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プリンスが愛した新たな歌姫、キャンディス・スプリングスに大注目! ノラ・ジョーンズの伝統継ぐデビュー作の背景に迫る

photo by 濱谷幸江

 

注目すべき大型新人であり、ノラ・ジョーンズの系譜を継ぐブルー・ノートの歌姫、キャンディス・スプリングスが7月1日にファースト・アルバム『Soul Eyes』で日本デビュー。アルバムのティーザー映像が公開中だ。

キャンディス・スプリングスはUSナッシュヴィル出身、現在27歳のシンガー・ソングライター/ピアニスト。セッション・シンガーの父親を持ち、ノラ・ジョーンズの代表作『Come Away With Me』(2002年)で音楽の道を志したという。その後は活動拠点をNYに移し、オーディションを経て2014年にブルー・ノートと契約。同年9月に発表した初のEP『Kandace Springs』はiTunesチャートを中心に多くの反響を集め、新世代の台頭を印象付けることとなった。

そんな彼女を語るうえで欠かせないのが、在りし日のプリンスとのエピソードだ。キャンディスがYouTubeにアップしていたサム・スミス“Stay With Me”のカヴァーを耳にした殿下は、〈雪さえも溶かすほどの温かい声〉(A voice that could melt snow)とそのヴォーカルを大絶賛。その後は『Purple Rain』30周年記念コンサートに招待したり、音楽活動についてアドバイスを送るなど、亡くなる直前まで交流は続いたという。

ちなみに、去る5月25日には『Soul Eyes』のリリースに先駆けて、キャンディスのコンヴェンション・ライヴが東京・cafe104.5で開催された際、彼女は「Twitter経由でメッセージが届いて。最初は嘘だと思ったわ。でも、それから3日後には(共演の誘いがあり)ペイズリー・パークで歌っていたの」と、プリンスとの記憶を語っていた。エスペランサ・スポルディングジャネル・モネイ、あるいはダイアン・バーチなど、21世紀以降にプリンスが愛した女性アーティストの顔ぶれを見れば、そこにキャンディスが並ぶことに違和感はない。その錚々たる面々と同様に、華やかなルックスと芯の通った歌声は眩いスター性を放っている。

リアーナミゲルなどを手掛けるポップ&オークがプロデュースした2014年のEP『Kandace Springs』では、時流に乗ったR&B/ネオ・ソウル路線の楽曲を収録しており、その後もゴーストフェイス・キラーの“Love Don't Live Here No More”に客演し、チャンス・ザ・ラッパーの前座を務めるなどヒップホップ畑での活躍も目立っていた彼女。しかし、自身のアルバムのレコーディングに入るとそんな方向性に納得できなくなり、幼少時に影響を受けたジャズや地元ナッシュヴィルのカントリーなど、オーガニックなサウンドへと回帰するように。そうして完成した『Soul Eyes』では、ビリー・ホリデイエラ・フィッツジェラルドニーナ・シモンロバータ・フラックといった敬愛する女性ミュージシャンと同様に、ピアノの弾き語りを軸としたオーセンティックな作風を披露している。

KANDACE SPRINGS Soul Eyes Blue Note/ユニバーサル(2016)

洗練されたサウンドに乗せて、しなやかでソウルフルな歌声が優しく寄り添う。ある種の王道をゆくスケール感は、〈これを待っていた!〉と歓喜するリスナーも多いだろう。本作のプロデューサーは、ジョニ・ミッチェルマデリン・ペルーメロディ・ガルドーなどの女傑を支えてきた名匠ラリー・クライン。さらに、ノラ・ジョーンズ“Don't Know Why”の共作者としてもお馴染みのジェシー・ハリスが楽曲を提供しているほか、テレンス・ブランチャード(トランペット)、ディーン・パークス(ギター)、ヴィニー・カリウタ(ドラムス)など豪華なレコーディング・メンバーが集結した。

ジョン・コルトレーンの演奏が有名なマル・ウォルドロンの“Soul Eyes”や、ウォーの〈世界はゲットーだ!〉といった楽曲のカヴァーと、ルーツに根差した自作曲を織り交ぜたアルバム構成には、音楽への深い愛情が窺える。〈時には4月に雪が降ることもある〉とプリンスは歌っているが、雪をも溶かすキャンディスの歌声も同じように、ありふれた日常を彩る奇跡なのかもしれない。Mikikiでは、彼女のインタヴューを来週に公開予定。そちらもお楽しみに!

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