
レコードを聴くという美しい体験はサブスクで得られない
──ここからはみなさんのレコードとの付き合い方を話してもらえますか? 子どもの頃はCDで育った世代ですよね?
オリバー「初めて両親が買ってくれたCDはクレイジー・フロッグ(ドイツで考案された着メロのマスコットキャラクター。ヨーロッパでは2000年代に人気が爆発した)だったな(笑)」
アンソニー「僕の初CDはジョナス・ブラザーズだった(笑)。でも、レコードに囲まれている環境ではあったんだ。おじいちゃんやお父さんのレコードが家にあったからね。意識して聴くようになったのは10代半ばから」
ヒューゴ「僕はみんなよりちょっと年下だから、CDにすらあまり興味がなくて、MP3派だった。でも、初めて手にしたCDは今でも覚えてるよ。8歳の時に友達がくれたダフト・パンクのライブアルバム『Alive 2007』。特に“Too Long”って曲が最高で。(4人が声を合わせて歌い出す)僕らみんなこの曲が好きすぎるよね(笑)」

──どうやってレコードはみなさんの音楽生活に入ってきたんでしょう?
ヒューゴ「14、15歳の頃、音楽に夢中になった。それで、両親にクリスマスプレゼントはレコードプレーヤーがいいって、せがんだ。そしたらなんと、買ってくれたんだよ。こんなラッキーないよね! それで僕はレコードを買いに行った。初めて買ったアルバムは、マーヴィン・ゲイの『What’s Going On』と、ジェームス・ブラウンのバンド、JB’sの1stアルバム(『Food For Thought』)。
アンソニー「マジで? あれ最高じゃないか」
ヒューゴ「そう! JB’sは、ほぼインストだけど、最高だった。そこからはいろいろ徐々に集めていった感じかな」
オリバー「僕がレコードを買うようになったのは、デンマークからロンドンに引っ越してから。長いあごヒゲを伸ばして、レコードを買う。それこそヒップなやつがやるべきことだと思ったんだ(笑)。
レコードっていいなと思えた最初の体験は覚えているよ。友達がイーグルスのアルバム『Hell Freezes Over』をレコードで持っていたんだ。一緒に座ってレコードを聴きながら、見開きジャケットに書かれたクレジットを見たりした。その時間が最高だったんだよ。これはストリーミングでは得られない体験だなと痛感した。アートワークを通じてそこにいるみんなでつながりを感じたり、裏ジャケットからは一冊の本のように濃厚な情報を得る。ストリーミングじゃそれは無理だよね。つまり、レコードを聴くってことは、プレイリストのシャッフルボタンを押すよりも、ずっと美しく厳選された体験だと悟ったんだ」
アンドリン「僕にとってレコードは、DJ文化やヒップホップのスクラッチとかと結びついていたんだよね。〈ああ、あんなのはやり方がわからないから、買う必要はないな〉とずっと思っていた(笑)。ずっとCD派だったよ。ようやくレコードを買い始めたのは、ここ2、3年だよ。
だけど、レコードというメディアの雰囲気を好きになってからは、レコード店に行ってマイナーなアーティストのコーナーをいろいろ探して回るのがすっかり楽しくなってる。運が良ければ隠れた名盤も発見できるしね。まあ、たまにハズレもあるけど、それでも経験として楽しかったからよし(笑)。そういレコードは誰かに譲ったりする。それもフィジカルだからできるリサイクルだし、楽しいことだと思う」

──バンドとしてのリリースは、レコードというフォーマットを意識してますよね?
アンソニー「すごく考えているよ。ライブ会場でもレコードはとてもよく売れる。まだ僕らは新しいバンドだから、ライブを観た後で何か形のあるものを手にして、〈ああ、これでこのバンドの音楽を本当に深く楽しめる〉と感じてもらうきっかけとして、レコードはすごく大事だ。 ジャケットもデザイナーたちと一緒に話し合って、いいものを作ろうとしている」
ヒューゴ「僕たちはいつもデジタルでのリリースを考える前に、まずレコードでどう体験してもらえるかということに重点を置いている。去年出した2枚のEP『Alma’s Cove』と『Mt. Sava』をミックスするときは、レコードでのリスニングを強く意識した。今は1曲をクリックして聴いて、気に入ったらプレイリストに追加する、みたいな聴き方が多いよね。でも、レコードだったら、最初から最後まで聴くしかないだろ。だから、曲と曲のシークエンスの演出にもかなり時間をかけたんだ。僕たちが録音した川や波や風の音、熱帯の鳥や昆虫の鳴き声を曲間に配置した。自然音で曲と曲がつながり、作品全体がひとつに溶け合っていく効果は、レコードで聴いてこそわかる」


