(C)Takehiko Tokiwa Manuel Valera @ SUBROSA, NYC

 

 キューバ出身の新世代ピアニスト、マニュエル・ヴァレラが2012年に結成し、グラミー賞ラテン・ジャズ部門ノミネーションにも輝いた、キューバン/アメリカン混成ユニット、New Cuban Expressの新作は、若手プレイヤーの登竜門とも言えるインディ・レーベルの雄、Cris Crossからリリースされた。

MANUEL VALERA AND NEW CUBAN EXPRESS In Motion Criss Cross(2014)

 アメリカとキューバの国交断絶後、パキート・デリヴィエラ(as,cl)らは亡命、90年代初頭のゴンサロ・ルバルカバ(p)は、日本のレコード会社がモントリオールでレコーディングを行い、その音源をアメリカでブルーノート・レコードがディストリビューションしてリリースするなど、大きな障壁があった。90年代終わり頃から、キューバから続々と、新たな才能が流入する。本作の主人公マニュエル・ヴァレラや、その盟友ヨスヴァニー・テリー(as,ss)らが、ニューヨークのジャズ&ラテン・ミュージック・ シーンを支える重要な存在となったのは、隔世の感がある。

【参考動画】マニュエル・ヴァレラ&ニュー・キューバン・エクスプレスの2013年作『Expectativas』
収録曲“Jben Timbus”

 

 様々なキューバン・リズムの上で、ジャズのテンション感を持つインプロヴィゼーションを執るというトラディショナルなキューバン・ジャズから、マニュエル・ヴァレラのスタイルは大きな進化を遂げている。複雑なリズムと、高度なハーモニー感覚が、渾然一体となってリスナーを飲み込む。またアレックス・スピアギン(tp)や、トム・グアーナ(g)ら異なるバック・グラウンドを持つプレイヤーが、スパイスとなっている。唯一のキューバのシンガー・ソングライターのホセ・アントニオ・メンデス作のボレロ《No Puedo Ser Feliz》では、キューバン・ルーツを強く主張する。

 ヴァレラは、ニュー・キューバン・エクスプレスとの活動と並行して、米人アーティストをメインとしてグルーヴ・スクエアというコンテンポラリー・ジャズのニュー・プロジェクトを起ち上げた。今後の活動も要注目である。