Dance Wif Da Devil
今度はこっちをしゃぶってろ! 南アフリカの誇る異端の鬼才ユニット、ダイ・アントワードがニュー・アルバム『Mount Ninji And Da Nice Time Kid』をリリース。神と黒山羊が創造した新世界はまたもや異形のヤバさに溢れている……

DIE ANTWOORD Mount Ninji And Da Nice Time Kid Zef/BEAT(2016)

 

エネルギッシュでカラフルなポップ・サウンド

 映画「チャッピー」への出演によって日本での人気もいよいよ高まってきた南アフリカのダイ・アントワード。彼らのヒーローであるDJマグスサイプレス・ヒル)のお膝元LAへと拠点を移して制作されたニュー・アルバム『Mount Ninji And Da Nice Time Kid』は、そのマグスがブラック・ゴート名義でプロデューサーとして全面参加するなど、ソウル・アサシンズからのバックアップを受け、万全の態勢で完成へと漕ぎつけられたもの。アニメやコミックから飛び出てきたようなキャラに注意を奪われがちだが、ディプロ顔負けの無国籍なビートやM.I.A.のラディカル&カラフルさを継承したような音そのものがもっと評価されてもいいだろう。

 その証左となる本作は、ハードコア・テクノヨランディの可憐なヴォーカルの対比が鮮やかな先行カット“Banana Brain”(BABYMETALにインスパイアされたそう)、サイプレス・ヒルからセン・ドッグが参加した酩酊トラック“Shit Just Got Real”、俳優のジャック・ブラックがミュージカル風の歌声で参戦したバウンス・チューン“Rats Rule”、グッチ・メインをサンプリングした激重トラップ“Stoopid Rich”など、シリアスなトピックからコミカルな面までを自在に行き来しながら彼らなりのポップ・ミュージックを体現している。次作がラストと明言しているのが信じられないほど(ウソでしょ!?)、エネルギッシュでおもしろくて格好いいぞ!  *青木正之

 

ワルそうで神々しいパフォーマンス

 南アフリカはケープタウンで結成され、同地の貧困白人層から生まれた独自のカウンター・カルチャー=ゼフをテーゼに、カラフルでフリーキーな美意識とハイブリッドな音楽性でカルトな支持を集めてきたダイ・アントワード。ミックステープ『Suck On This』を前フリに登場した通算4作目『Mount Ninji And Da Nice Time Kid』では、前作で初共演したDJマグス(サイプレス・ヒル)がブラック・ゴートを名乗って大幅に関わり、メンバーのゴッドDJハイ・テック)とプロダクションを分け合う形で完成されている。

 ゴスやスカムから欧米のショウビズ、日本のサブカルにまで及ぶ多様な影響を自由に取り込み、フレッシュでカッコ良い排泄物に作り替えるゼフの精神のもと、今回はハードスタイルからタイの音楽、ソビエト民謡などが投入。近年はダブステップ寄りのソロ作をウルトラから出してもいたマグスだけあって、ヤバいサンプル使いで異彩を放った90年代の仕事ぶりも思い出させながら、グループの世界を理解したダークでハイブリッドなニュー・サウンドを提供している。もちろんフロントを張るニンジャとヨランディのワルそうで神々しい立ち居振る舞いも遠慮なし。2人の愛娘であるシックスティーンや、俳優のジャック・ブラック、バーレスク・ダンサーのディタ・フォン・ティースマリリン・マンソンの元妻)、ニンジャの昔の相棒でもあるDJファックサイボット)といった顔ぶれも交えつつ、強固な音世界でブッ飛ばしてくれる。今回も申し分のない快作だ。 *轟ひろみ