲のシークエンスの演出にもかなり時間をかけたんだ。僕たちが録音した川や波や風の音、熱帯の鳥や昆虫の鳴き声を曲間に配置した。自然音で曲と曲がつながり、作品全体がひとつに溶け合っていく効果は、レコードで聴いてこそわかる」

 

ユーフがおすすめするロンドンのレコード店

──ちなみに、みなさんが今暮らしているロンドン周辺で、おすすめのレコード店はどこですか?

アンドリン「サウンズ・オブ・ザ・ユニバース(Sounds Of The Universe)がお気に入りだね。こじんまりしているけど、よくキュレーションされている。スタッフが自分のセンスでレコードを仕入れているのがよくわかるんだ」

アンソニー「ブリクストンにあるライオン・レコーズ(Lion Records)。ダブ、レゲエ、スカの専門店なんだけど、値段もすごく手頃でね。いつもヤバい音楽が流れてる」

オリバー「ソーホーのレックレス・レコーズ(Reckless Records)。こないだ行ったら、ルパート・グリント(『ハリー・ポッター』シリーズのロン・ウィーズリー役で知られる俳優)がレコードを買ってたんだよ。あいつ、レコードが好きだなんて、いいやつだよ! ルパート、褒めてやったから今度アイスをおごってくれよな(笑)」

ヒューゴ「ロンドンで一番人気の店は、たぶんラフ・トレード・イースト(Rough Trade East)だよね。本当に素晴らしいレコード店で、インストアライブもたくさん見られる。スタッフもすごく親切だよ。

もう1軒、おすすめしたい店があるんだけど、今は名前が思い出せないな。ワールド系が強くて、バーゲンコーナーでたくさん知らないレコードを買った。ときどき傷が入ってるのもあったけど、5ポンドくらいならそれも悪くない勉強だよね」

──今はインターネットでレコードを探すことは普通ですけど、お店に行って知らないレコードに触れることも大切ですよね。

アンソニー「それこそが、僕が本当に求めているものなんだと思う。なんとなく外に出て、長めの散歩をして、レコード店で1、2時間を過ごして、気になるものを見つけて、家に帰ってお茶を淹れて、レコードをプレーヤーでかけて、聴きながらくつろぐ。その体験すべてが愛おしいじゃないか!」

 

*2026年9月4日追記
当記事の初出時に、一部誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。 *Mikiki編集部

 


RELEASE INFORMATION

YUUF 『Alma’s Cove / Mt. Sava』 BEAT(2026)

リリース日:2026年1月16日(金)
品番:BRC807
価格:3,080円(税込)

TRACKLIST
1. Canopy
2. Iman
3. Alma’s Cove
4. Open At Noon
5. Into The Blue 
6. Moon Dive
7. Night Air 
8. Orken Bloom
9. Calima
10. Mesa Pt. 1 
11. Mesa Mesa