韓国インディー勢が来日公演を行ったり、作品が日本でリリースされたりするのはいまに始まったことではないし、これまでも多くのアーティストが日本の音楽好きをときめかせてきた。ただそれは一部の熱心なアジア音楽、韓国音楽好きに限られていたのは否めない。しかし、ここ数年は〈サマソニ〉でアジアのアクトを集めたステージが設けられているのをはじめ、アジアの音楽そのものに関心が向けられる機会が増えたり、韓国勢に限定して言えば、本国で絶大な人気を誇るチャン・ギハと顔たちが注目度を高めていたり、また韓国のバラエティー番組への出演をきっかけに人気が爆発して存在が知られる(これは結構無視できない)……などさまざまな要因が積み重なり、いまようやく日本でもアンダーグランドなものではなくなりつつある……予感がしている。
その契機になるであろうトピックがが、韓国でいまもっともホットな若手ロック・バンドであるヒョゴの日本デビューだ。先日11月19日にヒョゴの単独ライヴが行われた東京・duo MUSIC EXCHANGEの様子を目の当たりにして、その予感は確信に変わった。
これまで行ってきた日本でのライヴのなかではもっとも大きい会場で、私が到着した頃には後ろまでパンパン。静かながらも熱気に満ちたその雰囲気は、過去2回とはちょっと違う感じがあったように思う。いよいよ開演し、“Bamboo”をバックに東京などで撮影されたメンバーの映像が流れると、全員が白の服で揃えたバンドの面々がステージに現れた。その後のMCではフロントマンのオ・ヒョクが〈科学者の感じで来ました〉と語っていたが、もっとも科学者感を出していたのは膝丈の白衣風ジャケットを着たギターのイム・ヒョンジェだったかも。
今回のライヴは、ヒョゴのフルコースと言えるセットリスト。日本盤がリリースされたばかりのEP“20”“22”の収録曲に、シングルでリリースした“Panda Bear”とバンドで発表した全楽曲に加え、TVドラマへの提供曲やオ・ヒョク関連ワークスと、彼らにまつわるナンバーがほぼほぼ披露された。
前半は、グルーヴィーなアップ中心。スタジオ音源で受ける印象以上に演奏の力強さとファンキーさが感じられる楽曲揃いだ。特に“Settled Down”“Lonely”あたりでは、派手なパフォーマンスもなく淡々としたメンバーの佇まいとは裏腹に、徐々に熱を帯びる巧みなバンド・アンサンブル・パート増し増しのアレンジが素晴らしく、身体を揺らさずにはいられない背筋がゾワゾワするグルーヴにヤラれまくった。個々のプレイの安定感がハンパないので、リズム隊の堅固なボトムに乗るギター × 2の絡み合いといったらたまらなく気持ち良い。メロディーの良さ云々を超え、その演奏力だけで観客を高みへ導く求心力はかなりハイレヴェルだ。
そして前半戦終盤のハイライトと言えば、2週間ほど前に公開されたばかりの楽曲“MASITNONSOUL”。これは現在韓国で放映中のドラマ「アントラージュ」(USで製作された「アントラージュ オレたちのハリウッド」の韓国版リメイク)のサントラ曲※で、アークティック・モンキーズ“Brainstorm”を彷彿とさせるドライヴィンなナンバー。これまでのヒョゴにはないスタイルながらもめちゃめちゃカッコイイので、これを演ってくれたのは個人的に嬉しかった。
※話は逸れるが……ヒョゴに加えてDOK2らヒップホップ勢などが参加した「アントラージュ」サントラ曲は現在YouTubeに続々とアップされていて、いずれもかなり良い! 興味のある人は〈안투라지 MIXTAPE〉で検索してみて!