Mikikiが立ち上がって8か月が過ぎ、一向に更新される気配のない(一応存在していた)編集部のブログをアップしてみようや……ということで、年末だから何か言っておきたいスタッフが、2014年のベスト作品を選んでみました。本当ならばいろいろ思うところをここで書こうと思ったのですが、夜も更けてきて、そろそろ帰りたいな~というモードに入っていることもあり、ここはスパッと本題に入ります! この〈HEIWAJIMA便り〉(どういうことでしょう、このタイトル)が次にいつ更新されるかはわかりませんが、2015年もどうぞよろしくお願いします!

 


 

【上岡亮一】

2014年は……2013年後半から地続きのMikiki立ち上げ~運営で追い詰められ続け、仕事でもそうではない場面でもいろいろな音を聴いていたはずなのに、いざ振り返ろうとするとぼんやりして目ぼしいモノが思い浮かばない。というのは言い訳ですねスミマセン。Mikikiがスタートしてからは、編集部の仲間が日々投げてくる音楽ネタがどれも刺激的だったので、来年はこの楽しさをもっと大きな輪にしていきたいと思いつつ、とりあえずの2014ベスト3(順不同)です。

 

乃木坂46 何度目の青空か? N46Div.(2014)

去年の“バレッタ”に続き、2014年も乃木坂の秋シングルが頭から離れずループしまくり。彼女たちについてそれほど詳しくないせいか、かなりフラットな発声のヴォーカルが重なるサビなどは歌い手の匿名性を特に高く感じ、そのおかげでエヴァーグリーンなメロディーがまっすぐ届いてくるのかな、と思ったり。接触したら聴こえ方が変わるかどうか、なども気になるので、2015年はいろいろと挑戦してみたいです。

 

 

マクロスMACROSS 82-99 A Million Miles Away

サンプリング・コラージュもチープなサウンドも大好物なので、ヴェイパーウェイヴもポスト・ヴェイパーウェイヴも門外漢ながら楽しんでいたのですが、この作品などを聴くにつけ、もう有名とか無名とか本当は誰だとか括りとかメジャーとかインディーとかネット音楽かどうかとか関係なく、素晴らしい音楽が溢れている(そして聴こうと思ったらフリーかつフルで聴けてしまう)ことに戦慄……いやむしろ感動しました。今後もウェブを中心に新しいメディアやサービスと関連するシーンが現れると思うので、インターネットと親密な音楽は追いかけていきたいです。

 

 

FKA TWIGS LP1 Young Turks/HOSTESS(2014)

なんだかんだで2014年いちばん聴いたのはこの作品のような。最初は“Two Weeks”が良曲すぎてビックリしていた程度だったんですが、通して聴く度にアレンジやヴォーカルの表現の幅、ひとつひとつの音の説得力なんかがより明確になり、理解が深まってその音をもっと楽しめるようになる気がして、アルバムという単位で音楽を聴くのって重要なのかも、と時代に逆行するようなことを考えるきっかけにもなりました。あと〈FKA〉が〈元プリンス〉みたいな意味のところも素敵です。

 

 

【加藤直子】

これまでと違う仲間を得て、まっさらな状態だったウェブサイトに携わるようになるという、刺激的な日々。他の編集部スタッフから情報を得て興味を持ったり、もともと好きだった分野をより掘り下げるようになったりと、何やらさまざまな引き出しを開けたはいいものの、とりあえずすべて中途半端に開いている……という状態なので、それぞれにもうちょっとじっくり対峙せねばと思っている2014年末。とりあえず今年の私的ベストを3枚選ぼうという話にしたけれど、やはり良い作品がいろいろありすぎるので、ここは聴いた瞬間に〈こ、これは……!!!〉と思ったものを3作品選びました。最後の最後に投下されたディアンジェロもある意味〈こ、これは……!!!〉だったけど、こちらは来年早々に公開するハマ・オカモトさんの連載で取り上げられますので、そちらに譲ります。興奮が冷めやらないリリース直後の取材だったため、本来なら鮮度を保ったまますぐにでもお届けしたかったのですが……エニウェイ、来年はもっとアクティヴにやっていくよ!

 

THE KOREATOWN ODDITY 200 Tree Rings New Los Angeles(2014)

韓国が好きすぎるあまり、〈Korea〉という文字を見ると気になって仕方ない……というわけではないです、たまたまです。コリアタウン・オディティことドミニク・バーディはLAの狼ヘッド・ラッパー。昨年Bandcampで作品をリリースしていたようですが、この『200 Tree Rings』が実質的なデビュー作となります(デジタルと数量限定のヴァイナル&カセットのみのリリース)。本作にはジェレマイア・ジェイラス・Gらがプロデューサーとして参加。トレンド的なところを超越したサンプリング多めのトラック群(マッドリブでも参加していそうな雰囲気だったけど、していなかった)が圧巻で、ノン・ビートで進む“Title Sequence”からストレンジなパラレル・ワールドに連れて行かれます。ゴルジェみたいなビートが出てきてびっくりしたり、意味がわかってやっていたら凄すぎる日本語のサンプル使いとか……大好きです。

 

 

SANABAGUN Son of a Gun Pヴァイン(2014)

〈一聴き惚れ〉とはこれいかに、私の今年を象徴するような一枚になりましたね。ジャズの素養を持つプレイヤーを揃えたヒップホップ・バンドで、ラッパーに加えてシナトラが大好きなヴォーカリストがいるという、美しすぎる編成の若者たち。まだ結成して何年も経ってはいないけれど、ポリスと攻防しながら渋谷のストリートで毎週ライヴを重ねて磨き上げられたパフォーマンスは確かなクォリティーだし、エンターテイメント性も抜群(これ大事)。でもまだ完成されていない余白を残しているところも、妙にくすぐられます。職業柄、〈最近おもしろい人(=アーティスト)いる?〉とざっくりとした質問を投げかけられることが多いですが、その際は漏れなく彼らの名前を挙げていました。何のエクスキューズも躊躇もせずにね。本当ならば年内にサナバの連載をスタートさせるつもりでしたが、諸事情によりまだ公開できずにおります(泣)。もしかしたら取材だけする連載になるんじゃないかと思いはじめていますが……何とかしますので来年早々には、やるぞ!

 

 

CRUSH Crush On You Amoeba Culture/Loen(2014)

韓国のアーバン・ポップなシンガーといえばZION.TBUMKEYといった素晴らしい個性と歌唱力を誇る人がいます。正直、この2大巨頭(私的にはそう思っている)ほどの何かがあるわけではないけれど、どこか……目が離せない魅力にあふれているのがCRUSHくん。彼のこれまでの経歴については割愛しますが、とにかく曲がイイんです。デビュー・シングルとなったネオ・ソウル調の“Sometimes”(PRIMARYがプロデュースに関与)で完全にクラッシュ・オン・ユー!でした……いや、その前に発表した“Crush On You”で……煩わしいのでもう止めます。そんなこんなで登場したこのアルバムは、さすがアメーバ・カルチャー!という豪華メンツが助力した、清々しい主役の歌唱が素敵な一枚。この瑞々しさが良いのだから、当分はしっとり歌い込む系の路線には行かないでほしいと切に願っております。

 

 

【船越太郎】

Mikikiを通してさまざまな音楽に出会った2014年。なんといっても笹久保伸さんから派生する秩父方面の諸々が最大の発見で、この1年にリリースされた5枚の作品はいずれも重要。なかでも、現代音楽家の藤倉大さんとのアンビエント作『マナヤチャナ』、秩父の滅びた仕事歌を笹久保さんが歌い直した『秩父遥拝』が強烈でした。Mikikiで連載が始動したインターネット系の音楽も、いまだによく分かっていないながらあれこれ聴いていた印象。PCミュージック周辺が2015年に最注目なのは当然として、もっといろんな未知の強豪を探っていきたいです。それに2015年はShin Rizumuくん躍進の年となりそうな予感もあり、Ano(t)raksなどインディー・ポップ界隈も継続してチェック。あと、個人的に追っているYuta Hoshi周りのWOZNIAKTESTAVDALLJUB STEP CLUBOUTATBEROHABITはいずれも来年大きく動きそうなので、しっかりフォローしたいところ。筆者の地元・青森のシーンも引き続き気になってます。……とまとめたところで強引にアレですが、そんな流れとはほぼ無関係ながら、プライヴェートで強く心に残った3枚を紹介。

 

PUNPEE ft.Sugbabe Produced by konyagatanaka “Last Dance(We are Tanaka.)

Mikikiが始まったのが今年の4月で、cariosDKXONOPPAL徳利らが所属した富山発のウェブ・マガジン〈SQUIDS magazine〉がそれと前後するタイミングで休刊。そのカリデカの2人が初心者マークでラップに挑み、後にdancinthruthenightstofubeats&okadada)やPUNPEEを巻き込む“Local Distance”を発注/制作した謎のアカウント、今夜が田中konyagatanaka)主催のイヴェント〈田中面舞踏会〉も同じく2014年に終焉を迎え……なんというか、象徴的な1年であった気はします。そんな田中面のラストダンスにCD-Rで限定配布された“Last Dance(We are Tanaka.)”。これまでの田中面の思い出を切り取ったPUNPEEのリリックに泣く……。

 

 

ENDON MAMA Daymare Recordings(2014)

グラインド・コアブラック・メタルのマリア―ジュを、ハーシュ・ノイズ(メンバーのAXONOXさんは音響機器ブランドのM.A.S.F.代表&ソロでもノイジシャンとして活躍)にドップリと浸し、さらに今様のポスト・インダストリアルダークウェィヴまでトッピング。様式美で構築しがちな(ポスト)メタルの鉄則を意に介さずエクストリーム・ミュージックの未開地を開拓していく、最良のフリージャズのごとき無軌道なクリエイティヴィティーの熱量にやられました。プロデュースはBorisAtsuoさんで、録音&マスタリングは中村宗一郎氏。この系統のミックスはロウでカオティックな性向が善とされがちだけど、建築家の設計を見るような計算され尽くしたサウンド・デザインも斬新で舌を巻きました。

 

GLENN ASTRO & IMYRMINDのEP(タイトルなし)

最後に白状すると、実はCDやデジタル音源よりも、レコードの購入量が多い傾向が継続していた一年(9割中古ですが)。であればそっちの部門からもということで、おそらくはベルリン(?)のプロデューサー・デュオによる1枚をチョイス。というのもこの方々のことは全く知らなくて、ある日渋谷の某レコード屋さんで気になる新譜を片っ端から試聴するなか、〈耳〉だけを頼りに探り当てたブツなのです。ソウル/ジャズ中心のザラついたネタ使いとウォーム&メロウなシンセ捌きで描くのは、ディープ・ハウスビートダウンの隙間を縫うような最上級のダンス・トラックたち。中盤~後半にかけてのBボーイ・イズムだだ漏れでファットなダウンテンポも痺れるほどカッコいい。試聴音源は貼ってますが、ヴァイナルでこそ聴いてほしい逸品です。