fhánaのいろいろな音を担当しているkevin mitsunaga(ケビン ミツナガ)です。カレンダーの上ではもう夏が終わったことになっているみたいですが、いやいや、まだ夏は終わりませんよ! 少なくとも僕の中ではまだ終わってない。というわけで今回は、走り抜けるようなスピード感と格好よさを持った女性声優が歌う3曲を紹介します。どれも風を切って進んでいくような曲です。
まずは1曲目、坂本真綾 “フラッシュ”。スマホゲーム「カードキャプターさくら クリアカード編 ハピネスメモリーズ」の主題歌で、作詞は本人、作曲・編曲は冨田恵一。イントロが鳴った瞬間から、もう空を飛んでいるような開放感。ぐんぐん高度を上げていく感じ。それでいて、その上に乗ってくるストリングスの旋律がやたらと切ないんです。爽やかに突き抜けていくトラックと、どこか泣きそうなメロディーが同時に成立しているバランス感覚が本当にすごい。さらに歌詞をよく聴いてみると、実は少し後ろ向きなことを歌っていたりして、そのギャップにグッときます。景色は明るいのに、走っている本人の心の中はそうでもない。前に進む曲って、案外そういうものかもしれないですね。強がりも含めて全部乗せてくるあたりが、坂本真綾の書く言葉だなあと思います。晴れた日に聴くと、なぜかちょっと泣きたくなる。そういう曲です。

続いて2曲目は、花澤香菜 “Love Me”。2024年のアルバム『追憶と指先』の収録曲で、作詞・作曲・編曲はすべてGuiano。まず耳を掴まれるのが楽曲を屋台骨として支える硬いビートです。角の立った、詰めの効いたリズム。そこに可愛らしい歌声が乗ってくるものだから、このギャップがたまらないんですよ。普通なら喧嘩しそうなふたつが、ちゃんと同じ景色を作っている。そして格好よさ一辺倒で終わらないのがこの曲の巧いところで、ドリーミーな浮遊感がひとさじだけ足してあるんです。パッドなのかリヴァーブの効かせ方なのか、輪郭のはっきりしたビートの隙間に、ふわっと甘い空気が流れ込んでくる。この〈ひとさじ〉の分量が絶妙で、多すぎると曲が緩むし、ないと硬いだけになる。この絶妙なさじ加減よ。

3曲目は内田真礼の“aventure bleu”。2018年のシングルで、TVアニメ「たくのみ。」のオープニングテーマ。作詞はmeg rock、そして作曲・編曲はスウェーデンのラスマス・フェイバーです。一聴しただけで〈あ、ラスマス・フェイバーだ〉とすぐわかるくらい強烈なシグネチャー・サウンドなんですよね。とにかく開放感がすごい。圧倒的な清涼感と浮遊感を、お腹いっぱい摂取できます。個人的にはメロディーも大好きで、ここぞという場所でちゃんと歌が伸びるんです。海外の作家が書いた曲なのに、日本のアニメ主題歌としてまったく違和感がない。というより、むしろこの角度からしか出てこない爽やかさがあって、それが夏の終わりにものすごく合います。窓を開けて、少し涼しくなった風と一緒に浴びてほしい一曲です。
さて、いかがだったでしょうか。3曲とも、異なるスピード感を持っているのがおもしろいところです。上に抜けていく速さ、前に押していく速さ、横に流れていく速さ。どの曲もポップスとしてしっかり骨太だからこそ、そのスピード感に安心して身を任せられますね。
まだまだ夏を終わらせたくない人、そして格好いい女性声優の楽曲を知っている人、ぜひSNSで教えてください。それじゃ、またね!
kevin mitsunaga
佐藤純一、towanaと組んだユニット、fhánaのいろいろな音を担当。fhánaとしては映画「小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜」のOP主題歌“涙のパレード”を収めた小林幸子とのスプリット・シングル『涙のパレード/僕たちの日々』(ランティス)に続くリリースも待たれるところ。開催中の15周年ツアー〈fhána 15th Anniversary Tour「Worldlines」〉も10月12日(金)の東京・ヒューリックホール公演を残すのみとなっています。その詳細も含めて、さまざまな最新情報は〈http://fhana.jp/〉にてチェックを!
