〈SUMMER SONIC 2015〉の〈Billboard JAPAN Party!〉で共演したことをきっかけに意気投合し、コラボShy”も発表しているザップとタキシードが、7月にそれぞれ単独で来日公演を行う。80年代を代表するファンクのレジェンドであるザップと、2015年の初作『TUXEDO』が日本でも大人気のメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンから成るタキシード。新旧の大物ファンク・ユニットが一挙に来襲することとなる。ここでは両者の足取りと現在地をさくっとおさらいし、来るビッグでホットな公演に備えたいと思う。

ザップとタキシードが2018年に行なった“Shy”のパフォーマンス映像
 

ザップは、オハイオ出身のロジャー・トラウトマン擁する前身バンドから、70年代後半に現名義に改名し誕生。メンバーはロジャー、ラリー、レスターのトラウトマン兄弟を中心となっていた。幼馴じみであるブーツィー・コリンズの紹介で出会ったジョージ・クリントンに見初められたことが契機となり、先行シングル“More Bounce To The Ounce”を含むファースト・アルバム『Zapp』が80年にリリースされた。80年代の幕開けを飾った同作は大ヒットしてゴールド・ディスクを獲得し、華々しいデビューとなった。

ロジャーの超絶ギター・プレイや、彼が広く世に知らしめたとされるトークボックスはザップの音楽のもつ個性のひとつであった。また、ザップ及びロジャーが音楽史に残した功績は大きく、〈骨太なファンク・グルーヴをベースに、ソウル、ブルース、ジャズ、ゴスペル、ヒップホップを有機的に結びつけ、一級のエンターテイメントへと昇華したセンス。ユニークな名曲カヴァーも含め、黒人音楽の伝統に忠実でありながら前人未踏の域に踏み込んでいったロジャーこそ『ブラック・ミュージック』そのものと言っていい〉と、音楽ジャーナリストの林剛は記している

ザップの80年のデビュー・シングル“More Bounce To The Ounce”
 

そして、軌道に乗ったバンドがコンスタントにアルバムを発表していくなか、中心人物のロジャーは81年に『The Many Facets Of Roger』でソロ・デビュー。ロジャーはザップとソロの両方で精力的に活動し、プリンスと並んでジェームス・ブラウンやPファンクの後継者とも言われるほど、シーンの重要人物となっていった。また、90年代になり人気が落ち着くと、今度はドクター・ドレーや2パックらウェストコースト・ヒップホップのアーティストがリスペクトを込めて、サンプリング・ソースとしてザップの楽曲を使用。Gファンクのサウンドの形成に大きな影響を与え、彼らの音楽は再評価されることとなった。

ロジャーの81年作『The Many Facets Of Roger』収録曲、マーヴィン・ゲイのカヴァー“I Heard It Through The Grapevine”
 

そんななか、99年にロジャーが銃殺され死去。現場の近くで自殺していたザップのメンバーであり実の兄弟であるラリーが犯人という、悲しい事件が起きてしまう。これを機にフロントマンを失ったバンドは活動を一旦停止。テリー・トラウトマンがロジャーの代わりにトークボックスを使って歌いはじめ活動を再開し、ザップは現在もライヴを中心に活動を続けている。

ロジャーが亡くなる前からコンスタントに来日していたザップ。2015年の〈サマソニ〉に駆け付けた人も、今回のBillboard Liveでの単独公演は観逃せないだろう。

ロジャー・トラウトマン&ザップとしての86年のライヴ映像
 

一方、昨年以来の来日となるタキシードは、それぞれにソロ・アーティスト、プロデューサーとして第一線で活躍する二人がファンクやディスコ、ブギー、ソウルへの愛をもって結成した夢のユニット。先行曲“Do It”を収録した2015年のファースト・アルバム『Tuxedo』は高く評価され、本国以外でもタキシード旋風を巻き起こした。

2017年作『Tuxedo II』収録曲“Fux With The Tux”
 

ケイトラナダらが参加したリミックス盤を挟み、2017年にはセカンド・アルバム『Tuxedo II』をリリース(名前に〈II〉をつけるやり方はザップからの影響もあるとか)。内容としては前作と地続きなものだが、彼らが愛し深く理解するヴィンテージ・サウンドのムードを現代の音楽に落とし込む手腕。それにはタキシード・ファンを公言するNONA REEVESの西寺郷太氏も大リスペクトを送っており、〈20年プロでミュージシャンをやっていると新譜から得られる新鮮さってどうしても減ってくるんだけど(中略)新しいアルバムが出てドキドキしながら聴けるアーティストがいるって、本当に幸せ〉と熱く語っている。

今回の来日では、沖縄のフェス〈CORONA SUNSETS FESTIVAL 2018〉や、渋谷VISIONでのDJセットも予定しているが、着席でじっくり聴けるBillboard Liveでの公演はやっぱり魅力的だ。

2017年のパフォーマンス映像
 

公演日がカブっている日もあるが同時期の来日ということで、ステージ上での共演はあるのか、“Shy”のお披露目があるのかどうかは気になるところ。だが、いずれにせよどちらの公演も最高のパーティー・ミュージックが楽しめるはずなので、素敵な夏の夜を過ごしに足を運んでみてほはいかがだろうか。

 


LIVE INFORMATION
ザップ

2018年7月11日(水)、12日(木)Billboard Live TOKYO
1stステージ 開場 17:30/開演 19:00
2ndステージ 開場 20:45/開演 21:30
サービスエリア 8,900円/カジュアルエリア 7,900円
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2018年7月13日(金)Billboard Live OSAKA
1stステージ 開場 17:30/開演 18:30
2ndステージ 開場 20:30/開演 21:30
サービスエリア 8,900円/カジュアルエリア 7,900円
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■メンバー
テリー・トラウトマン(キーボード/ヴォーカル)
バート・トーマス(キーボード/ヴォーカル)
デイル・デ・グロート(キーボード/ヴォーカル)
ロナルド・フロスト(キーボード/ヴォーカル)
レスター・トラウトマン(ドラムス)
アンソニー・アリントン(サックス)

タキシード
2018年7月12日(木)Billboard Live OSAKA
1stステージ 開場 17:30/開演 18:30
2ndステージ 開場 20:30/開演 21:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円
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2018年7月16日(日・祝)Billboard Live TOKYO
1stステージ 開場 17:30/開演 19:00
2ndステージ 開場 20:45/開演 21:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円
★詳細はこちら

2018年7月17日(火) Billboard Live TOKYO
1stステージ 開場 15:30/開演 16:30
2ndステージ 開場 18:30/開演 19:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円
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