東京のライヴハウス・シーンでジンワリと、また刺すように存在感を示している壊れかけのテープレコーダーズ(以下、壊れかけ)は、男女ツイン・ヴォーカルにヴィンテージ・オルガンをフロントとする4人組。このたび、彼らの5枚目となるニュー・アルバム『SILENT SUNRISE』がリリースされた。

結成以来、不動のメンバーで活動を続け、来年には10周年を迎える壊れかけ。初期はサイケデリックやガレージ、そしてアート・ロックにフォークなど、60~70年代ロックの影響を色濃く感じさせていたが、前作『broken world & pray the rock’n roll』(2014年)では彼ら自身のロックンロールを力強く宣言。そして新作『SILENT SUNRISE』では、バンドが獲得したロックンロールをよりナチュラルに浸透させ、鮮やかに歩み続けていくような、その先を軽やかに提示してくれるような、いっそう耳馴染みの良いアルバムとなっている。「希望か絶望かは聴き手次第」とはインタヴュー中の小森清貴の言葉だが、どんな色にも変えられる、そんなまっさらなイメージだ。

今回はメンバー全員を迎えて、『SILENT SUNRISE』についてはもちろん、バンド結成時からの変遷も振り返ってもらった。〈壊れかけのテープレコーダーズとは何者なのか〉、改めてその実態に迫ってみよう。

壊れかけのテープレコーダーズ 『SILENT SUNRISE』 MY BEST!(2016)

常に赤ちゃんのような感受性でインプット/アウトプットしたい

――いきなり個人的なことなんですが、以前私が企画したライヴに出ていただいたことがありましたよね。その時の対バンが原マスミさんで、われながらいいブッキングだったなぁと(笑)。原さんのファンの方も壊れかけのCDを買っていたりして。あの時はありがとうございました。

※82年に『イマジネイション通信』でデビューしたシンガー・ソングライター/イラストレイター。よしもとばななの挿画でも知られる

小森清貴(ヴォーカル/ギター)「あのライヴがきっかけで原さんとは何度か一緒にやっていただいたんです。こちらこそありがとうございます」

――壊れかけは同世代とはもちろんですけど、上の世代との対バンも多いですよね。

小森「そうですね、自分たちの企画の時は積極的にそういった人を呼ぶようにしているし。割礼が最初で、それから灰野敬二さんとやったり」

――そういったところからも、壊れかけは昔から脈々とあるロックへの憧れや、それらを受け継ごうという意識が感じられますけど、前作『broken world & pray the rock’n roll』では先達への憧れから、自分たち自身のロックンロールに脱皮していったなと。

小森「おっしゃる通りです。前作で自分たちのロックンロールを作ろうと思いました」

2014年作『broken world & pray the rock’n roll』収録曲“15歳のポケット”

――前作は力も凄く入っていましたよね。

小森「〈ぶん殴るようなロックンロール〉がやりたかったんです。でも新作はそんな感じではなく、音もスマートになったかな」

――『SILENT SUNRISE』はフレッシュですよね。

小森「フレッシュですよね(笑)。マスタリングをやっていただいた中村宗一郎さんにも〈風通しが良くなったね〉と言われました」

小森清貴

――初期の頃は上の世代の日本のロックや、海外ならドアーズなど60~70年代のロックへの憧れがあり、前作では〈ぶん殴るようなロックンロール〉を叩きつけ、そして今作はフレッシュで。どんどん若々しくなっている気がするし、むしろ若々しくなることが成長であるような。

小森「そうかもしれないですね。ファースト・アルバムの『聴こえる』(2009年)が一番老衰しているような。あれ? 老衰……?」

shino(ベース/コーラス)「老衰じゃなく老成。老衰じゃ死ぬわ(笑)」

小森「そう、老成(笑)。初期のほうが老成してるような印象かもしれない。それが変化していったのは、長くやっていくにつれて、こだわりが削げていったんじゃないですかね」

shino「気負いみたいなものも減っていくよね」

小森「こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないという枠組みがどんどんなくなっていて。〈経験を積んでいるから素晴らしい〉みたいな感じにはなりたくないんです。それって権威的な気がするし。そうではなく常に赤ちゃんのような感受性で、現在のものも過去のものもインプット/アウトプットしたいんですね。経験を積むにつれて、逆にそういった意識が出てきました」

――今作の“水瓶座の時代”にそういった歌詞もありますよね。

小森「ああ、ありますね。〈またとして同じ姿はなく/変わる/変わる〉という」