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皆さんこんにちは。ギターのKazukiです。梅雨の時期は、じめじめと雨が鬱陶しいですね。そのせいもあってか、外出する事も少なくなり、物思いに耽る時間が長くなりました。
なので今回は去年9月に行ったZEPPワンマン・ツアーについて。少し昔のお話をしていきたいと思います。

2015年9月に大阪、名古屋、東京で行った〈CROSSFAITH ZEPP ONEMAN TOUR〉。
バンドのキャリアの中で、これだけの規模のワンマン・ツアーは初めてでした。それだけでも十分に特別なものではありましたが、俺にとってはまた違った意味で特別なものなのです。
さて、このツアーが俺にとって、どのように特別なものなのか。時を遡ってお話ししていきたいと思いますので、お付き合いください。

ご存知の方も多いとは思いますが、俺は去年1月に脳出血を患い、病気による障害でギターを弾くことが困難になりました。それに伴ってライブ活動を止む無く休止し、療養していました。

【長期療養のお知らせ】
http://www.crossfaith.jp/jp/news/80/469/

病気が判明した時は本当にショックでした。
医師に「ギタリスト以外の生き方も考える必要がある」と告げられた時、頭の中が真っ白になるとは正にこの事かと、ただ呆然としたのを今でも鮮明に覚えています。
理解しきれない程の、あまりに大きすぎる恐怖と不安に、心が根こそぎ潰されました。
それから数日考えに考え、頭を抱えては打ちひしがれる、といった日々が続きました。
そんな抜け殻の様な日々の中でも、ようやく一つの答えが出せました。
それは「Crossfaithの活動は止めたくない」という事でした。つまり、サポート・ギタリストを入れての活動を望んだのです。
早速メンバーにその旨を伝えると、皆は深刻な表情を浮かべました。
その反応は当然な事だと思います。バンド結成から、これ程の問題に直面したのは初めてだったので、各々の中で複雑な感情が渦巻いたのでしょう。
それでも皆は「わかった!」と力強く答えてくれました。
そして何より、俺の身体を一番に気遣ってくれて、励ましてくれました。「帰ってくるって信じてんぞ!」、何も疑わずストレートに放たれたこの言葉にどれだけ救われた事か。

それからサポート・ギタリストを迎えて、新体制でのライブ活動が始まりました。
前回Hirokiが書いていたように、国内のライブから海外のライブと、Crossfaithらしい活動をしてくれました。

※Hirokiによる本連載第5回はこちら

皆が世界中を飛び回っている間、俺は自宅で最新アルバム『XENO』の楽曲制作やリハビリなどに尽力していました。
そして4月にメンバーと合流して、LAでアルバム・レコーディングを始めました。

いま振り返ると、この時の状態も正常とはとても言えない程、酷い状態でした。気持ちの浮き沈みも激しく、全ての事がどうでもいいと思ってしまう事もありました。
メンバーも連日のツアーで疲弊しており、バンド全体の空気も重たかった。当然、作業もなかなか進まず苦戦しました。
それでも皆、力を振り絞り、全ての行程を終えたのが7月でした。
やっとの思いで『XENO』が完成した時、涙を流して喜んだ。
こんな状況下でも、バンド自身が過去最高傑作だと思える作品に仕上がったから。この事実は間違いなく自信となり、Crossfaithが持つ力を改めて実感しました。
そしてこれをきっかけに、俺の中で強く湧き上がった感情がありました。それは、

Crossfaith XENO LUSTFORLIVES/ARIOLA JAPAN(2015)

「この音楽と共に、また皆と一緒の景色が見たい。」というものでした。
自分ひとりが皆と離れて療養してる間に感じていた、絶対的な物足りなさ。俺は何がしたくて、何を求めているのか。それが明確になった瞬間でした。
そして皆に「9月のワンマン・ツアーは俺もステージに立ちたい」と切り出しました。
俺は後遺症による障害で完全な状態ではありません。何とかギターを弾けるようにはなったものの、まだ演奏出来ない曲もある。メンバーはその事を知っていましたが、皆にんまりとした表情を浮かべました。
そして、「おう! やろうぜ!」と、待ってましたと言わんばかりに快諾してくれました。
くさい言葉かもしれませんが、自分がこのバンドでやる理由、強い絆を感じずにはいられませんでした。

Crossfaithの2015年作『XENO』収録曲“Wildfire”
 
Crossfaithの2015年作『XENO』収録曲“Devil's Party”
 

それからワンマン・ツアーはどういった内容にするのか、作戦会議を何度も重ねました。出来上がってきた内容に胸が高鳴り、何より久しぶりに皆とステージに立てるという事が、嬉しくてたまらなかった。

そして‪9月20日、待ちに待ったライブ当日。
初日の会場は我らがホーム、大阪。
まず会場に入り、ステージに組まれた壮大なセットを目の当たりにして「おぉぉ!」っと声が漏れた。そんな興奮の中、リハーサルを入念に行い、久しぶりに味わう現場の空気に思わずニヤリと笑顔も漏れる。

リハーサルを終えると、楽屋ではメンバーやクルーと好きな音楽を流しながら、雑談などを交わす。いつも通り賑やかだ。寧ろCrossfaithの楽屋は、他のバンドと比べると、うるさいぐらいだと思う。でもそれに慣れると、居心地が良いもんだ。やっぱこれやなと、ホッとする安堵感すらあった。
時を刻み、万全の態勢で開場。観客が入場してくる。ZEPP NAMBAがザワつきはじめ、熱気を帯びだす。刻々と本番の時間が迫る。
ライブ衣装に袖を通し準備を始める。久しぶりのライブを目前にしながら、何故か不思議なほど穏やかで落ち着いていた。と言うより、この時点ではライブが出来る、という実感があまりなかったのかもしれない。
そしてライブ開始直前。「ついにこの時が来た!」と、各々の意志を確認するかの様に、メンバー全員で円陣を組む。そして互いを高め合うように声を張り上げ、暗転した会場にオープニングSE “System X”が鳴り始めた。

このライブは前半と後半に分けた二部構成の演出をしました。
簡単に説明すると、前半は俺がまだ演奏する事が出来ない曲を多く集め、サポート・ギタリストが演奏。後半からは俺と入れ替わり、俺が演奏するといった演出です。
なので前半は、メンバーがステージ上で暴れ回る姿を舞台袖から見ながら、俺の出番はまだかまだかと猛る気持ちで一杯でした。

気付けばリズムに合わせて身体が自然と動き出し、落ち着きがなくなっていた。この時、やっとステージに立てるという事を実感できたのだろう。つい5分前まで落ち着いていたのが、まるで嘘の様だった。
ライブも中盤に差し掛かり、身体も気持ちも熱くなってきた頃、いよいよその時が来た。
でかでかとステージ上に掲げられたモニターに、俺の登場演出が映し出される。

ひとつ大きく深呼吸し、まず一歩、そしてまた一歩とステージへ向かう。
そして所定の位置に辿り着くと、眩い程のスポットライトが、惜しげも無く俺を照り付けた。

その瞬間、呆気にとられた表情の観客たち。間髪を容れず、悲鳴にも似た歓声が鳴り響いた。そう、これはサプライズ演出にしたかったので、このライブで俺が復活するという、公式アナウンスは一切していなかったのです。思惑通り皆驚いた様子でした。
本来なら、してやったりとほくそ笑むところだが、その凄まじい歓声が俺の身体を快感として突き抜け、求め続けた刺激に夢心地で、逆に呆気に取られてしまう程だった。

すぐさま、Tatsuyaの4カウントで我に返り、最初に放った曲は"Monolith"。
はじめの一音を掻き鳴らした瞬間から、内に秘めていた全てのものが爆発した。
苦しみや悲しみ、といったものが大きかった分、喜びや楽しさが、今までのものとは桁違いだった。いつもの立ち慣れた場所から見える光景も、全く違った様にキラキラ輝いて見えた。

Crossfaith“Monolith”。こちらは2014年のUK〈Download Festival〉でのライヴ映像
 

沢山の人が「おかえり!」と言葉を贈ってくれました。ひとつひとつを噛み締めながら、ようやく帰って来たんだと、それに応えるように夢中になってギターを弾いていました。

会場の熱はピークに達し、最高潮の状態だった。ただ、楽しい時間はあっと言う間に過ぎるもので、残すところ最後の一曲。最後はサポート・ギタリストのTamaを迎えて、現在のCrossfaithと同じ6人体制で“Leviathan”を演奏しました。

最後の一音まで全身全霊でやり切り、それに応えてくれた皆の笑顔に、また胸が熱くなった。
心がぐしゃぐしゃに潰され、苦しさから、全てから逃げ出したくなった事もありました。それでも求め続けたその場所は、やはり最高と言う他に言葉が見つかりません。
只々幸せでした。
そんな最高な場所を、いつも一緒に作ってくれている皆、本当にありがとう!

そうして興奮冷めやらぬまま、熱い大阪の夜は幕を閉じました。

このワンマン・ツアーの裏にはこういったストーリーがあったのです。だからこそ俺にとっては特別なのです。
「当たり前の事などない」
沢山の先人が言ってきたこの言葉の意味を、身をもって知りました。
そして諦めなければ光が差すことも学びました。寧ろこれらは人生の教訓です。
今回は長々と私事の話でしたが、お付き合いくださりありがとうございました。
今後も良い意味で、皆の期待を裏切っていきたいと思うので、Crossfaithの活動を楽しみにしていてください!

Life is Sweedish!

Kazuki

 

PROFILE:Crossfaith


Kenta Koie(ヴォーカル)、Terufumi Tamano(プログラム/ヴィジョン)、Kazuki Takemura(ギター)、Hiroki Ikegawa(ベース)、Tatsuya Amano(ドラムス)から成る5人組。2006年に結成。2009年に初アルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』を発表。翌2010年には初作がヨーロッパでリリースされ、海外デビューを果たす。2011年にヨーロッパに続きUSでも発表することになる2作目『The Dream, The Space』を完成。アジア圏をはじめヨーロッパやUSなどでのツアーやフェス出演も精力的に行うようになる。そして2012年にミニ作『ZION EP』を、2013年には世界デビュー盤となる3作目『APOCALYZE』をリリース。2014年には世界を股に掛けた活動の充実ぶりに拍車がかかり、メジャー・デビュー・シングル“MADNESS”を発表。2015年に入ると日本国内での初ワンマン・ツアーを開催したほか、メジャー初作『XENO』をリリース。さらに初の映像作品となるライヴDVD「LIVE IN UNITED KINGDOM AT LONDON KOKO」、ドキュメンタリーDVD「ACROSS THE FUTURE ~The Beginning~ すべての始まり」を相次いで発表した。そして、2016年5月のSiMとのコラボ・シングル“GET iT OUT”に続き、7月27日にニュー・シングル『New Age Warriors』(ARIOLA JAPAN)をリリース。7月、8月は海外を含む数々のフェス出演をこなしつつ、9月からは新シングルを引っ提げて、日本国内ではバンド史上最長・最多の全国ツアー〈New Age Warriors Tour 2016〉をスタートする。

★ライヴの予定ほか詳しくはこちら

Crossfaith New Age Warriors ARIOLA JAPAN(2016)

ニュー・シングル『New Age Warriors』の初回特典DVDのトレイラー映像