人を育てる、という教育本来の目的は、それぞれの国の「あるべき人」の理想像によって方向づけられる。美術(写真や映画)では見ること、音楽では聴くことの修練を積むことができる。この本が紹介する米国における音楽教育に対する取り組みを見ると日本はずいぶん、聴く文化への関心が薄いことがわかる。そもそも結果オーライの受験制度や就活が続くこの国でいまどんな習熟した人の能力や人格の理想像が教育する側にあるというのだろう。ある大脳生理学者は、音楽の能力は本能とはまったく無関係な能力という。ゆえに非常に人間的な才能であるに違いないのだが。