ハイフェッツの精神を次世代の演奏家につなぐ
ピエール・アモイヤルがヴァイオリンと出会ったのは7歳のときだった。ヤッシャ・ハイフェッツの演奏するチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のレコードを聴き、それまで習っていたピアノからヴァイオリンに転向し、一日中この楽器からいかにいい音が出せるかを研究し、練習に没頭するようになった。
「私にはフランスとロシアの血が流れています。ロシアの子どもの多くがそうであるように、最初はピアノを習いました。でも、ハイフェッツの演奏は子ども心に大きな衝撃をもたらし、ヴァイオリニストになりたいと思わせたのです。以来、ヴァイオリンひと筋。17歳のときにはあこがれのハイフェッツに師事するためにロサンゼルスに向かいました」
それから23歳まで、ずっとハイフェッツの元で学び、録音でも共演している。アモイヤルの音楽は一本芯の通った凛とした美しい響きを備え、そのヴァイオリンは気高く清涼で豊かな歌を奏でる。それらはすべてハイフェッツから学んだものである。
「ハイフェッツは音楽の作り方、楽譜の読み方、作曲家への敬意の表し方、聴衆への感謝の念をもつことなど、音楽家としてのあらゆる面を私に教えてくれました。それをいま、今度は私が次世代の演奏家たちに伝えていかなくてはならないと思っています」
2002年、若く優秀な弟子をはじめとする国際色豊かな12人の弦楽器奏者とカメラータ・ド・ローザンヌを創設。いまでは2012年のエリザベート・コンクールの覇者アンドレイ・バラーノフや尾池亜美、清水祐子ら実力派が勢ぞろい。新鮮なアイデアを取り入れる室内アンサンブルとして高い評価を受けている。
「結成してから10年以上が経過し、初録音にこぎつけました。私のレパートリーの根幹であるチャイコフスキーの《弦楽セレナード》や《フィレンツェの想い出》は編成の大きなオーケストラで演奏されることが多いのですが、私たち13人でも情熱を傾けて演奏すれば、けっして引けを取らないと思います」
アモイヤルは演奏家であるとともに教育に情熱を傾ける指導者でもある。パリ国立高等音楽院教授、ローザンヌ音楽院教授を務め、現在はモーツァルテウム大学で後進の指導にあたっている。
「ザルツブルクのモーツァルテウムで教えるようになってから、モーツァルトへの尊敬の念と愛情、さらに作品の解釈がより深まった感じがします。その思いを今回のモーツァルトの《協奏交響曲》と《コンチェルトーネ》に託したつもりです。いまの楽器はストラディヴァリウス“コハンスキ(1717年製)。”若いメンバーとのアンサンブルで音の融合を目指しました」
LIVE INFORMATION
カメラータ・ド・ローザンヌ2016年来日ツアー・スケジュール
○7/3(日)東京エレクトロンホール宮城(仙台)
○7/6(水)サントリーホール〈ガラ・コンサート〉(東京)
○7/7(木)東京文化会館小ホール(東京)
○7/8(金)藤沢市民会館大ホール(神奈川)
○7/10(日)宗次ホール(愛知)
○7/11(月)浜離宮朝日ホール(東京)
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