
アンソニーが大きな影響を受けたベーシスト、アンドリンを救った最愛のバンド
──次はアンソニーさん。お、ブラック・サバスですね。
アンソニー・ボートライト(ベース)「彼らの1stアルバム(『Black Sabbath』)は、マジでヤバい。10代の頃、このアルバムをCDで買って、寝る前にベッドの中でよく聴いていたよ。

オカルトなイメージがあるけど、このアルバムのサウンドプロダクションは本当によくできていて美しい。演奏もすごくいい。“N.I.B.”って曲が好きでね。ギーザー・バトラーがイントロで1分くらいの長いベースソロを弾いていて、それが最高なんだ。
あと、この時期まではブルースの要素もたくさん残っているし、ベースラインにもモータウンのソウルミュージックの要素がかなりある。ヘビーでホラーな要素と、彼らがそれ以前に好きだった演奏スタイルが同居していて、今聴くとサウンドがすごく新鮮なんだよ」
──ギーザー・バトラーは、アンソニーさんがベーシストの道を選ぶきっかけにもなっている?
アンソニー「他にもいろんな音楽の影響を受けているけど、ギーザーのベースプレイは僕のスタイルに大きく寄与しているかな。バンドを支えながらとてもメロディックで、同時に、ちょっと風変わりなところもあるから、曲からベースだけ突き出ているような、すごく奇妙な感じがする瞬間もある。このアルバムでは、彼のそんな個性がたっぷり感じられるよ」

──では、お待たせしました。ラストはアンドリンさん。
アンドリン・ハーグ(パーカッション)「僕が選んだのはフォンテインズD.C.の2ndアルバム『A Hero’s Death』。彼らは僕にとってもっとも愛すべきポストパンクバンド。このアルバムを聴いたのは新型コロナウイルスの蔓延でロックダウンが始まった直後だった。自由が制限され、部屋の中に閉じこもっている状況でなかなか吐き出せずにいた感情を、吐き出す場を与えてもらった感じがした。
僕は彼らの曲がすごく好き。リードシンガーのグリアンが歌うメロディの〈不完全さ〉がすごく好きなんだよね。政治的なメッセージを強く帯びているところも好きだ。重厚な雰囲気でありながら、どこか甘美な印象も残しているところがいいんだよ。
このアルバムは、聴くたびに僕がこれから作りたい音楽に対してインスピレーションをくれる。最後の曲“No”をギターのリファレンス用にプレイリストに入れたところなんだ。僕はギタリストじゃないけどね(笑)。本当に大好きなんだ。彼らの美的センスも本当に素晴らしいよ。このアルバムを知らない人は、ぜひ聴いてみて!」
──孤独な時期を救ってくれたアルバムでもあるんですね。
アンドリン「そうだね。あと、このレコードについては、もうひとつ個人的な思い出があるんだ。これを買った翌年だから、2021年かな、ウェールズの〈グリーン・マン・フェスティバル〉まで彼らを観に行った(フォンテインズD.C.はヘッドライナーとして出演)。彼らの音楽が僕にとってあまりにも大切なものだったから、涙が止まらなかったことを覚えてる。しかも彼らが出演した翌日、ドラマーのトム(・コール)とベースのコナー(・ディーガン3世)が会場をぶらついていたんだ! 少しだけど2人と会話することができて、まるで天国にいる気分だったよ」
