UNITED ON THE FLOOR
[ 緊急ワイド ]今年も熱狂は終わらんよ!!

グローバルなダンスフロアを支配するハードウェルを筆頭に、EDMブーム以降の景色でムーヴメントを推進していくのはやはりこいつらだ!

 


オーディエンスに殉じる精神

 大抵のことを数字が物語るとすれば、ハードウェルの凄さのいくばくかを説明するのに数字は実に雄弁だ。例えばDJ Magの選ぶ〈Top 100 DJs〉ランキングでは2013~14年連続のNo.1。Facebookのファンは740万以上、Twitterフォロワーは190万以上。4歳からピアノを始め、10歳で楽曲制作をスタート、13歳でプロのDJとしてデビュー。14歳でDJ及びA&Rとしてレーベルと契約、19歳でディジダンス傘下にレーベルを設立してアフロジャックらをフックアップ……。 

 とはいえ、そういった諸々はあくまでも背景であって、ハードウェルが現場でオーディエンスたちと共に巻き起こした熱狂の積み重ねが現在の好況を作り出したわけであって、当然ながらそういった熱狂を引き起こしてきたのは彼のプレイであり、彼の手掛けたトラックそのものである。どうもEDMやダンス・ミュージック系のアーティストを語る際に数字の話やシーンのマーケティング術みたいな話に終始するのがトレンディーなようだが、実際にその音を楽しんでいる側のオーディエンス/リスナーにしてみれば、そこが本質的な快楽の源泉でないことは明らかだ。

HARDWELL 『United We Are』 Revealed/Cloud 9/avex trax(2015)

 ともかく、そういった数字で権威も翻弄しつつ、多層的なオーディエンスに殉じる格好で現場を真摯にエンターテインし続けるハードウェル。88年にオランダはブレダで生まれ、この1月に27歳になったばかりの彼から、いよいよオリジナル・アルバムとなる『United We Are』が届けられた。いわゆるアルバムという単位を重視するのではなく、現場を優先してトラックにこだわるスタンスは(EDMに限らず)ダンス・ミュージックの特性でもあるだけに、彼もまた膨大なビッグ・チューンを生みながらもこれまでアルバム制作に乗り出すことはなかった。アンバ・シェパードをフィーチャーした代表曲“Apollo”(2012年)をはじめ、師匠格にあたるティエストとコラボした“Zero 76”(2011年)、W&Wと組んだアッパーなカウント曲“Jumper”(2013年)、ブチ上げ必至な文字通りの“Countdown”(2013年)、そしてマシュー・コーマの美声が響くキレイ系のプログレッシヴ・チューン“Dare You”(2013年)……と、それらの多くは〈ULTRA JAPAN〉での初来日を目前にフィジカル・リリースされた日本編集盤『Japan Special Edition』にもまとめられていたものだ。ここにきて当人がオリジナル作のリリースを決めた理由はさておき、ここでの彼は特に大きな変化を見せようとしているわけではない。