UNITED ON THE FLOOR
[ 緊急ワイド ]今年も熱狂は終わらんよ!!
グローバルなダンスフロアを支配するハードウェルを筆頭に、EDMブーム以降の景色でムーヴメントを推進していくのはやはりこいつらだ!
UKダンス・ミュージック界のビッグ・アクトと言えばケミカル・ブラザーズ、オービタル、プロディジー、アンダーワールド、ファットボーイ・スリムなどが真っ先に頭をよぎるかもしれないが、彼らと人気/実力面で比肩するアーティストがいる……そうジョノ・グラント、トニー・マッギネス、パーヴォ・シリャマキから成るトランス・シーンのスーパー・ユニット=アバヴ&ビヨンドだ。2000年に結成されたこのトリオは、活動当初からピート・トンやポール・オークンフォールドなどトップDJにサポートされてきた逸材であり、現在も多くのファンに愛されている。
その魅力は〈ソングライティング〉の一言に尽きるだろう。何も他がダメだというわけではない。トランス特有の多幸感はとびきりのものだし、口うるさいダンス・ミュージックのファンだって黙らせるだけのトラックも作り上げる。そのうえで、まるで人生の素晴らしさを説くように聴く者を感動させるあまりにも美しい旋律、ドラマティックなストーリー展開を持つ楽曲を彼らは生み出すのだ。それはインスト/歌モノ問わずであるが、トラックと歌声を完璧に調和させるヴォーカル曲の良さは特筆すべきだということも付け加えておこう。その感動はギグでこそ最大限に発揮されるとはいえ、これまでにリリースされた3枚のオリジナル・アルバム(うち1作品はヴォーカリストも所属するオーシャンラブ名義)にも注ぎ込まれている(なお、シンプルに〈歌モノ〉として楽しむなら昨年発表したアコースティック・アルバム『Acoustic』もオススメだ)。
ABOVE & BEYOND We Are All We Need Anjunabeats/avex trax(2015)
また、彼らは自身の楽曲だけでなく、その世界観を反映させたリミックスにも定評があり、フェリー・コーステン、アーミン・ヴァン・ブーレンといった同業者だけでなく、マドンナ、ダイド、ブリトニー・スピアーズ、浜崎あゆみなどポップ・シンガーとの手合わせも数多い。そして、多くのアーティストと同様にレーベルも主宰。アンジュナビーツと、そのサブ・レーベルでプログレッシヴ&テック・ハウス・サイドをカヴァーするアンジュナディープがそれだ。ここからはアーティー、マット・ゾー、スーパー・エイト&タブら有望なアーティストを送り出し、後進の育成も手抜かりがない。こんなオールラウンド・プレイヤーであるアバヴ&ビヨンドにとって、最新の音源をプレイするラジオ・ショウ〈Group Therapy〉も重要な活動のひとつで、昨年は100回目を記念したライヴ〈ABGT100〉をNYのマディソン・スクエア・ガーデンで行い、13,000枚のチケットを瞬く間に完売させたばかりだ。
さて、そのアバヴ&ビヨンドから約4年ぶりとなるオリジナル・アルバム『We Are All We Need』が届けられた。クラシカルなイントロに導かれて始まる本作は、透明度の高いゾーイ・ジョンストンのヴォーカルをフィーチャーした“We're All We Need”で緩やかに離陸。アレックス・ヴァルガスの開放感ある歌唱が気持ち良い“Blue Sky Action”でアップリフテイングなモードへと突入したかと思えば、オーシャンラブのヴォーカリスト=ジャスティン・スイッサを起用したスケール感のあるメロウ・ポップもあり、ダンス・グルーヴの快楽と、しっとり聴かせる楽曲を絶妙に配置している。またしてもダンス・ミュージックを更新する作品の完成だ!