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前回のTatsuyaの記事を読んでもらった方、もしくは勘の良い方はもうお気付きでしょう…。そうです、ここからツアー編が始まります! ついでに書いている人も変わってます! カリフォルニアでの2ヶ月に渡るレコーディングを終えたCrossfaith一行に待ち受ける試練、困難、パーティー諸々を僕、Hirokiが完全主観かつ独断と偏見たっぷりにレポートしていきます!
さて、アメリカにてアルバム『XENO』を完成させた我々が帰りますはホームタウン大阪。久しぶりに再会するONE OK ROCKに迎えられての大阪城ホールでのライブでした。
そのまた昔、Rage Against The Machineを観た憧れのこの舞台に少し緊張しつつも、会場入りすればいつもの面々を見て安心しました。ONE OK ROCKのタカ君、りょーちゃん、トール君、ともげ。両バンドのメンバーそれぞれが楽屋を行き来しつつ、会えなかった間にお互いが海外で、日本でどんなものを見て感じたのか、そして成したことを報告し合う。彼らは間違いなくそういう関係でいられる数少ない友達で、ライバルとも言える存在なのだと思います。かと思えば「何してん?」とトール君がヤンキーの兄ちゃんのように絡んできてくれるのが嬉しい(笑)。
帰国2日後で時差ぼけのなか再会を祝ったのも束の間、待つのは1万人を超える大観衆。一緒にアメリカから帰って来たKazukiもワンオクのみんなもステージ袖に来てくれて、後は瞬きの度にそのとてつもない光景にシャッターが切られるような、そんな瞬間の連続でした。緊張はもちろんしたけれど、この日ここで観た景色とそれに呼応するようにして出会えた自分はまだまだ、もっともっと遠くを見ていたし、何よりもこの舞台を用意してくれたワンオクロックのみんなに感謝し、また歩む道でその気持ちを贈りたいと思う。
そして、彼らとの2日間での大阪城ホール公演を経て、またもや僕たちはアメリカに戻ります。自由の国、アメ~リカにです。
かつての僕にとってアメリカは、特に西海岸に位置するカリフォルニアは憧れの場所でした。サーフボードを脇に抱えて友達の家までスケートボードでひとっ走り、ガレージでお構いなしに楽器を掻き鳴らして、キャデラックを洗うお姉さんに目を丸くしては夕陽落ちる海へサーフィンに向かう。思春期真っ只中、14歳の僕は何度も何度もそんなイメトレを重ねました。もちろん西海岸パンクという音楽に触れたという事もあるけれど、西海岸のファッション、スケートカルチャーやサウスパークに始まる悪ガキ達、色んな西海岸の要素が一つの波になって、あっさりと僕をそちら側へ引きずり込んで行くのでした。
そして、その当時の西海岸パンク・シーンの、スケボーしてて馬鹿そうなやつのど真ん中にいたバンド、それがBlink-182です。まるでアニメから飛び出してきたような悪ガキ3人組。そんな彼らのある曲に〈Warped Tour〉が舞台の物語がありました。
Hanging out behind the club on the weekend
acting stupid, getting drunk with my best friends.
I couldn't wait for the summer and the Warped Tour
I remember it's the first time that i saw her there
その週末はクラブの裏手でたむろして
親友たちと一緒に酔っ払ってバカやってた
夏と、そしてワープト・ツアーが待ち切れなかった
思いだすよ 最初に彼女に出会ったのはそこでだった
其処はまさにアメリカのキッズにとって、はたまた遠く離れた日本で育った僕にとっても〈聖地〉と言える場所なのでした。
日本の皆様からすれば、そもそも〈Warped Tour〉って何ですのん?という方もいるでしょうから、ざっくりと説明します。
〈Warped Tour(ワープト・ツアー)〉とはアメリカ西海岸を発祥とする音楽とスケート・カルチャーのお祭りです。過去に参加したアーティストはNOFX、Rancid、Blink-182等のパンクに始まり、Beck、Weezer、Eminem、Jurassic5らIndieからHip-Hopまで――近年はメタルやラウドなバンドも増えてきており、各時代の流れを反映した様々なバンドがその歴史に名を連ねています。
Crossfaithとして今までに色んな土地で、色んなフェスティバルに参加してきましたが圧倒的に他のフェスと違うのがその行程。西はカリフォルニア、東はニューヨーク、北はカナダ・トロント――40を超える場所へ、100近いバンドとそのクルー、さらに毎日立つステージまでも、サーカスのように一緒に移動するわけです。そして、シャワーもご飯も基本的に共有で、有名なバンドから若手まで一緒になって並びます。それぞれ1時間ぐらい。
正直、最初は長っ!とボヤいてましたが、並んでいると「お前達のライブ観たけどマジ半端ないぜ、ブロォ(ブラザー)」で拳をボン。こちらもすかさず「お前のライブも見に行くぜ、とりあえず今夜のBBQで飲もうぜ、ブロォ」で拳をボン。もうそれが7週間続く訳で、おのずとたくさん友達は出来るし、逆に昨日呑んでて知り合ったブロォが次の日にライブ中袖でウイスキーを片手に見てたりする訳です。
こうして、これだけの時間をこれだけの人間と共にするので、終演後にほぼ毎晩行われるBBQパーティー以外にも、スケートボード、カード・ゲーム、ロール・プレイ(演技)、筋トレ、プロレス、野外シアターなど部活の様にグループが出来上がり、活動頻度は違えど終演後のだだっ広い会場で各々が楽しむ様になるのです。
ちなみに僕はというと、基本的なパーティーとしてはうちのこいちゃん(Ken)とBeartoothのCalebというクマさん2人。彼らと共にフラフラと一箇所にとどまることなく色んなクラブやツアーバスに顔を出し、色んなタイプの人と知り合う事が出来ました。そこで人の振る舞いやキャラクターを肌で感じ、同じ事柄を伝える時にも違う言葉選びがあり、異なる表情がある事を学びます。より表情豊かに伝えるアメリカでは、何度も訪れたイギリスでは感じられなかった表現が――例えば西海岸では、陽気な表現や昔憧れていた悪ガキの様なパーソナリティーがあり、ツアーの中で僕はたくさんの人と話をし、たくさんの人を見ました。自分というパーソナリティーをその世界の中で他者と触れ合う中で再確認し、取捨選択し、そしてそれらを取り入れてゆく。それは英語の世界に放り出された骨格だけの自分に肉付けしていく様なものでした。ツアーを経る事、英語を学ぶ事、というのはそういう事なのだと僕は学びます。
今回のツアーで多くの時間を共にしたCalebと初めて会ったのは、レコーディングが終わって渡英した際の〈SlamDunk Festival〉初日、While She Sleepsを観ている時でした。ステージ脇に彼がいるのを見つけ、彼のことは前身バンド(Attack Attack!)の頃から知っていたので話かけたらすぐに意気投合。一緒にJager(イエーガー)を煽りはじめて気付けば2日目、3日目と隙あらば呑まし合いました。またWarpedで遊ぼうなーてな具合でそのイギリスツアーは幕を閉じました。そして、アルバムのミックスチェックのためにアメリカへ帰る空港でゲストボーカルの相談をしている時に、Calebに打診してみないかという話になりました。僕らが彼にオファーした時、Warpedの出発まであと2日やそこらだったのですが、二つ返事でOKしてくれて、今回のアルバムに置いて最もザクザクヘビーなこの曲の最後のピースを埋めることになります。
この夏、何度もCalebは俺たちのステージに立って“Ghost In The Mirror” を歌い、KenはBeartoothで“Body Bag”を歌い、Teruと俺も囃し立てにしばしば向かうことも……(笑)。先日、川崎Club Cittaで行われた〈Red Bull Live On The Road〉@川崎Club Cittaに来ていた方は、日本で初めてステージに立つCalebの姿を見られたのではないでしょうか?
そして、〈Warped Tour〉も終盤に差し掛かった所で大きなイベントが僕たちを待っていました。アメリカ・ロック界において権威のある音楽誌、ALTERNATIVE PRESSが開催する〈Alternative Press Music Awards〉へ2度目のノミネートをされ、またプレゼンターとしても壇上でスピーチをすることが決まります。このアワードにノミネートされること自体にも大きな意味がありますが、SlipknotのCorey氏や、WeezerのRivers氏が参加し、Sum41、Taking Back Sundayらのライブもあり、皆がスーツに身を包んでドレスアップした姿でレッド・カーペットを歩き、憧れのMTVなどのインタビューに答えたり、美味しいお酒を酌み交わすなど、楽しくも過酷なひと夏を共に過ごしたWarped参加組にとってはねぎらいの場所でもありました。
この日のスピーチは雑誌側から用意されたテンプレートもあり、バンドはそれを読んでサラッと次のアワードに行く流れでしたが、それでは俺たちがやる意味がないと、Kenと前日から日本語を交えて会場にいる人に楽しんでもらえる内容を考えました。もちろん英語で成立させる事に変わりはないので、人生初の英語でのスピーチに緊張し、何度もリハーサルをしました。結果、本番は飛び入りでBeartoothのCalebを迎え、言葉は一緒でも全然リハーサルと違うテンションで読み上げることになりましたが、会場にいたバンドや関係者から大きな声援をもらい、アワードの受賞は逃したものの、このスピーチをきっかけにその後のツアーでまだ出会えていなかったたくさんの人が話し掛けてくれて、知り合う事が出来ました。こうして、長かった〈Warped Tour 2015〉の最後のビッグパーティーは幕を閉じたのでした……。
帰国後、9月には前回のコラムでも触れた『XENO』が発売され、まだまだツアーは続きますが、今回はここまで。来年の頭からこのアルバムをライブセットにギュッと詰め込み、さらに進化したCrossfaithのショーを届けに、世界各国のべ80都市前後を回ります。そして、そのツアーを世界で初めて体験できるのはここ日本。またそれまでの個々の歩みを経て、皆の中の何かを動かすものを届けたいと思います。
それでは、またライヴで会いましょう!
See you in the pit :)
Hiro
PROFILE:Crossfaith
Kenta Koie(ヴォーカル)、Terufumi Tamano(プログラム/ヴィジョン)、Kazuki Takemura(ギター)、Hiroki Ikegawa(ベース)、Tatsuya Amano(ドラムス)から成る5人組。2006年に結成。2009年にファースト・アルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』を発表。翌2010年には初作がヨーロッパでリリースされ、海外デビューを果たす。2011年にヨーロッパに続きUSでも発表することになる2作目『The Dream, The Space』を完成。アジア圏をはじめヨーロッパやUSなどでのツアーやフェス出演も精力的に行うようになる。そして2012年にミニ・アルバム『ZION EP』を、2013年には世界デビュー盤となるフル・アルバム『APOCALYZE』をリリース。初の日本ツアーを含めた30か国以上を回るワールド・ツアーを敢行する。2014年には世界を股に掛けた活動の充実ぶりに拍車がかかり、メジャー・デビュー・シングル“MADNESS”を発表。2015年に入ると日本国内での初ワンマン・ツアーを開催したほか、メジャー・ファースト・アルバム『XENO』をリリース。そして先日、初のドキュメンタリーDVD「ACROSS THE FUTURE ~The Beginning~ すべての始まり」(LUSTFORLIVES)を発表した。
2016年1月からは日本を皮切りとしたワールド・ツアーがスタート。さらに2016年2月14日(日)には東京・新木場STUDIO COASTにて自主企画〈ACROSS THE FUTURE〉を開催する。そのほか最新情報はこちらへ。