〈音楽〉と〈クラフトビール〉という2つのテーマを柱に、東京・晴海客船ターミナル特設ステージで開催されたイヴェント〈CRAFTROCK FESTIVAL '15〉。こだわりのブッキングで集められたアーティストたちの音楽を聴きながら、国内外の銘柄60種類以上という、さまざまなスタイルの樽生クラフトビールが楽しめる〈CRAFTROCK FES〉にMikikiが初潜入! ビール一杯でだいぶ気持ちよくなってしまうお酒が弱めな担当記者による、ユルユルのレポートをお届けします!
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★番外編! 超貴重なbluebeardのロング・インタヴューはこちら
この日、誰もが気にしていたであろう天候は……快晴! いや~よかったよかった。普通の野外フェスでもつらいのに、ビールを飲みながら楽しみたい〈CRAFTROCK FES〉にとって雨天はなおさら大敵。実は前日には雨が降って、予報ではフェス翌日も雨だったのでかなり心配していたのですが、気持ちいいくらいカラッとした晴天になりました。
開演の12時を前に会場の晴海客船ターミナルに到着。5月とは思えないほど日差しが強かったけど、潮風が心地よくていい塩梅なのです。ということで、こちらのオススメに従って本日のファーストビアーは〈サンクトガーレン/湘南ゴールド〉に決まり! ライトな口当たりとほのかに香るオレンジ、早くも火照り気味な身体の熱を冷ましてくれる爽やかな一杯でした。
そうこうしているうちに、トップバッターのQUATTROがメインステージの〈CRAFTROCK STAGE〉に登場。いよいよフェスが始まるぞ!と会場のテンションが一気にヒートした瞬間、海からサーっと潮風が吹いてきて、彼らの音にいつも以上に解放感を感じたのは……〈CRAFTROCK〉マジック! メンバーもビールを飲んでリラックスしながらライヴを楽しんでいた様子で、「僕らもだいぶ飲んでるので(笑)、みなさんも楽しみましょう!」との言葉に多くの祝杯が上がっていました。
メインステージの隣りにある〈Left Hand STAGE〉に現れたのは、神奈川・逗子からやって来たシンガー・ソングライターで、実はこの日の出演者で紅一点だったiri。ビビッドなオレンジの衣装がお似合いで、記者の前にいたファンと思しき方はしきりに「かわいい……」と溜め息まじりにつぶやいていました(笑)。そんな彼女の声、すごく芯があって、じっくりと歌い上げるほどにソウルフルな艶が出るんです。歌とギターだけでゆるやかに紡がれるグルーヴに身を委ねて、青空の下で気持ちいい時間を過ごさせてもらいました。
続いて、真昼の野外に似つかわしくない(?)黒ずくめの男たちが〈CRAFTROCK STAGE〉にゾロゾロと現れます……これが噂のSODA!。フロントマンの浅野忠信だけでなく、メンバー全員のギラギラした存在感と圧力が凄い。浅野さんは「みんな熱いだろうけど、こう見えても俺たちは冬物着てるからね(笑)。俺たちが一番アチー!」と宣言していましたが、燃え盛るエナジーに満ちた性急なパンク・ファンクを全身全霊で鳴らす大人たちは、確かにアツくてカッコよかった!
このあたりで二杯目に突入。せっかくの機会なので、スコットランドの醸造所〈FYNE ALES〉が〈CRAFTROCK FES〉のため作ったペールエール〈Acoustic Breeze〉をいただくことにしました。まずはシトラスなどをベースにした甘めな芳香が鼻を抜けて、その余韻が残るなかキリッとした苦味が引き締めてくれるという絶妙なバランス。これは〈湘南ゴールド〉に続く一杯としてバッチリでした!
次に、今回の〈CRAFTROCK FES〉のダークホース的な存在になるのでは?と予想していた吉祥寺のバンド、CARNIVALがステージに。物怖じしない……というより、貫禄たっぷりの太太しさでマスロッキンかつへヴィーなサウンドを繰り出し、それを聴きつけて慌ててステージに走るオーディエンスの姿も。なぜか英語のMCを挟みつつ、とことんエモくて激しいパフォーマンスが痛快でした。野外に合う音だし、今後のフェスのオファーが増えそう? ともあれ、最後に挙がっていた多くの拳がこの日の勝敗を物語っていたのでは。
そんなCARNIVALとは打って変わってリラクシンな音を響かせたのは、Ovallのギタリストとしても知られる関口シンゴ。ブライトで枯れたトーンのギターとメロウなエレピが空中を舞い、いい具合にレイドバックした空気を形作っていきます。記者もこのあたりで音に揺られてかなり気持ちよくなり……と思っていたら、先ほど出演したiriがステージに登場し、関口さんのアルバム『Brilliant』に収録された彼女とのコラボ曲“繋いだ未来”を披露! ますます心地よい音の波にいろんな意味で酔いしれました。
しかし、ここで30分の休憩が挟まれたのでなんとかセーフ。まだまだ行くぞ!ということで、三杯目の〈Hop Soundsystem〉にトライしました。こちらも、カリフォルニアのブルワリー〈DEVIL'S CANYON〉が〈CRAFTROCK FES〉の開催を記念して作ったスペシャルなインディア・ペールエールで、IPAならではの香り高さとしっかりしたホップの苦味がキリッとうまい!
周りを見渡してみると、お客さんの数が増えてきていることに気付きました。それもそのはず、後半戦のトップを飾るのは、最新アルバム『謎のオープンワールド』のリリース・ツアーの合間を縫って〈CRAFTROCK FES〉に駆け付けたthe band apart。メンバーがステージに現れた途端に大歓声で、〈ビール片手に〉というよりガッツリとライヴに集中するお客さんが多数でした。バンアパもその熱に応え、すごく楽しそうに演奏していてるのに音はキッレキレ! 終盤には、ヴォーカル/ギターの荒井岳史氏が「ビール飲むの我慢してたから……」と思わず本音(?)を漏らす一幕も。
いつの間にかすっかり太陽が雲に隠れ、昼までの炎天が嘘のように涼しくなったなぁと思ったら、天使のささやきのようなjan and naimiのハーモニーが晴海埠頭にこだましていました。改めて感じたのが、〈熱いライヴ〉→〈チルアウトできるパフォーマンス〉という流れを繰り返すタイムテーブルの構成は、ビールを気持ちよく飲みながら楽しむにはうってつけということ。触れると壊れてしまいそうな繊細さを持ったjan and naimiの歌声に包まれ、少し赤くなってきた空を眺めながら感傷に浸りつつクールダウン……。
四杯目は、ここまでずっと爽やか系ばかり飲んできたこともあり、日が暮れてきたことにも合わせてグッと濃厚な〈サンクトガーレン/スイートバニラスタウト〉をチョイス。バニラビーンズがズッシリと重くて、バニラチョコのような後味があります。芳醇な甘さと、引き立て役に回らない主張のある苦味の合わせ技に圧倒される一杯でした。さらに、お腹が空いてきたこともあって、フードブースにてチキンサルサライスを購入。ジューシーな鶏肉とピリ辛のサルサソースがビールに合う!
次はエモ・シーンが誇るカンサスの音響職人、アップルシード・キャストがメイン・ステージに降臨! まず驚いたのは、ほかのエモ・バンドに比べるとアンサンブルを重視するため歌のパートが少なめなASCにもかかわらず、終始シンガロングしていたファンも多く見受けられたこと。こんなに人気があったのか! ゆっくりと音を積み重ねていく彼らのサウンドはフェスで盛り上がるのだろうか?と余計な心配をしていたものの、とんだ杞憂でした。バンドと共に歌い、体を揺らすオーディエンスたち。愛されてるなぁ。
そんな聴衆の昂った気持ちを見事に鎮めてくれたのが、アコーステック・ギターを片手にステージに現れた蔡忠浩。だって、坂本九“上を向いて歩こう”や西岡恭蔵“プカプカ”、ルイ・アームストロング“What A Wonderful World”から果てはザ・ブルーハーツ“青空”まで、夕暮れどきにあんなにも優しく伸びやかな声で歌われたら、誰もがしんみり聴きいってしまいます。なかでも、bonobosの名曲“Gold”のセルフ・カヴァーには涙が出そうに……。
真昼の炎天下から長きに渡った〈CRAFTROCK FES〉も、いよいよ最後まで辿り着きました! 結局ここまで酔い潰れることなく気持ちよく飲めてしまった記者は、大トリのbluebeardのジョージ・ボッドマン氏が愛飲してるアルコール度数8.0%の志賀高原ビール/HOUSE IPA〉でシメることに。想像していた口当たりとまるで違ってスルスル飲める喉越し抜群な一杯(しかしこれは酔いそうだ……)。
そして遂に、この日が14年ぶりの正式なライヴとなるbluebeardの出番に。スタッフによるサウンドチェックの時点で歓声が飛び交う異様な期待感のなか、メンバーがステージに現れるや会場のテンションが大爆発! 1曲目“room 501”のイントロが鳴った瞬間に号泣していたお客さんも多数で、本当に多くの人がこの日を心待ちにしていたんだなぁと実感しました。ライヴはアンコールの“Correct”まで大合唱の嵐。バンドもオーディエンスも完全燃焼のライヴだったのではないでしょうか。
ということで、無事に大団円を迎えた〈CRAFTROCK FESTIVAL '15〉。初めて参加してみて感じたのは、クラフトビールをとことん飲める音楽イヴェントがこんなに楽しいんだ!ということ。60種類以上のビアーに目移りしながら選ぶのがまず楽しいし、クラフトビールのショップ〈CRAFT BEER MARKET〉を運営するフェス側が厳選したラインナップだけあって、どれも個性的で品質は保証済み。ロケーションや舞台の構成、出演者のサウンドまで、ビールとの相性がしっかり計算されているように思いました。これは一度行ったら病みつきになること必至。改めて声を大にして、音楽好きにもビール好きにもぜひ参加してほしい!とオススメします。次回は仕事抜きで参加したい(笑)!