元来ルネサンス音楽を専門分野としている金澤正剛氏が、それに至る音楽の歴史を詳細に研究された結果生み出された著書が本作である。その主題は3つあり、(1)「中世の大学で教養基礎科目であった音楽教育の実態」(2)「中世教養人の音楽的メンタリティについて」(3)「そのメンタリティがポリフォニー音楽誕生にどのように動いたのか」を基本テーマにして論じられている。一見難解そうに見えるが文章はとても読みやすく理解しやすい。音楽の特徴と歴史の変遷を記譜法をひとつのベースにして論じられており、豊富な図版も読者の理解の一助になっている。現代でも用いられている拍子記号「C」の起源など予想外のトリビアも惜しげなく紹介されているのも愉しい。