神々が宿る島から竹ガムラン〈ジェゴグ〉の最高峰グループが来日

 今年もインドネシア・バリ島西部のサンカルアグン村からスアール・アグンがやってくる。を世界各国へと伝えてきたスアール・アグンの名前はここ日本でも広く知られているが、その奥深さは一度観たぐらいですべてを理解できるほど単純なものではない。観るたびに新たな衝撃を与えてくれる彼らだけに、今回の来日公演も言うまでもなく必見である。

 日本ではガムランというと青銅楽器を中心とするメタリックなものをイメージされがちだが、多様性あふれるインドネシアの地を象徴するかのように、バリ島やジャワ島には多種多様なガムランのスタイルが存在する。ジェゴグはそのなかでもバリ島西部ヌガラを発祥とする伝統楽器アンサンブルで、彼らが奏でるのはまろやかな音色を特徴とする竹ガムラン。少し聴いただけでは可愛いらしい印象を持ちかねないが、この素朴な音色で演奏者自身はもちろん、聴き手をもトランス状態に持ち込む。その意味では非常に危険な音楽とも言えるだろう。

 現在、バリ島西部の各地域では様々なジェゴグ楽団が活動しているが、オランダ統治時代には竹槍の原材料になるという理由からジェゴグの演奏自体禁止されていたという。その伝統を復活させたのが、現在スアール・アグンを率いるイ・クトゥッ・スウェントラ。彼は71年にスアール・アグンを結成すると、一度途絶えた伝統を復活させるだけでなく、よりダイナミックなアンサンブルを構築して伝統を更新。地元ヌガラの若者たちだけでなく、各国のリスナーたちにも衝撃を与えてきた。

 そもそも竹はサンカルアグン村に限らず、バリ島の各地域で家具や雑貨などに使われている生活必需品。そんな竹を使い、この世のものとは思えない壮大な音楽世界/宗教的空間を創出するのがスアール・アグンの凄さだ。ジェゴグは4つの音階で奏でられるが、その4音には東西南北の方位と色が表されているとされ、たとえ単純な音の繰り返しであっても何らかの宗教的意味合いを持っている。その意味合いをすぐさま理解することは不可能だが、会場全体を揺さぶるような強烈な中低音とカラフルな高音を身体全体で浴び、ジェゴクの凄みを体感することは可能だ。耳だけでなく、全身で浴びてこそ理解できる音楽――それがスアール・アグンなのだ。

 今も昔もジェゴグの象徴であり続けてきたスアール・アグン。繰り返すようだが、一度観たぐらいで彼らのことを理解した気になってはならない。その壮絶なステージを今年もぜひ体験していただきたい。

スアール・アグンのライヴ映像

 


LIVE INFORMATION

スアール・アグン 来日公演2016~祝祭の音楽 ジェゴグ・大地の響き~
○9/22(木/祝)福島・いわき芸術文化交流館アリオス
○9/24(土)岐阜・サラマンカホール
○9/25(日)愛知・豊田市コンサートホール
○9/27(火)宮城・えずこホール 仙南芸術文化センター
○9/29(木)福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい
○10/1(土)静岡音楽館AOI
○10/2(日)めぐろパーシモンホール 大ホール
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