「GLOCAL BEATS」(共著)、「大韓ロック探訪記」(編集)、「ニッポン大音頭時代」(著)のほか、2016年は新刊「ニッポンのマツリズム」を上梓するなど多くの音楽書に携わり、ラジオ番組にも多数出演。世界の音楽とカルチャーをディープに掘り下げてきたライター/編集者/DJの大石始が、パワフルでオリジナルな活況を呈するアジア各地のローカル・シーンの現在進行形に迫る連載〈REAL Asian Music Report〉最新回をお届けします! 今回はお題を〈アジアン・ヒップホップ〉とし、みずから各地に足を運ぶなど界隈の事情に詳しいHUNGERYOUNG-Gを招いて、話を訊いてきました。 *Mikiki編集部

 

(左から)HUNGER、YOUNG-G
 

2000年代以降のアジア各地の音楽的な状況を紐解くとき、決して外すことはできないキーワードが〈ヒップホップ〉だ。USからヒップホップ・カルチャーが輸入された時期は国によって大きく異なるが、インターネットが幅広く普及した2000年代以降、各地で活動するラッパーやDJの数は飛躍的に増加。近年では国を越えたコラボレーションも徐々に増えてきている。

そんななかGAGLEのMC、HUNGERがこの夏にリリースしたソロ・アルバム『SUGOROKU』は、モンゴルやタイ、アメリカやオーストラリアを旅しながら、各地で行ってきた共演の成果をまとめた意欲作だ。グンと距離が近くなった現在のアジアン・ヒップホップの現状を示すものともいえるだろう。また、フィリピンのラッパーたちと共演し、アジアをテーマにしたミックスCDを発表してきたのがstillichimiya及びおみゆきCHANNELのメンバーとして活動する、YOUNG-G。最近では来年2月に公開となる映画「バンコクナイツ」の制作スタッフとして4か月間に渡ってタイに滞在するなど、アジアン・ヒップホップの現状をつぶさに見つめてきた人物だ。今回はそんな2人に、いままさにおもしろくなってきているアジアン・ヒップホップの現状について語ってもらった。

※2011年作「サウダーヂ」が大きな話題となった映像製作集団・空族による、タイ・ラオスでオール・ロケを敢行した劇映画

 

モンゴル・ヒップホップの衝撃

――8月にリリースされたHUNGERさんのアルバム『SUGOROKU』は、2008年から今年にかけて各国でラッパー/プロデューサーと行ってきたコラボをまとめた作品でしたよね。そうしたコラボの旅を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

HUNGER「2008年以前もいろんなところを旅していたんですよね。でも、それまではただの旅人というか、音楽にそれほど触れていなかった。で、2008年にモンゴルに遊びに行こうと思って調べていたら、『地球の歩き方』に〈モンゴルではヒップホップが流行っている〉と書いてあって(笑)」

HUNGER SUGOROKU 松竹梅(2016)

HUNGERの2016年作『SUGOROKU』収録曲 “ウルトラベル”、プロデュースはDJ Mitsu the Beats
 

――へえ、意外な情報源(笑)。

HUNGER「それで、モンゴルに着いたらまずはヒップホップをチェックしようと思って、滞在先のホテルで副支配人をしてた女の子にクラブへ連れていってもらったんです」

――首都のウランバートル?

HUNGER「そうです。ウランバートルにしては(入場料やドリンクが)高いクラブで、着いたらトランスがガンガンかかってたんですね。そんななか、〈今日は俺らのリリース・パーティーだぜ〉と突然ヒップホップのライヴが始まったんです。それが、(今回のアルバムに収録された)“One Time In Mongolia”に参加してもらったボルドー(Boldoo)とクイザ(Quiza)だった。話しかけてみて、GAGLEのCDを渡したんですよ。そうしたら、〈日本にもヒップホップがあるんだ!〉って驚かれて(笑)」

――こっちのセリフですよね(笑)。

HUNGER「そうそう(笑)。それで帰国後に彼らから連絡が来て、〈なんで日本のヒップホップはこんなに音がいいんだ?〉と言われましたね」

――彼らはクルーとしてやってるんですか?

HUNGER「いや、兄弟なんですよ。ボルドーが兄ちゃんで、クイザが弟。ボルドーは〈俺が一番最初にヒップホップをライティングした男だ〉なんて言ってましたね。クイザもモンゴルではスターで、子供にも人気があるんですよ」

――前情報なしにモンゴルへ行ってみたら、ヒップホップの分厚いシーンが存在していたと。

HUNGER「そうですね。ただ、アジアの他の国もそうですけど、モンゴルも型にハマったラッパーが多いのは確かなんですよ。服装も含めて、アメリカのスタイルそのまま。でも、ボルドーとクイザはモンゴルの歴史をリリックに盛り込んで自分たちのアイデンティティーを主張していたり、他のラッパーとはちょっと違っていた。それで1年後に〈ライヴをやりにきてほしい〉って言われて、今度はライヴのためにモンゴルへ行くんです」

クイザも出演するモンゴルのヒップホップ・シーンを紹介したドキュメンタリー映画「Mongolian Bling」のトレイラー映像
 

HUNGER「ウランバートルの中心部にあるチンギス・ハーン広場の一角に、国立のオペラ劇場があるんですが、彼らに〈そこで初めてヒップホップのライヴをするから、お前も出てほしい〉と言われて。2000人ぐらい客がいるんですけど、全員着席していた(笑)。でも、そのときの渡航が劇的におもしろかったんですよ。クイザはスターなので、貧民街の子供たちにライヴのチケットを配るというドキュメンタリー番組に出ていて、それに僕も同行することになったり、いろんなことがあって。そのときのことを記録に残しておきたくて、“One Time In Mongolia”を一緒にレコーディングすることになったんです」

モンゴルでのライヴやレコーディングの映像も収録された『SUGOROKU』収録曲“One Time In Mongolia”
 

――同じ2009年には韓国でもレコーディングされてますね。

HUNGER「そうですね。韓国にはGAGLEで何度も行ってたんですよ。一番最初は2004~2005年ぐらいだと思うんですが、Mitsu the Beatsが向こうでちょっとヒットして、それで俺も一緒に行ったんです。そのときオープニングをやってくれたのがPRIMARY SCOREなんですが、いまとなってはK-Popのプロデューサー(PRIMARY)として大物になっていますよね」

ヒョゴオ・ヒョクとのコラボ作もリリースしているPRIMARYのユニット、PRIMARY SCOREの2007年作『First Step』収録曲“Beautiful Struggle”
 

――韓国のヒップホップ・シーンについてはいかがですか。モンゴル以上に分厚いと思うんですが。

HUNGER「かなり分厚いですね。90年代からの歴史もあるし、みんな日本のヒップホップについても本当に詳しいんですよ。キングギドラRHYMESTERMICROPHONE PAGERBUDDHA BRANDなんかからダイレクトに影響を受けてる人もいるし、とにかく日本のヒップホップを細かく知っている、というのが他の国との違いだと思います」

YOUNG-G「昔、FUTURE SHOCKのクルーが韓国でライヴをやったりしていましたもんね」

――2000年代初頭にGARIONDJ SOULSCAPEが在籍していた韓国のレーベル/クルー、MASTERPLANがFUTURE SHOCKと一緒にやったりコンピを作ったりしていましたよね。当時から日韓の交流が盛んだった印象があります。

HUNGER「韓国は僕らが最初に行ったときからシーンとしてのクォリティーがすごく高かったんですよ。アンダーグラウンドも凄かったし、いまは商業的にも成功している連中も多いですよね」

HUNGERが持参してくれたアジアン・ヒップホップ盤

(左上から時計回りに)ベトナムのヨンハ・アイン・トゥアン(Hà Anh Tuấn)の2010年作『Acous'84』、韓国のLOPTIMISTの2008年作『Mind Expander』タイのドゥ・ジャダ(DU JADA)の2005年作『Pink World』、どこかTARO SOULを思わせるベトナムのRAPSOULの2010年作『Sounds Of Urban Life』

 

(左上から時計回りに)韓国のVERBAL JINTSWINGSJJKの2009年作『Joke+』、韓国のTHE QUIETTの2010年作『Quiet Storm : A Night Record』、HUNGERも参加している2009年作のコンピ『松竹梅プレミアム/Show Tiku Bai Premium』、韓国のSUPERHEROの2006年作〈宇宙船1集〉

 

(左から時計回りに)上海のKIDGODの2010年作『Feel The Rhythm』、韓国のPRIMARY SCOREの2007年作『First Step』、韓国のJUNGGIGOの2008年作『ByeByeBye』

 

西欧にはない、自分たちと同じ匂い

――YOUNG-Gさんにもお話をお訊きしたいんですが、アジアのヒップホップに関心を持つようになったのは2011年にフィリピンに行って以降のこと?

YOUNG-G「そうですね。(stillichimiyaの)BIG BENとやっているおみゆきCHANNELで〈RAP IN TONDO 2〉というプロジェクトに参加したんですよ。〈RAP IN TONDO 1〉はフィリピン、ドイツ、フランスの国際交流基金が合同で企画したプロジェクトで、マニラのトンド地区の貧しい子供たちを集めてヒップホップのワークショップをやるというものだったんですが、〈RAP IN TONDO 2〉からはそこに日本の国際交流基金も参加することになって、僕らに声が掛かったんです」

――それまでアジアのヒップホップを意識することはなかった?

YOUNG-G「一番最初は韓国のMC SNIPERをフィーチャーした坂本龍一さんの“Undercooled”(2004年作『キャズム』収録)だったと思いますね。そのときに〈韓国にもこういうラップがあるんだ〉と思ったんですけど、本格的に関心を持つようになったのはフィリピン以降ですね」

同年にシングル・カットもされた坂本龍一の2004年作『キャズム』収録曲“Undercooled”。小山田圭吾Sketch Showも参加
 

――トンド地区は貧民層のエリアで、治安もかなり悪いと聞いたんですが。

YOUNG-G「うん、悪いところはめちゃくちゃ悪いですね(笑)。トンドって〈東南アジア最大のスラム〉と言われるぐらいで、すごく広いんですよ。フィリピンの一部の地域では銃が出回っているんですが、10代半ばから20代前半までの世代で構成されてるトンド・トライブというラップ・グループのうちの何人かは足や肩に弾痕が残っているんですよ。ギャング同士の撃ち合いが街中ですぐに始まるそうで。でも、みんな病院に行く金もないから、〈足の中に埋まった銃弾を熱したラジオ・ペンチで抜き取ったんだぜ〉なんて話をしているんです」

――すごい話ですねえ……。

YOUNG-G「ただ、トンドに住んでる人たちは〈みんなここはスラムだなんだというけど、すごく愛に溢れた場所なんだ〉と胸を張るんです。僕らもトンド・トライブと一緒に動いてるから全然危険な目には合わなかったし、すごくいいところでしたね。フッドっていう感じ」

〈RAP IN TONDO 1〉でトンド・トライブがドイツのMC NARCOとトンドで撮影した“Stop It!”
 

――トンドのなかにはラップやDJをやっている若い子たちも多いんですか。

YOUNG-G「多いですね。あと、トンドは昔から芸術家や革命家がたくさん輩出された場所らしいんです。ラッパーだけではなくて、絵描きや写真家とかいろんなアーティストが住んでいました」

――トンドのラッパーはどういうタイプが多いんですか。

YOUNG-G「フィリピンという国自体のポップ・ミュージックがUS直系なんですよね。MTV文化も強いし。あと、LAにもフィリピン系の移民が多いので、ウェストコースト・スタイルのMCが多くて。ただ、みんなのスキルとポテンシャルはめちゃくちゃ高いと思いました。タガログ語のラップって少しスパニッシュみたいな巻き舌と、尚かつ早口が多い。15、6歳ぐらいでトゥイスタみたいなラップをタガログ語でやるんです(笑)」

HUNGER「それはすごい(笑)」

YOUNG-G「それを見て、〈アジアのヒップホップ、凄いところまできてるな〉と思いましたね」

HUNGER「あと、フィリピンはフリースタイルのMCバトルもすごいですよね」

――フリップトップ(FlipTop)ですね。

YOUNG-G「フリップトップの映像がYoutubeの再生回数の世界2位まで上がったこともあったらしいんですよ。だから、日本のフリースタイル・ブームとは比じゃないぐらい盛り上がっているみたいで」

フリップトップ出身のラップ・スター、ルーニーも参加した2016年の映像。会場はマニラ中心部のクラブ、B-Side
 

HUNGER「フリップトップってアカペラでやるんですよね。機材がなくてもできるから、スラムみたいな場所の若い子たちでもできるというのが大きいんでしょうね。ボールひとつあればできるサッカーと一緒で」

YOUNG-G「しかもフリップトップってかなりデカいクラブで、お客さんもパンパンに入っているようなところでやるのに、マイクを使わないんですよね(笑)」

――そうそう、あれはすごいですよね(笑)。

YOUNG-G「みんな静かに聴き耳を立てていて、パンチラインがくると大騒ぎする」

HUNGER「MCバトルがそれだけ盛り上がってくると、シーンも多様化してくるんですよね。今年の3月、(フィリピンの)ミンドロ島というところで〈Malasimbo Lights & Dance Festival〉っていうフェスが行われたんですけど、僕らも呼ばれてライヴをやったんですよ。そこでやっていたのがカーティスミス(Curtismith)というフィリピンのラッパーで、すごく洗練されていてアーティスティックなヒップホップをやっていましたね」

カーティスミスの2015年の楽曲“Going In For Life”
 

――YOUNG-Gさんの話に戻ると、トンドに足を踏み入れて以降、アジアのヒップホップを掘るようになっていくわけですよね。

YOUNG-G「そうですね。それ以来いろんなものを聴くようになったし、何よりも人に紹介したいと思うようになって。それでアジアのヒップホップをまとめた『PAN ASIA Vol.1 ~Unknown World of Asian Rap~』というミックスCDを作ったんです」

YOUNG-Gの2012年作『PAN ASIA Vol.1 ~Unknown World of Asian Rap~』のトレイラー映像
 

――あれは名作ですよね。

YOUNG-G「ありがとうございます(笑)。いろいろ調べていくなかで、自分のなかに〈アジア〉というキーワードが出てきて、それをああいう形でまとめたんですよ」

――そこにあったのは〈アジアがおもしろそうだぞ〉という直感?

HUNGER「〈匂い〉みたいなものなのかな?」

YOUNG-G「ああ、そうですね! 確かに〈匂い〉があるんですよ。しかも西欧にはない独特のものであって、僕たちと同じ匂いがした。そこに惹かれたのかもしれませんね」

――そこは重要ですよね。自分とは明らかに違うエキゾティックな匂いを求めてアジアに辿り着いたわけではなくて、HUNGERさんにしてもモンゴルのラッパーたちに自分と同じ匂いを感じ取ったという。

HUNGER「そうですね。あとは誰も知らないものに触れてしまった以上、〈これは人に伝えないといけない〉とか〈作らないといけない〉という意識が生まれてきてしまったんですよね」

YOUNG-G「自分の場合は〈日本の友人たちに聴かせたい〉という単純なところも大きかったですね。あと、モンゴルの伝統音楽に馬頭琴を弾きながら歌う、語り芸のようなものがあるじゃないですか。あれを聴いたとき、ラップだと思ったんですよ。タイでモーラムを聴いたときにも同じことを感じたし、ヒップホップを最初に聴いたときと同じぐらいの衝撃を感じたんです。そういうものって各地に存在していて、ラップにしても黒人の語り芸がたまたまラップという形になっただけだと思うんですよね」

――まさにそうですよね。日本にも古来からそうした語り芸が存在しますし。

YOUNG-G「そうですよね、どの国の大衆音楽にもラップ的要素を含んだものがあると思うんですよ」

 

成熟して洗練される前のおもしろさ

――ちょっと話を戻すと、モンゴルやフィリピン以外の国についてはいかがですか?

HUNGER「よく話を聞くのはインドネシアとタイですね(……と謎のフィギュアを出してくる)」

YOUNG-G「これ、ヤバくないですか(笑)。なんすかこれ」

 
裏に8センチCDが!
 

HUNGER「タイのドゥ・ジャダ(Du Jada)が札幌のREBEL MUSICALというDJ/ビートメイカーと一緒に作ったミニ・アルバムのオマケ(笑)。MCのナッテイは絵を描くらしくて、それでこういうフィギュアにしちゃったという。仙台出身でタイに移住したDJ TO-RUがドゥ・ジャダと一緒にやっていた縁で、僕も彼らと仲良くなって、本人たちからもらいました(笑)」

ドゥ・ジャダの2005年作『Pink World』収録曲 “Bangkok Osaka”
 

――タイのシーンはどうですか?

HUNGER「ドゥ・ジャダの周りは知ってますけど、それ以外のところはあまり知らなくて。タイタニアムなんかは完全にNYな感じですよね。フリースタイルのバトルも相当盛り上がってるみたいで」

――やっぱりフリースタイル・バトルはどこでも人気なんですね。

HUNGER「そうですね。タイは日常生活では絶対に使っちゃいけない言葉があるらしいんですが、フリースタイル・バトルではそれを言っても許されるらしいんですね。だから、刺激が全然違うと」

YOUNG-G「僕も『バンコクナイツ』の撮影で4か月間タイにいたんですが、すぐ女優陣がブチ切れてひどい言葉を言うんですよ(笑)。それがどうも宗教的にNGな言葉らしくて。たぶんフリースタイル・バトルも少し仏教と関係した言葉なのかもしれない」

映画「バンコクナイツ」の撮影風景を収めたトレイラー映像
 

HUNGER「いわゆる〈罰当たりな!〉っていう」

YOUNG-G「そうそう。でも、ヒップホップのルールに則ったものだからこそ許されるんでしょうね」

HUNGER「タイは基本的に敬虔な仏教徒ですからね。ドゥ・ジャダのMCナッティも基本ヤンチャなんだけど、仏の前にいくとスッと手を合わせるんですよ」

YOUNG-G「それは僕もありましたね。イケイケなヤンキーのギャルなんかも寺院にいくと静かになって(笑)。この間国王が亡くなったときにも思ったけど、日本にはないものがあると思いますよ、あの国には」

――おもしろいですね。ヒップホップと一言で言ってもそれぞれのシーンには異なる政治的・文化的背景があって、それがいろんな形で現れてくるという。

HUNGER「そうですね。モンゴルも社会主義国だった92年まではアメリカの文化の輸入が禁止されていたそうで、ヒップホップが入ってくるようになったのも90年代以降だったみたいですね」

――この連載の1回目でミャンマーのターソーというラッパーにインタヴューしたんですけど、彼も同じことを言ってましたね。船乗りなんかがこっそりミャンマーに持ち込んだクリス・クロスのカセットテープをひたすらダビングしてこっそり聴いていたと。

YOUNG-G「ミャンマーはいますごくヒップホップが熱くなってるらしいですね」

――ミャンマーはおもしろいんですよ。向こうでCDを買うと、中にスーパーマーケットの割引券が入っていたりして。つまり、スーパーマーケットの広告としてCDを作っているという(笑)。

HUNGER「それは新しい(笑)」

YOUNG-G「YouTubeにアップされているベトナムのラッパーのPVにしても絶対広告が入ってますよね。一番おもしろかったのは、PVのなかに携帯ゲームのCMがいきなり入ってきたりする(笑)。CDのパッケージが売れなかったり、ブートがすぐに作られちゃうから、そうやって制作資金を稼ぐしかないんだと思う」

2分40秒あたりから突然ゲームのCMになる
 

――でも、日本もそのうちそうなるかもしれないですよね。

HUNGER「いやー、ホントそうですよね」

YOUNG-G「アジアのヒップホップでいうと、やっぱりカンボジアのレーベル、クラップヤハンズ(KlapYaHandz)はすごくおもしろいです。昔のカンボジア歌謡をサンプリングしたいなたい音なんだけど、すごく洗練されている。調べてみると、フランス人とアメリカ人がプロデューサーとして関わっていて、確信犯でやっているんですよね。stillichimiyaの音楽ともどこか近いものを感じるし、地元の山梨でカンボジアのヒップホップを聴くとアメリカのものよりも断然合うんですよ(笑)」

※本取材時にYOUNG-Gが着ていたTシャツもクラップヤハンズのものだった

クラップヤハンズがプロデュースするクメール・ヒップホップ・デュオ、OUK&YUT!による"Phang! Phang!"
 

――わはは(笑)。いなさたと洗練のバランスがいいんでしょうかね。

YOUNG-G「何なんでしょうね? プロデューサーが洗練された音にしているからこそ、俺の耳にも届いたということはあると思いますけどね」

HUNGER「それこそ日本のサウンド・エンジニアの技術は世界中どこでも必要とされてると思うしね」

――ラッパーやDJだけではなく、エンジニアなどの音作りをする側がアジアのシーンと交流していく機会も増えていくといいですよね。

HUNGER「それはありますよね。お互いを紹介し合う機会があったらいいと思うし。シンガポールやマレーシア、台湾もおもしろいって聞くし、カンボジアのパーティー・シーンも盛り上がってるみたいですよね。アジアには完全に成熟して洗練される前のおもしろさがまだあると思うんですよ」

YOUNG-G「ヒップホップのピュアなものが残っている気もしますしね」

HUNGER「そうそう! 知識があって洗練されていればいいという話ではないし、そこは重要だと思う。いまも俺らが知らないところでいろいろなことが蠢いているかと思うと、ゾクゾクするよね」

YOUNG-G「そうですよね! これからどんどん新しい人も出てくると思うし、アジアの結び付きがこれからさらに大事になってくると思いますね」

 


HUNGERのライヴ・スケジュール

12月3日@宮城・仙台CLUB SHAFT
12月17日@埼玉・大宮444quad
12月23日@東京・Club Asia
12月24日@神奈川・横浜THE BRIDGE YOKOHAMA
2017年1月7日@宮城・仙台OSTERIA GABU

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