2010年7月の結成から丸5年、高い音楽性とパフォーマンスによって、仙台から全国区にその魅力と実力を轟かせてきたガールズ・ユニット、Dorothy Little Happy(以下:ドロシー)。今年は結成5周年を華々しく祝うべく全国ツアーを敢行したものの、その矢先にメンバー3名が離脱を発表したことも記憶に新しい。ただ、これまでもメジャー・デビュー直前に東日本大震災に遭うなど、決して平坦ではない道程を歩んできた彼女たちは、そのたびに次の一歩を踏み出してきた。ユニバーサルGEARへのレーベル移籍を経ていよいよリリースされたニュー・シングル“Restart”には、2人になったドロシーの現在進行形と、活動6年目に入ったグループのストーリーを占う希望が詰め込まれている。グループのヴィジョンを描いてきたリーダー・白戸佳奈と、自他共に認めるシーン指折りのヴォーカリスト・髙橋麻里。新しいドアを開いたばかりの2人に話を訊いた。

Dorothy Little Happy Restart ユニバーサルGEAR(2015)

――“Restart”というのが何をもってリスタートなのか、少し振り返るところからなんですけど……まず、この半年ほどで、どうやって気持ちを立て直してきたのか伺いたいです。

白戸佳奈「はい。もちろんモチヴェーションが下がっちゃったり、落ち込んだこともあったんですけど、やっぱり小さい頃から持ってる自分の夢は変わらなかったし、ライヴでドロシーの歌を聴いて楽しんでくれてるファンの皆さんの顔を思い浮かべながら、早く新曲が歌いたいと考えてがんばってきました」

髙橋麻里「メンバーが3人も卒業してしまうっていうのは、ドロシーにとって凄く大きなことだったし、気軽に〈いいよ〜〉って言えることではないじゃないですか。でも、それは3人が決めたことだし、ドロシーを続けていこうっていうのも私たち2人が決めたことなので、改めてドロシーっていうものを深く考えたし、自分に向き合って、これからもがんばっていこうっていう決意が改めてできたので、大きなターニングポイントだったと思います」

――ひとことで仰ってますけど、決意に至るまでは簡単じゃないですよね。

麻里「そうですね……でも、何が自分にできるかっていったら、やっぱドロシーとして、私の歌を聴いてくださっている方がたくさんいるので、それをこれからも続けていきたいな、それが私のできることだな、って」

――失礼な訊き方になっちゃいますけど、例えばそれぞれ別の形で活動を続けようという選択肢はなかったですか?

佳奈「考えなかったです。やっぱりDorothy Little Happyっていうものが大好きで、ドロシーの歌が大好きだし、それが歌えなくなったり聴けなくなったりするのが嫌だなと思って。ドロシーの歌を歌い続けて、新しいドロシーを皆さんに発信していかなきゃいけない!っていう使命感みたいなものもありました」

白戸佳奈

 

――とはいえ、発表後に5人でのツアーもあって。ファンの皆さんもそうだったと思うんですけど、急な展開すぎて気持ちがついていかない部分はなかったですか?

麻里「それはなかったです。ツアーの間は5人のドロシーとしてしっかりやっていきたいという気持ちのほうが強かったので、ホント目の前のことしか考えられなかったっていうのが本音で」

佳奈「先のことを具体的に考えられるようになったのは、ツアーが終わってからでしたね」

――ちなみにファイナルの中野サンプラザはライヴDVDになってますが、ご覧になりましたか?

麻里「観ましたよ(笑)」

佳奈「私は観てないです(笑)。ただ、ライヴ自体は凄くいいものができて、結成5周年の感謝を5人で伝えるっていう意味で、5人とも最高のパフォーマンスができたライヴだったんじゃないかな、って思います」

――いつか観られる時がくるといいですね(笑)。じゃあ、そういう経験があってから、普段の2人の関係って変わってきました?

佳奈「2人になって、より絆が深まった気はします。なんか、小学生の頃から一緒にやってきてるので、全部わかり合ってるので(笑)」

――前よりよく話すようになったり?

佳奈「そこはそんなに変わんないですね。でも、考えてることが一緒というか、MCとかでも足りないところを補い合えてるし、いい相性なんだなと思います」

麻里「あえて多くは話さない(笑)」

佳奈「以心伝心できるし。逆にパフォーマンスのほうが大変で、5人でやってた曲を2人でやらなきゃいけないので、歌割とかダンスの魅せ方っていうのも全然変わってくるし、どうすればいい魅せ方ができるのかっていうのは凄く研究しました」

髙橋麻里

 

――前より〈相棒〉みたいな感じが出てると思います。そもそも2人はB♭を組む前から出会ってて、けっこう長い仲ということですよね。

佳奈「小学5、6年生の時だから10年ぐらい? 長いね」

麻里「2桁です(笑)。半生」

――人生の半分ですもんね。だからこそ、ここからも2人でやっていくことに迷いは……。

佳奈「なかったです」

麻里「そうだね。運命でこの2人に導かれたのかな、って考えたりします(笑)」

――運命的といえば、ちょうどリリース前日に麻里さんは誕生日ですね。

麻里「フラゲ日です。だから、いっぱい聴いてください(笑)」

――では、その“Restart”の話ですが。そもそも次のシングルはどういう曲にしたいと考えてましたか?

佳奈「そこはけっこう悩んでて、2人のドロシーだと新しく変わるのかな、とか。ただ、私たちの気持ちっていうのは絶対に曲に乗せたいなって思ってたところに、この“Restart”っていう曲があって、もう、〈これだ!〉って。即決でした」

麻里「うん」

――RETOさんというバンドから提供された曲ですが、これはもう、2人のために作られたような曲じゃないですか。

佳奈「ホントにぴったりすぎて!」

麻里「何でわかるの?って。RETOさんの原曲を聴いて、すごいイイ曲だなって思ったのと、そこに〈ドロシーらしさ〉もある気がしたというか、ドロシーらしい形で良い曲にできるなと思いました。自分たちの歌ってる姿が想像できた曲です」

佳奈「いまの気持ちをそのまんま歌ってる曲ですね。自分たちの気持ちが表れた曲でもあるんですけど、いまから何かをがんばろうと思ってる方の背中を押せる一曲にもなってるんじゃないかなと思います」

――いままでのイメージからガラッと変えたいとか、そういう狙いはありましたか?

佳奈「そうですね……ドロシーの芯となるものは変えたくなくて、かといって同じことをやるだけじゃなく、この2人でしかできないことをやりたくて」

――その〈芯となるもの〉って?

佳奈「言葉にするのは……凄い難しいですよね(笑)。でも、自分たちが〈あ、この曲やりたいな!〉って思った曲には何か共通点がある気がしてて……何なんだろうね?」

麻里「何かエモーショナルっていうか、心がジーンとするような曲が〈ドロシーらしさ〉なのかな、って最近思ってて。明るい曲でも切ない曲でも、歌を通して感動や幸せを与えたいっていうのがドロシーのテーマだったりするので、曲の雰囲気が楽しいとか切ないとかだけじゃなく、心に届くような歌詞だったりメロディーだったりを無意識に選んでるのかな、と思います」

――グッとくる部分があるってことですね。実際にパフォーマンスしてみて、ファンの皆さんの反応も含めていかがですか?

佳奈「今回の“Restart”だと、踊りながらずっと私がハモってるのが初めてのチャレンジなんですけど、〈ハモリが最高だね!〉って言っていただけます(笑)。先日も屋外で歌ったんですけど、外で響く麻里ちゃんの歌声は最高でした」

麻里「えっ、やった(笑)!」

――(笑)バンドでも合いそうですよね。

佳奈「いつかRETOさんに演奏していただいて歌いたいです」

――カップリングのうち、“コトノハ”もRETOさんの曲ですね。

麻里「やっぱりバラード曲も入れたいなというのは思っていて。この“コトノハ”は、いなくなった大切な人への想いを歌ってる切ない曲で、その意味でもいまのドロシーにぴったりだし、皆さんにも共感してもらえるんじゃないかな、と思って。すごく気持ちを入れて歌いやすいです」

佳奈「なかなか自分ではハッキリ言葉にできないような、心の中の葛藤を歌ってる曲だと思います」

――ドロシーって未来に向桁ポジティヴな曲も多いですけど、別れとか距離をテーマにした名曲がすごく多くて、そこが〈ドロシーらしさ〉でもある気がします。

麻里「わかります」

――こういう曲は麻里さん、やっぱり素晴らしくハマりますね。

麻里「うれしいです(笑)」

――で、カップリングの他2曲“この世界が終わる前に”と“青い夕暮れ”は、初顔合わせの三宅英明さんが作曲されていて、どっちも佳奈さんの作詞になりますね。

佳奈「4曲ともたくさん候補があったなかから選んだんですけど、“この世界が終わる前に”は麻里ちゃんがすごくお気に入りだったもので」

麻里「私がアニメを凄く好きなので、こういうかっこいい曲も歌いたいなと思って選ばせてもらいました」

――確かにアニソンに通じる疾走感があって。佳奈さんは前から作詞されてますけど、この詞は言葉がデカくなってますね。

佳奈「そうなんです。いままで書かせてもらったときは、〈自分、がんばるぞ!〉みたいな、心の中の気持ちを書いてるのが多くて」

――“keep on tryin'”とか“Breaking through”とか。

佳奈「そうですね。等身大の自分の気持ち、みたいのが多かったんですけど。今回はそうじゃなくて、もっとスケールの大きい世界観の歌詞がピッタリだね、っていう話を麻里ちゃんとしてて」

――ドロシーでこういう曲調のものってあんまりなかったと思うんですけど、麻里さんはこういう曲ももっと歌ってみたい気持ちはありました?

麻里「ありました(笑)。アニソンって、言ってることも大きいし、〈世界を相手にしてる〉みたいな感じがかっこいいので」

――パフォーマンスも激しくなりますね。

佳奈「“この世界が終わる前に”は、歌うところではしっかり歌って、間奏ではもう思いっきり踊るみたいな、そのギャップを大切にしてますね」

――そして、もうひとつの“青い夕暮れ”ですが。これはいままでの作風にいちばん近いというか、王道のガールズ・ポップ感があります。

佳奈「曲調もポップで可愛い感じだったので、青春みたいなキュンキュンする歌詞がいいなと思って書いたのと、あと、2人になることに決まってからここまで支えてくれたファンの皆さんへの感謝の気持ちも、そこに込めてみました」

――そういう佳奈さんの歌詞について、麻里さんから意見したりすることもあるんですか?

麻里「〈ここはこうしたいな〉というのがある時は話しますけど、基本はOK〜って感じです(笑)。私が思ってるような歌詞ができるので、凄いなあと思います」

――そこも以心伝心で。なかなかヴァラエティーのある4曲になりましたね。

佳奈「欲張りなんで(笑)。どの曲にも違ったいいところがあって、いろんな音楽を好きな方に気に入っていただける内容になっていると思います!」

――それぞれお気に入りの1曲をあえて選ぶとしたら?

佳奈「1曲というのは難しいんですけど……選ぶなら、私は“Restart”です。イントロの〈いまから来るぞ〉っていうワクワクする感じも凄い好きだし、歌が始まるとノンストップで最後まで歌が続くので、それが快感です。麻里ちゃんの主メロを聴きながらずっと歌うのって、いままでにない経験だったので、心地いいというか、うまくハモれたときに〈よっしゃ!〉って(笑)」

麻里「私はとことんバラードが好きなので、“コトノハ”ですね。このあいだ初めて皆さんの前で披露したんですけど、目を閉じて聴き入ってる方もいて……私は歌で伝えたいし、歌が得意なので、そうやってじっくり聴いてくださってるっていうのは凄く嬉しいです」

――麻里さんの歌は素晴らしいんですけど、それを自分で言っちゃうのがいいところですね(笑)。

佳奈「そうなんですよ。最近さらに言うようになってきて、そこまで言わなくてもな……って思うんですけど(笑)」

麻里「自信ないと皆さんの前では歌えないですから(笑)。ぜひ私の歌を聴いて、いまのドロシーの決意を受け取ってもらえたらいいなと思います」

――はい。では、このシングルを出してからの展望を教えてください。

佳奈「今回2曲を提供していただいたRETOさんに、いま書き下ろしをお願いしているところだったり、他にも年末から来年に向けていろいろ準備しているところなので、楽しみにしていただきたいです」

――楽しみですね。いままでの曲をこの2人でどう魅せるかという期待もあるんですけど、そう言われないぐらいの状況になるのが一番ですよね。早く2人でのアルバムを作ってほしいです。

麻里「作りたい! 2人の新曲をもっともっと増やしていって、新たなドロシーを積み重ねていければいいなって思います」

 


Dorothy Little Happy
共に94年生まれの白戸佳奈と髙橋麻里から成る、仙台在住のガールズ・ユニット。2010年7月に結成が発表され、シングル“ジャンプ!”でデビュー。メンバー・チェンジを経て、2011年3月にミニ・アルバム『デモサヨナラ』でメジャー・デビューを果たす。8月に出演した〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉で評判を集め、2012年よりコンスタントにリリースを重ねていく。今年に入って、4月に結成5周年を記念するベスト・アルバム『The best of Dorothy Little Happy 2010-2015』を発表し、7月に行った初の中野サンプラザ公演を区切りに現編成へと移行。レーベル移籍第1弾となるニュー・シングル“Restart”(ユニバーサルGEAR)を12月16日にリリース。