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35周年を迎えた少年ナイフの〈アドベンチャー〉を追跡!

いつ聴いてもハッピー

 「正直、35年経っていたことも気づいてなかったぐらい(笑)」(なおこ、ヴォーカル/ギター)。

 少年ナイフが今年、結成35周年を迎えたことについて尋ねると、なおこは返答にちょっと困りながら笑った。

 「いろいろ助けてくれる人と少年ナイフを支持してくれるお客さんが見守ってくれたおかげです。ライヴでお客さんが楽しんでいる顔を見たら、それが私たちのエネルギーになる。それで続けてこられたんです」(なおこ)。

少年ナイフ アドベンチャーでぶっとばせ! Pヴァイン(2016)

 決して謙遜ではなく、それが正直な気持ちなのだと思うから、筆者が言っておきたい。メンバーが変わっているとは言え、女性だけで35年も活動を続けてきたロック・バンドが世界中にどれだけいる!? しかも2年ぶりのニュー・アルバム『アドベンチャーでぶっとばせ!』は、少年ナイフが36年目にしてまた新たな局面を迎えたことを印象づけるものになっているんだから、快哉を叫ばずにいられないではないか。

 「新しいラインナップになったことでまたフレッシュになったと思います。りさちゃんにはりさちゃんのスタイルがある。それがあつこと私の演奏に混じりあって、新しい音になっている。レコーディングはワクワクしながらできました」(なおこ)。

 昨年7月に20歳のりさ(ドラムス/ヴォーカル)が加入。そして、同年4月より産休のりつこに代わってUSツアーに参加したオリジナル・メンバーのあつこ(ベース/ヴォーカル)も、ほぼ10年ぶりに正式メンバーとして戻ってきた。

 「私はアメリカに住んでるんで、復帰って話になるとは思ってなかったから嬉しかったです」と、ネットを通じてインタヴューに参加したLA在住のあつこ。

 「ネットもあるから、昔よりも不便なことは少なくなりましたね。それに、りさちゃんはもともと大分でお父さんと妹さんとバンドをやってたんですけど、大阪に通うという形で参加してもらえないかって声をかけたら、大阪に引っ越してきてくれて」(なおこ)。

 少年ナイフの曲をコピーしながらドラムを覚えたというりさは、少年ナイフの魅力をこんなふうに語る。

 「シンプルでわかりやすいし、楽しいし、いつ聴いてもハッピー。女の人だけで楽しそうに演奏しているのもカッコイイ。それにずっと変わらないじゃないですか。突然セクシー路線になったり……」(りさ)。

 「無理無理(笑)」(あつこ)。

 「……アイドル路線になったりしない。ずっとロックなところがいい。誘われた時は喜びとワクワクしかなかった」(りさ)。

 

みんな歌えて理想の形

 そんな新体制で制作された今作では、なおこがこれまで以上にライムを意識しながら3か月かけて作った新曲を、いつもより入念にリハーサルしてからレコーディングに臨んだという。前作『嵐のオーバードライブ』では、〈ポップ・パンク・バンド〉と括られるのが多いことに対し、それだけじゃないという思いを込めて、ハード・ロックを含む70年代のロック的なアプローチを深めたが、今回はその延長上でありつつ、「レヴェルアップした」(なおこ)と言う通り、ブリティッシュ・ビート、フォーク・ロック、サイケなどの要素も交え、さらに多彩なものに。しかし、それがリスナーを圧倒するようなものではなく、どこかリラックスしたポップな作風になっているのが彼女たちらしい。もちろん新境地もアピール。

 「あつこのノリは後ろノリと言うか黒人的と言うか、日本人には珍しいタイプのリズム感の持ち主なので、全体的にグルーヴィーなベースを弾いてるんですけど、特に“Wasabi”は彼女が歌っていることもあって、そういう魅力がより出ました。りさちゃんが歌っている“Green Tangerine (Kabosu)”は声が純粋な感じで、可愛らしい楽しい曲になりましたね」(なおこ)。

 キッスのツイン・ヴォーカルにインスパイアされ、なおことあつこが2人で歌った“Tasmanian Devil”は、まるでハード・ロックと60年代のガールズ・グループ、シャングリラスが出会ったような楽曲だ。

 「そういう音楽も好き。フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズが大好きで、『ジャージー・ボーイズ』は何回も見ました。他にもデス・メタルも好きだし、SHINGO★西成をはじめ日本語ラップも、クラシックも聴きます。だから次はどうなるかわからない。ラップになるかもしれないし、パンク・ポップに戻るかもしれないし(笑)」(なおこ)。

 そう言われてみれば“Cotton Candy Clouds”の跳ねるようなヴォーカルは、ラップの影響かもしれない。しかし一番影響を受けたのはビートルズとのこと。

 「全員が歌えてハモれて演奏もできるバンドが理想。いまはみんなが歌えるから理想の形になってると思います」(なおこ)。

 今後は4月にイギリスとアイルランド、6~7月に日本と、精力的にツアー及びライヴ活動に邁進する。あつこが参加できないライヴは、育児中のりつこや、サポートから正式メンバーとなったなる(ベース)が演奏するという。結婚、出産、育児という理由でバンドを離れても、戻ってこられる場所があるところは、〈女性がロックするバンド〉にこだわって活動してきた少年ナイフならではかもしれない。これまで多くのガールズ・バンドに影響を与えてきた少年ナイフは、そういう意味で今後も、ロールモデルになっていきそうだ。

 「女性だけでやるほうが話も感覚も合う。着替えもホテルも一部屋でいいし、すべてが便利(笑)。みんなで助け合って、バンドを楽しいものに盛り上げたいと思ってやってます」(なおこ)。

 

 


少年ナイフとマインドを共有する世界のガールズ・バンドたち

 『fun! fun! fun!』(2007年)のリリース時に「高校時代、聴きまくってました」とコメントを寄せたチャットモンチーをはじめ、ドナスや住所不定無職など、少年ナイフから影響を受けたと語るガールズ・バンドは国内外問わず少なくない。男勝りというわけでも、殊更に色気をアピールするわけでもなく、〈女の子たちが等身大でロックを演奏するその姿がカッコイイ〉という少年ナイフがやり続けてきたことは、世代を超えて多くのガールズ・バンドに受け継がれている。

 〈FUN〉を追求する姿勢に加え、ローファイなポップ・パンクという音楽面でもナイフを連想させるのが、いま世界中が注目しているスペインのハインズ。そのハインズと縁があるLAのバーガーはガレージ・ポップの宝庫だが、ナイフと同じく姉妹によるサマー・ツインズや、アクアドールズなど女子アクトも多い。また、かつて少年ナイフの楽曲を起用したUSのTVアニメ「パワーパフガールズ」の新テーマ・ソングを歌うシアトルのポップ・パンクな4人組、タコキャットも要注目。彼女たちが所属するサブ・ポップ傘下のハードリー・アートでは、4人組のラ・ルースもオススメだ。 *山口智男

ハインズの2016年作『Leave Me Alone』収録曲“Garden”
タコキャットの2016年作『Lost Time』収録曲“I Hate The Weekend”
 

 

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海外のインディー・シーンと繋がった80年代!

 少年ナイフが大阪で結成されたのは81年12月のこと。オリジナル・メンバーは、なおこ、中谷美智枝、あつこの3人だった。82年に自主カセット『みんな楽しく少年ナイフ』を発表して見事ソールドアウト。勢いに乗るバンドは83年にファースト・アルバム『BURNING FARM』を完成させ、手作り感溢れるポップなロックンロールとユニークな歌詞で注目を集めた。84年には2作目『山のアッちゃん。』をリリースし、元チャクラの板倉文プロデュースによるインディーの女性ヴォーカル・バンドを集めたコンピ『くっついて安心』にもD-DAYやコクシネルらと共に参加。関西から全国区へと躍り出した3人は、86年に3作目『PRETTY LITTLE BAKA GUY』を発表する(代表曲“ロケットにのって”も収録)。一方、85年に『BURNING FARM』がカルヴィン・ジョンソン(ビート・ハプニング)の主宰するUSのインディー・レーベル、Kからリリースされると、ニルヴァーナのカート・コバーンをはじめ海外のロック・シーンに熱烈なナイフ・ファンが生まれて、89年にはソニック・ユースやレッド・クロス、L7らが参加したUS/UKのインディー・バンドによるトリビュート盤『Every Band Has A Shonen Knife Who Loves Them』が登場する事態に。そして、ナイフは海外へと飛び出していったのだった。 *村尾泰郎

ソニック・ユースの88年作『Daydream Nation』収録曲“Teen Age Riot”
 

 


世界的なブレイクを果たした90年代!

 レッド・クロスとの共演曲を含む4作目『712』を携え、海外でライヴを行う機会の増えた91年。当時『Nevermind』を発表したばかりのニルヴァーナに帯同してUKツアーを巡り、翌92年にはそれまでの代表曲を新たにレコーディングしたメジャー進出作『Let's Knife』を日米英でリリース。UKの〈レディング・フェス〉に出演したり、〈日本レコード大賞〉の特別賞を受賞したりと、名実共に国際的なバンドへと成長していく。サーストン・ムーアも参加した93年作『Rock Animals』でグランジ・ブームの波にも乗りつつ、94年のミニ・アルバム『Favorites』ではマーサ&ザ・ヴァンデラスやビーチ・ボーイズの名曲を取り上げて古き良きポップスへの憧憬を改めて示した彼女たちは、カーペンターズ“Top Of The World”のカヴァーが96年にマイクロソフトのCMソングに起用されて世界的にブレイク。以降も、小山田圭吾(コーネリアス)や石野卓球、EYE、ステレオラブ、アレック・エンパイアらをリミキサーに起用したり、プレシデンツ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカの面々とコラボしたりと、音楽の輪を広げていって順風満帆……と思えたが、99年2月にオリジナル・メンバーの中谷美智枝が脱退。ここであつこがドラマーからベーシストに転身し、姉妹は新たな体制で新世紀を迎えることに。 *北野 創

少年ナイフの97年作『IT'S A NEW FIND』収録曲“IT'S A NEW FIND”
ニルヴァーナの91年作『Nevermind』収録曲“Lithium”
 

 

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活動スタイルの礎を築いた2000年代!

 2000年代に入ってからも、ほぼ年に一枚のペースでアルバムをリリースし、現在まで続いている毎年〈712(ナイフ)の日〉恒例の主催イヴェント〈712 Day Party〉を2001年に初開催するなど、少年ナイフはなおこ&あつこのデュオとして精力的に活動してきた。だが、2006年、あつこが結婚を機に脱退。同時期に元ピンクパンダーのえつこ(ドラムス)が、2008年には電気キャンディのマリリンことりつこ(ベース)がそれぞれサポート期間を経て正式加入。なおこを中心にメンバーを入れ替えながらバンドを続ける現在の活動スタイルがスタートする。また、結成25周年を迎えた2006年は〈フジロック〉ほか、数々の大規模フェスに出演。甲本ヒロトや真島昌利、bloodthirsty butchers、山本精一らが参加したトリビュート・アルバム『Tribute to Shonen Knife - Fork and Spoon』も制作され、その存在感をアピールした。音楽的には、ポップ・パンクに回帰した2005年作『GENKI SHOCK!』(元ルナのディーン・ウェアハムがゲスト参加)を経て、新体制で作り上げた2007年作『fun! fun! fun!』からグッとロック色の濃い作風に。 *山口智男

少年ナイフの2005年作『GENKI SHOCK!』収録曲“スパム警告”
2007年作『fun! fun! fun!』収録曲“重力無重力”
2008年作『スーパーグループ』収録曲“Super Group”
 

 


チャレンジ精神が止まらない2010年代!

 2010年3月、ドラムがえつこから元ニーハオ!のえみに交代。結成30周年を迎えた2011年には、GO!GO!7188、ランナウェイズのトリビュート盤への参加を経て、なおこ、りつこ、えみのラインナップでは初作となるラモーンズのカヴァー・アルバム『大阪ラモーンズ』をリリース。原点回帰を思わせる同作がダメ押しで印象づけた〈少年ナイフ=ポップ・パンク〉というイメージを払拭するという思いも込め、2012年の『Pop Tune』を挿み、2014年作『嵐のオーバードライブ』ではこれまでも時折アプローチしてきたハード・ロックを中心とする70年代のロック・サウンドにとことん迫った。そんな新たなチャレンジは今回のニュー・アルバム『アドベンチャーでぶっとばせ!』でさらなる成果を生むことに。2015年4月の〈四つ葉のクローバーツアー〉ではあつこを迎え入れた初の4人編成でフル・ステージでのライヴを実施。その後、りつこの産休を受けて、6月のUSツアーでもあつこが一時的に復帰。さらにえみの脱退を経て、BRINKYのりさが新たに加入し、現在はなおこ、全面復帰したあつこ、りさというラインナップに。 *山口智男

2012年作『Pop Tune』収録曲“Pop Tune”
 

 

Shonen Knife  "Adventure"

Interviewed and written by: Tomoo Yamaguchi


Following Shonen Knife’s 35-year 'Adventure'

Every listen makes me happy

“To be honest with you, I didn’t notice it’d been 35 years,” titters Naoko, the vocalist and guitarist in Shonen Knife, when asked about the post-punk band, who celebrate their 35th anniversary this year.

“It’s all down to the supportive people and followers that come and see us. Seeing them enjoying our live shows energises us and encourages us to keep going.”

少年ナイフ アドベンチャーでぶっとばせ! Pヴァイン(2016)

Note that she isn’t trying to be humble here and the answer simply comes from the heart. Shonen Knife might have seen a lot of members come and go, but how many female bands that have survived for 35 years are out there? You can’t help but rejoice at “Adventure,” their first album in two years, which sees the band entering a new phase as they kick off their 36th rap. 

“I think the new member has breathed new life into the band” says Naoko of Risa, the group’s latest addition. “She has her own style, and she, Atsuko and I coalesce into a new sound. The recordings were exciting.”

Risa, 20, joined the band as a drummer and vocalist in July last year. And Atsuko, an original member who had stood in for the pregnant Ritsuko and toured the US as a bassist and vocalist in April, made an official return after her departure about ten years ago.

“As I’m living in America, a long way away from the other members, I didn’t expect to be back in the band. It was a happy surprise,” says the now LA-based Atsuko joining the interview over the internet.

“Thanks to the internet, it’s never been easier for people who live far apart to make music together. Besides, Risa initially played in a band with her dad and younger sister in Oita, but when I asked her to commute to Osaka to play with us, she decided to move here (to Osaka) instead,” says Naoko.

Having learnt drumming by copying Shonen Knife’s songs, Risa explains their charm: “It’s straightforward and fun. Every listen makes me happy. It’s cool to see just women playing joyously. The band maintains consistency too. They never make use of their sex appeal on a whim…,”

“No way,” laughs Atsuko nervously.

“…or sell themselves as a girl idol group. I love them always being rock. I just couldn’t help being thrilled when I was invited into the band,” continues Risa.

 

We are on our best form as we now all sing

In this combination, the album follows a series of focused rehearsals of the new songs, which Naoko wrote with closer attention than ever to the rhyme scheme of the lyrics. On their previous album, “Overdrive”, the band took a more rocky approach, including 70s hard rock, in opposition to being classified as a pop punk band. Their latest, on the other hand, furthers what Naoko calls “our musical evolution”, encompassing various elements of British beat, folk rock, psychedelic rock and so forth. True to type, however, the result is not an aggressive mood but rather a laid-back pop vibe. Of course, they don’t forget to demonstrate their facility for pushing back the frontiers. 

 “Atsuko kind of accents on the ‘offbeat’ like you hear in black music,” says Naoko. “Few Japanese have her rhythmic sense and she plays a groovy bass throughout the album. “Wasabi” is a case in point as she also sings while playing the bass, underlining her talent. In contrast, Risa’s voice is kind of pure and clean and turns “Green Tangerine (Kabosu)” into a charming and fun song.”

Inspired by the two lead vocalists in Kiss, Naoko and Atsuko combine vocal forces on “Tasmanian Devil,” where hard rock meets The Shangri-Las, an American girl group of the 60s.

“I like music like this,” Naoko explains about her broad musical taste. “I love Frankie Valli & The Four Seasons and I’ve lost count of how many times I’ve watched Jersey Boys. And death metal is great too. I also listen to Japanese hip-hop like Shingo Nishinari (a well-known rapper from Nishinari ward, a rough area in Osaka) and classical music. So god knows where we go next. It could be rap or punk pop again (laugh).”

Now that she mentions it, the bouncy vocal of “Cotton Candy Clouds” seems to take its cue from rap. Naoko, however, reveals the trio’s biggest inspiration: The Beatles. “The ideal is a band whose members can all be vocalists, sing in harmony and play instruments. I think we are in our best form as we now all sing.”

The group have a busy live schedule ahead of them going on tour around the UK and Ireland in April as well as Japan from June to July. At the shows where they aren’t joined by Atsuko, she is replaced with now-mother Ritsuko or Naru, a former support bassist who was promoted to an official member. It could be the characteristic feature of Shonen Knife, whose motto is a band with women going rock ‘n’ roll, seeing that the members have returned after going through marriage, child-birth and family life. As such, the group, who has been hugely influential on many all-female bands, are likely to continue a role model.

“Everyone will be on the same wavelength if you form a band with just women,” concludes Naoko. “You only need one dressing room or hotel room and there you go! We are united in wanting to make the band more entertaining and exciting.”