2014年はデ・ラ・ソウルにピート・ロック&CLスムース、ファーサイドという90年代からヒップホップ・シーンの歴史を刻んできた面々が登場、昨年はザップにタキシード、帝王ジェイムズ・ブラウンを支えてきたミュージシャンによるオリジナル・ジェイムズ・ブラウン・バンドといった新旧ファンクの顔役が揃い――過去2回に渡ってBillboard JAPANがプロデュース&〈SUMMER SONIC〉とのコラボレーションで行われた〈Billboard JAPAN Party〉が今年も開催! 8月21日(日)に〈サマソニ〉東京会場の〈BEACH STAGE〉でのライヴに加え、〈SUMMER SONC EXTRA〉として東京&大阪のBillboard-LIVEにて単独公演が行われる。

夏の風物詩として確立しつつある同パーティーに今回出演するのは、ミュージック・ソウルチャイルド、SWV、ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションの3組! ミュージック・ソウルチャイルドとSWVは今年リリースされた最新作を引っ提げての待望の来日、そしてラリー・グラハムはなんと齢70(開催時)にして現役バリバリな熟練のステージで魅せてくれるはずだ。ここでは、そんな3組それぞれの音楽の魅力やライヴの観どころを、bounce連載〈IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影〉などでもお馴染みの音楽ライター、林剛氏に解説してもらった。

 

SWV

シェリル“ココ”ギャンブル、タマラ“タージ”ジョンソン、リアン“リリー”ライアンズから成る、90年代のR&Bシーンを代表するガールズ・グループ。92年に『It's About Time』でデビューし、300万枚を超えるセールスを記録。“Weak”(92年)や“Right Here (Human Nature Remix)”(93年)、“You're The One”(96年)といったヒットを飛ばしつつ、計3枚のアルバムを残して98年に解散。その後、個々で活動をしていたが2005年に再結成。ライヴを精力的にこなし、来日公演もたびたび行われた。2012年にはマス・アピールと契約して復活後初のアルバム『I Missed Us』を発表、グラミー賞にもノミネートされる。そして今年2月に通算5作目となる最新作『Still』をリリース。

SWV Still Mass Appeal/eOne/ビクター(2016)

 

「SWVはTLCとかと並んで90年代に登場したガールズ・グループで、 R&Bファンの間では非常に人気の高い人たちですが、98年に一度解散をしています。メンバーもそれぞれ別の道を歩みはじめて、もう復活はないかなと思われていたところに、2000年代に再結成というか再会をしました。それからはライヴ活動をしたりしつつ、しばらく新作はリリースされていなくて、2012年に復活後初の『I Missed Us』を発表しています。それが、解散してから、その後の17年間が何もなかったかのようにそのまま(の音)だった。レフト・アイを失ったTLCがもう以前と同じライヴをできなかったり、アン・ヴォーグが分裂してしまったいま、彼女たちの〈変わらなさ〉は凄いし、貴重ですよ。ハーモニーが聴けるっていう意味でも」

92年作『It's About Time』収録曲“Weak”
 
96年作『New Beginning』収録曲“You're The One”
 

――90年代の匂いが閉じ込められているわけですね。

「そうなんです。中心メンバーのココがゴスペル・シーンで活躍し続けてきたことも大きかったと思うんですよね。再結成して『I Missed Us』をリリースする前には来日公演もやっていて、その頃のライヴを観ても、やっぱりSWVはSWVだなと。90年代からあった甘酸っぱくてキュートな感じと、ゴスペル上がりらしいゴリゴリした感じも併せ持っている。それに復活後の楽曲を90年代の曲と交えて歌ってもまったく違和感がない。かといって懐古趣味になっているかと言うと、そうではないんですよね。取り立てて新しいことをやっているわけではないんですけど、2010年代にも聴ける。逆に言えば彼女たちのようなグループを迎え入れる土壌がもう一度形成されたということでもあると思うんですけど」

ココの2009年作『The Winner In Me』収録曲“The Winner In Me”
 
2012年作『I Missed Us』収録曲“Co-Sign”
 

――オーセンティックな個性を活かしつつモダンということですよね。

「そうですね、ほんとに。だから、90年代のSWVを知らない人もすんなりと入りっていけると思いますよ。いまはガールズ・グループって復活の兆しが少しありますけど、R&Bの世界では存在自体が少ないので、彼女たちのハーモニーを新鮮に感じる人もいるかもしれませんね。まあ2010年代も後半になって、SWVを〈ガールズ・グループ〉と呼ぶのもアレですが(笑)、でも本当にあの頃のままのパフォーマンスをしてくれるし、今年リリースされた最新作『Still』もそうですが、懐かしい部分もありつつ、2010年代のメインストリームでもあって、上手くやってると思います」

2016年作『Still』収録曲“Ain't No Man”
 

――SWVのライヴは結構ご覧になってるんですか?

「ライヴは初来日以来、ほぼ毎回観てます。ゴスペルのプロデューサー/ドラマーで、ココの旦那さん=マイケル・クレモンズがバンマスを務めていて、バンドもゴスペル・シーンにいる人たちなので非常に演奏が上手いというか、生で良い音を出すんですよ。また、ココがリード・シンガーではあるんですが、リリーとタージも歌うパートが増えてきて、ライヴでの存在感も増している。ライヴはアルバム同様、イメージとしてはほとんど変わらないですね。そういえば、『Still』の日本盤に収録されたボーナス・トラックにはライヴ音源が入っていて、それも彼女たちが20代の頃に歌っていた感じとほぼ変わりない。それが普通に素晴らしいなと。20年前のイメージをキープしたままライヴ・パフォーマンスをできるシンガーって本当に少ないから。そう思うと驚異的ですね。R&Bの90年組は本当に歌力があったんだなと。あと、ライヴでは自身の楽曲に加えてカヴァーも歌います。アルバムにも入ってますが、パティ・ラベルの“If Only You Knew”やスウィッチの“They’ll Never Be”とかは、Billboardでライヴをやった時も歌ってくれましたね。彼女たちの曲は、それこそマイケル・ジャクソンの“Human Nature”を引用した“Right Here”のリミックスに代表されるようにソウルねたの曲も多くて、最近は歌詞でR&B名曲のフレーズを引用していたり、オマージュっぽいことをやっていたりするので、そこからオリジナルの曲に繋げて歌ったりすることも期待できますね。まあ、聴きどころ、観どころはいくらでもあります」

“Right Here (Human Nature Remix)”

 

MUSIQ SOULCHILD

2000年にデフ・ジャム傘下のデフ・ソウルからアルバム『Aijuswanaseing』でデビューした、フィラデルフィア出身のR&Bシンガー。ジル・スコットらと並ぶ新世代フィリー・ソウルの旗手として注目を集める。USビルボード・チャート1位を獲得した2002年の2作目『Juslisen』以降は名義を〈ミュージック〉に改め、グラミー賞にも数度ノミネート。2007年作『Luvanmusiq』以降はミュージック・ソウルチャイルドへ名前を戻してコンスタントに作品を発表し、シリーナ・ジョンソンとのコラボ・アルバム『9ine』(2013年)や別名義での音源リリースを経て、今年4月に5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Life On Earth』を発表した。

MUSIQ SOULCHILD Life On Earth My Block/eOne/ビクター(2016)

 

「もともとミュージック・ソウルチャイルドは、〈ネオ・フィリー〉と僕らが勝手に呼んでいた、2000年代前半にフィラデルフィアで生まれたムーヴメントの第1世代としてジル・スコットらと同じ頃にデビューして、ディアンジェロ以降のネオ・ソウルみたいな音楽を、フィラデルフィアをベースにしてやっていたんです。日本では〈フィリー・ソウルの申し子〉みたいな言われ方をしていて、実際に初期の頃はいわゆるフィリーらしい、ジャジーなテイストの楽曲をやっていましたが、本人はヒップホップがすごく好きな人で、かつてはフィラデルフィアのサウス・ストリートという現地の若者が集まる通りで、フリースタイルでラップしていた。ヒップホップ世代のソウル・シンガーなんです。だからインタヴューでも、昔のソウルをよく知らないから聴いてみようかな……と語っていたくらい、いわゆるフィリー・ソウルに対する造詣とかも当初はそこまで深くなかった。だからなのか、2作目『Juslisen』(2002年)、3作目『Soulstar』(2003年)では〈ソウルチャイルド〉を外した〈ミュージック〉名義でリリースしていました。〈ソウル・ミュージックの申し子だ〉と言われてるけど、本人は実際ちゃんとソウルを聴いてきてなかったから、〈ソウルチャイルド〉を名乗る資格はないし、荷が重いと思ったみたいな感じだったと思います(笑)」

2000年作『Aijuswanaseing』収録曲“Just Friends (Sunny)”
 
2003年作『Soulstar』収録曲“Forthenight”
 

――なるほど(笑)。そして4作目以降にソウルチャイルドが復活するわけですね。

「初作の『Aijuswanaseing』から3作はデフ・ソウルからリリースしていたんですが、その後アトランティックに移った時にミュージック・ソウルチャイルドという名前を復活させて。その時にプロデュースしたのがウォーリン・キャンベルだったんです(2007年の4作目『Luvanmusiq』)。まだ無名だった頃のBJ・ザ・シカゴ・キッドがBJスレッジ名義で曲を書いていたりもするアルバムですが、そのアルバムくらいまではフィラデルフィア的なサウンドで、70年代ソウルやジャズを好きな人がすんなりと入っていきやすいソウル・ミュージックという感じだったんですが、周囲から〈フィラデルフィア〉とか〈ネオ・ソウル〉というふうに括られることが多くなって、それが直接の原因ではないと思いますが、アトランタに移住してしまうんですよね。それからサウス・ヒップホップの音を採り入れたりするようになって、ちょっと方向転換します」

2007年作『Luvanmusiq』収録曲“B.u.u.d.y.”
 

――今年4月にリリースされた5年ぶりのオリジナル・アルバム『Life On Earth』では、ウォーリン・キャンベルが『On My Radio』以来となるプロデュースを手掛けていますね(ミュージック・ソウルチャイルドとの共同プロデュース)。この作品の評判がまたとても良くて。

「そうですね。2013年にウォーリン・キャンベル主宰のレーベル=マイ・ブロックと契約していたんですが、その頃に別のレーベル(シャナキー)でシリーナ・ジョンソンとレゲエ・アルバム(2013年作『9INE』)を作ったり、その後に覆面ラッパー的なハッスルやオルタナティヴなソウルをやるパープル・ワンダーラヴという名義で作品をリリースしていたり――作品の良し悪しとは別に、ちょっと迷走しているのかなという印象でした。ミュージック・ソウルチャイルドという名前のアーティストは、もうどっかに散ってしまったのかなというくらいに思っていたんです。でも今回、久々にミュージック・ソウルチャイルドとしてウォーリンのレーベルから新作を出したら、これが素晴らしい内容で」

『9ine』収録曲“Feel The Fire”
 

――このアルバムの林さん的な聴きどころは?

「新作の話も含めたミュージックのキャリアについては、Billboard JAPANさんのサイトでオフィシャル記事を書かせてもらったので、そちらもお読みいただけると嬉しいのですが、今回は彼のリスナー/パフォーマーとしての音楽体験がストレートに反映されているんだろうなと思いました。ア・トライブ・コールド・クエストの“Jazz(We've Got)”と思われるトラックを引用した曲があったり、以前から言われているスティーヴィー・ワンダーの影響が濃いものや、エリック・ベネイが歌うAORというかアース・ウィンド&ファイアっぽい曲もある。あと、いまヒップホップでもR&Bでもジャズでも西海岸に勢いがありますよね。ウォーリン・キャンベルもその西海岸の人ということもあるからか、ケンドリック・ラマーやアンダーソン・パックなんかと絡んでいたラプソディをフィーチャーしていたりします。ミュージック本人かウォーリンなのかわかりませんが、そういう動きも少なからず意識しているんじゃないかなと思いましたね」

2016年作『Life On Earth』収録曲“I Do”
 

――より旬の音を意識したような。

「ええ。客演仕事なんかを見ていても思うんですが、例えば、ウォーリン・キャンベルが手掛けているダマーニというラッパーの近作『Thoughtful King』では、ロバート・グラスパーが参加した“Now That's Love”という曲のフックで、ミュージックがデバージの“Love Me In A Special Way”を歌っているんですよね。ほかにもミュージックは、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの『Black Radio』(2012年)や、テラス・マーティンの『3ChordFold』(2013年)へも参加していました。まあそんな感じで、ここ数年わりと話題になっている作品に顔を出しているんですよ。その起用のされ方は、ある意味、同じフィラデルフィア出身のビラルにも似てますよね。ただ、そのわりにミュージックのアルバムはR&Bリスナー以外から絶賛されることが少なくて、そこがちょっと惜しい気もします。正統派すぎるのかな? だから、今回は最新作を携えて来日するわけですから、この機会に彼のストリートな部分と言ったらアレですが、もうちょっと尖った部分にも触れてみてほしいですね。ラップするように歌う、ラップ・シンギングと言われる歌い方は、ディアンジェロの系譜にあるものなんですよ」

ダマーニの2014年作『Thoughtful King』収録曲“Now That's Love”
 

――なるほど。では、今回のライヴの観どころはどのあたりでしょうか?

「バンドがどういった編成で来るのかにもよると思うんですが、最新作がウォーリンと組んでいることもあって、アトランティックでの1作目の感じに戻っている から、その頃のライヴに近いムードになるんじゃないかなと。あくまで予想ですけどね。ミュージックはデビューの頃から、しょっちゅうではないけど、わりと来日していて、特に初期の頃はフィラデルフィアの空気をそのまま運んできたようにメロウな感じで、グルーヴも最高だった。演奏陣も、当時ルーツやジェイムズ・ポイザーの二番手、三番手でやっていたような人たちで、めちゃくちゃスキルが高かったですね。その後には女性メンバーで揃えたバック・バンドで来日したこともありましたよね。ただ、アトランタに移住して以降のライヴは、初期の頃に比べるとテンションが落ちて きた感じも正直あったり……でも、グラスパーなどと絡むようになって以降は初期の感覚が戻ってきてる感じで、今回のアルバムには昔のフィリーといまの西海岸の良い部分が出ている。だから相当期待できると思うんですよね。ジャズやヒップホップの要素も強く出してくる人なので、改めてそういう部分にも注目したいです」

 

LARRY GRAHAM & GRAHAM CENTRAL STATION

60年代後半からスライ&ザ・ファミリー・ストーンのベーシストとして活躍し、スラップ・ベースのオリジネーターとしても知られるラリー・グラハムが、73年に結成。ラリーがベースのみならずヴォーカルも取り、強力なファンク・グルーヴとラリーの歌で人気を博し、7枚のオリジナル・アルバムを残した。80年代に入ってラリーはソロ活動に移行したが、90年代にふたたびバンドを再開。92年には日本での公演を収めたライヴ盤『Live In Japan』を発表している。そして98年にプリンスとラリーの共同プロデュースでアルバム『GCS2000』をNPGよりリリース。それから14年のブランクを空けた2012年に、プリンスとラファエル・サディークをゲストに迎えた最新作『Raise Up』を発表している。

LARRY GRAHAM & GRAHAM CENTRAL STATION Raise Up Razor & Tie(2012)

 

――彼らは昨年の秋以来の来日になりますね。

「そうですね。でも今回は通常とはちょっと違う意味を持った公演になるんじゃないかと思うんですよ。というのは、ラリー・グラハムは亡くなったプリンスのメンター的な存在で、プリンスのレーベル=NPGから98年にグラハム・セントラル・ステーション名義で『GCS2000』をリリースしていたり、あと宗教的な面も含めて、とても縁の深い関係を築いていました。先日、僕はニューオーリンズで開催された〈Essence Festival〉に行ってきまして、そこでは〈プリンス・トリビュート〉というステージがあったんです。ルーク・ジェイムズやケリー・プライス、マーシャ・アンブロージアスなどがプリンスのナンバーを歌っていたなか、ラリー・グラハムも登場しました。で、彼が何を歌ったかというと、“One In A Million You”という自分のヒットだったんです」

ラリー・グラハムの80年作『One In A Million You』収録曲“One In A Million You”
 

――ほー!

「“One In A Million You”は80年にラリーがソロ名義でリリースした、サム・ディーズが手掛けた素晴らしい名曲で。タイトルは〈100万人に一人〉〈最高の人〉、つまり唯一無二の存在という意味に近いと思うんですが、その曲の後にラリーはプリンスの"Purple Rain”を歌った。それは、自分をアピールするためにまず自身の楽曲を歌ったのではなくて、〈特別な存在〉であるプリンスに捧げるためにその曲から"Purple Rain”に繋げたんだと思うんですよ。だからとても意味のある流れだったんです」

――ちょっと鳥肌が立ちますね……。

「そうなんですよ。また、ラリー・グラハムといえばスラップ奏法、チョッパー・ベースの人というイメージがあると思うんですけど、ヴォーカリストとしてもまた非常に魅力的なんです。さっき言った“One In A Million You”はラリーのソロ曲のなかでもっとも有名な曲で、昨年11月のBillboard-LIVEでの来日公演でもやっていましたけど、僕はその歌にすごく感動しちゃって。かつてbounceの連載〈IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影〉でも、ベーシストではないラリー・グラハムの魅力にフォーカスした記事を書かせてもらいましたが、それくらい彼の歌は聴き逃がせない。バリトン・ヴォイスの深~い声。80年代頭~中盤に、LTDのジェフリー・オズボーンやアース・ウィンド&ファイアのモーリス・ホワイトといったファンク・バンドのリード・ヴォーカリストがソロ・アルバムを発表していますが、これはラリー・グラハムに影響を受けたんじゃないかと思うんです。つまり、ディスコ・ブームがひと段落して、さあ、次は何をやろうという時に、当時はルーサー・ヴァンドロスみたいなシンガーがブラック・コンテンポラリーの先頭を走っていて、彼のように正面切ってバラードで勝負することが新しい、という感じになった。もちろん、バンドの人員削減や解散の影響もあったとは思うんですけど、そういうなかでグループの中心人物をソロで売り出すってことが、ラリーのソロ・ヒットと前後してある種のブームのようになっていたんですよね」

モーリス・ホワイトの85年作『Maurice White』収録曲“I Need You”
 

――なるほど!  それにしても、おっしゃる通りラリーはとてもイイ声ですよね。聴き入ってしまうような感じで。

「やや大味ではありますけどね(笑)。僕は歌モノ好きなので、楽器演奏よりも歌のほうを重視してしまうんです。あと、グラハム・セントラル・ステーションのライヴでは、プリンスや、ラリーが参加したスライ&ザ・ファミリー・ストーンの楽曲を演ったりするので、そこにも注目ですね。今回はどういうメンバーで来るのかわからないのですが、この前の来日の際はNPGのバック・ヴォーカルを務めていたシェルビー・Jが帯同していて、この人はディアンジェロの〈ヴードゥー・ツアー〉(2000年)のバック・バンド=ソウルトロニクスのメンバーでもあったんですが、彼女の存在も観どころのひとつ。絵に描いたようなファンク・ディーヴァです。来日する頃にはラリーも70歳になっていますが、全然ヨレてませんよね。現役感がすごい」

ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションの2011年のライヴ映像
 

――本当ですよね! 〈昔すごかった人〉という感じじゃない。

「近年もツアーをしたりしていたものの、ボロボロになっていったスライとは対照的。2012年に14年ぶりのアルバムとして発表した『Raise Up』では、往年のイメージを維持しながら、プリンスやラファエル・サディークなど後輩のゲスト陣と渡り合っていたし。そういうところも素晴らしいと思います。やっぱりグラハム・セントラル・ステーションは人力のライヴ・バンドなので、野外で行われるフェスは汗にまみれる感じも含めて、見応えがあると思いますよ。屋内のライヴとでは内容や雰囲気が少し違うんじゃないですかね。昨年の〈サマソニ〉に出演していたディアンジェロ&ザ・ヴァンガードのライヴに惹かれた人はぜひ、彼らのステージを観てほしいです。あ、あと、これは淡い期待という感じなのですが、さっきお話ししたミュージック・ソウルチャイルドはグラハム・セントラル・ステーションの“The Jam”を引用した“Romancipation”っていう曲があるので、ミュージックが飛び入りで参加して、その曲を演ってくれないかなと。喜ぶのは僕だけかもしれませんが(笑)」

ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションの2012年作『Raise Up』収録曲“Raise Up”
 

――そして最後に……〈Billboard JAPAN Party〉の枠ではないのですが、同じタイミングで〈サマソニ〉出演とBillboard-LIVEでの単独公演を控えるメイヤー・ホーソーンについても紹介できたらと。昨年はタキシードとして〈Billboard JAPAN Party〉に参加していましたが、今回はソロでの来日です。

「アルバム『Man About Town』を先日リリースしましたよね。彼は、今回の〈Billboard JAPAN Party〉の面々とは立ち位置というか出自が全然違います。それこそ曲はフィラデルフィア・ソウルやスウィート・ソウルっぽかったり、ちょっとスティーリー・ダンみたいな曲もあったりして、表面的には同じように聴こえるところがあるかもしれないけど。これまで話してきた3組はブラック・コミュニティーで 支持されてきた黒人アーティスト、一方のメイヤーはその外からソウル/R&Bを見つめて、憧れを自分の音楽にぶつけた、みたいな感じですかね」

MAYER HAWTHORNE Man About Town Vagrant/ビクター(2016)

2016年作『Man About Town』収録曲“Cosmic Love”
 

――オマージュというか、世界観も含めたソウル/ファンクへの憧憬をモダンかつイイ感じにアウトプットしている人、という感じですよね、良い意味で。

「古今のソウルをたくさん聴いているでしょうし。ソウルを軸にしながらもいろんなものに影響を受けているから、それが彼の音楽を聴きやすいものにしていますよね。本人もジャンルに当てはめないでほしいと言っていますし。去年タキシードのライヴも観ましたが、スカイやスレイヴのカヴァーをしていて、そういうファンクが本当に好きなんだなと思った。そこは原点として揺るぎないところなんでしょうね。今回の〈Billboard JAPAN Party〉の出演者で言えば、ラリー・グラハムがやってきたようなことに憧れて音楽を作っている。DJ的なセンスと言ったらいいのかな。というか、彼はもともとヒップホップのDJですからね」 

――さらに、タキシードは昨年日本でもヒットしましたから、それを経てメイヤーのソロに注目している人が増えたんじゃないかと思います。

「そうですよね。日本人にフィットする歌声だと思います。ライトな歌い口で、メロディーもキャッチーだし。前作『Where Does This Door Go』(2013年)収録の“Wine Glass Woman”はファレル(・ウィリアムズ)がプロデュースしていましたが、いまのファレルが持つポップス的な親しみやすさがメイヤーにはある。大雑把かもしれませんが、ブルーノ・マーズやベニー・シングスあたりと並列に並ぶ感じですよね」

タキシードの2015年作『Tuxedo』収録曲“Number One”
 
メイヤー・ホーソーン“Wine Glass Woman”
 

――実際ベニー・シングスはお互いの作品に参加していますし。

「そうでしたね。もちろんソウル的な要素はあるけど、よりポップス寄りというか、軽やかな良さがありますよね。ストーンズ・スロウから出てきた頃と比べると、本当に万人受けするポップスターになったという印象です」

ベニー・シングスの2015年作『Studio』収録曲、メイヤーが参加した“Shoebox Money”
 

――メイヤーはいわゆる〈ムード〉作りが上手い。最新作にはそれがより如実に出ているように思いました。

「そう、いい雰囲気を作ることに長けた人なんですよ。ムードで勝負する人なんですよね。メイヤーも含めて今回お話ししたアーティストは、いまやマチュアなリスナーを対象としながらも、それぞれ現代的なエッジがあったり若さを失っていなかったりするっていう、絶妙なバランスを保っている。だから幅広い世代の人たちが楽しめると思いますよ」

『Man About Town』収録曲“Love Like That”

 

PROFILE:林 剛

70年生まれ。ソウル/R&Bをメインとする音楽ジャーナリスト。音楽雑誌~サイトへの寄稿、CDライナーノーツの執筆、ラジオ番組の選曲などを行う。音楽書籍の執筆/監修も多数。近著は「新R&B入門~ディアンジェロでつながるソウル・ディスク・ガイド 1995-2015」と「新R&B教室~マイケル・ジャクソンでつながるソウル/ブギー・ディスク・ガイド 1995-2016」(共ににSPACE SHOWER BOOKS)。12年間通い続けている〈Essence Festival〉をはじめ、国内外でライヴを観ることをライフワークとしている。

 


Billbord JAPAN PARTY

8月21日(日)SUMMER SONIC 2016〈BEACH STAGE〉16:00~
http://www.summersonic.com/2016/

Billboard JAPAN Party × SUMMER SONIC EXTRA

SWV

8月23日(火)、24日(水)Billboard-LIVE Tokyo
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
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8月25日(木)Billboard-LIVE Osaka
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
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MUSIQ SOULCHILD

8月20日(土)Billboard-LIVE Tokyo
1stステージ:開場17:00/開演18:00
2ndステージ:開場20:00/開演21:00
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8月22日(月)Billboard-LIVE Tokyo
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
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8月24日(水)Billboard-LIVE Osaka
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
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LARRY GRAHAM & GRAHAM CENTRAL STATION

8月25日(木)、26日(金)Billboard-LIVE Tokyo
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
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8月23日(水)Billboard-LIVE Osaka
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
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MAYER HAWTHORNE

8月21日(日)SUMMER SONIC 2016〈MOUNTAIN STAGE〉

8月15日(月)、16日(火)Billboard-LIVE TOKYO
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
★詳細はこちら

8月18日(木)Billboard-LIVE Osaka
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
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