フューチャー・ブラウンやその構成員と直接的に繋がるような作品や関連作はほぼCDリリースのないのが現状……ってことで、FBをシンプルにハイブリッド・ヒップホップと捉えて、ここでは強引に連想盤を紹介しておこう。
BOK BOK Your Charizmatic Self Night Slugs/BEAT(2014)
何だかんだ言って期待大なケレラの歌が聴ける数少ない一枚。彼女をフィーチャーした“Melba's Call”は、90年代R&Bに由来する新時代女声の在りようを規定した重要曲だが、それをフリーキーな脱臼ファンクで受け止めるティンバったビートの懐かしい格好良さよ。まもなく登場するジャム・シティの新作も楽しみ。
DILLON FRANCIS Money Sucks, Friends Rule Mad Decent/Columbia(2014)
かつてはマルーカとの“Que Que”でも名を馳せたLAのパーティー野郎。セレブもスカムもガツガツ呑み込んで音の胃袋を拡張する貪欲さは好みを分けそうだが、その内容物はFBにも通じるはず。快楽重視という美意識をアーティーに感じさせないセンスには抽んでたものがあると思う。
『Future Brown』に招かれたゲスト陣の中で正規のフィジカル盤をリリースしているのは、いまのところ彼女のみ。シカゴ出身ながらもリュダクリスのレーベルと契約し、アトランタ・バウンス~クランク方面に呼応したインファマスな存在感は、ムーヴメント化するバップなどに先駆けたブーティーさだと言えなくもない、か。
バウアーとのコラボでも名を売った、マイク・ウィル・メイド・イット肝煎りのミシシッピ出身コンビ。このデビュー作も悪ガキ感をキャッチーに活かすブーミンなトラック揃いだが、そこに冷たいノリを鋭く挿入するのはシカゴで8 TMGを統べるヤング・チョップ製の“My X”だ。
カナダを拠点にグライムに取り組んできたラッパー/ビートメイカーの初フィジカル作は、地元由来のアトモスフェリック気分も吸い込んだ結果、ありそうでなかったアンビエント感とガラージーなノリの交じるユニークな出来に。ハードに粘るフロウはFB作におけるロール・ディープ組の振る舞いとも比べたい。
何とも言えない怪しさと妖しさをオーヴァーグラウンドにも広げてきたケープタウン発コンビの最近作。ギスギスしたトラップやインダストリアル系までをハイブリッドなレイヴ・スタイルとして響かせる異様なノリと押しは天下一品。下世話なビートの気持ち良さはFBとも決して遠からず。
本作はもちろん入手が容易。欧米から見たアジアのエキゾティシズム幻想をテーマにした作風はエキセントリックUKGという感じだが、FBの明快さを味わった後で改めて聴けば、ナイト・スラッグスらと繋がるツボも見えてくる。ハイパーダブ産品では、種々の10周年コンピに溢れるカラフルな色合いもFBのアルバムと重なりそう。