MODERN CITY SOUNDTRACK 2016
[緊急ワイド]2016年、秋のムード
クールダウンしつつあるこの季節に似合う、メロウでメランコリックなムードを持つ新世代が近いタイミングで次々に登場。フィーリングを共有する2016年作品と合わせてどうぞ! *bounce編集部


 

hyukoh
優れた温故知新のセンスに基づく、新世代だからこそのクールネス

 メンバー全員が現在23歳という韓国の若手ロック・バンド、hyukoh(ヒョゴ)。ファンキーなダンス・グルーヴやファルセットを多用したナイーヴなヴォーカルなど、洗練されたセンスのクールな楽曲が持ち味の4人組だ。歌詞が英語中心ということもあって、欧米のロックやソウルからの影響を強く感じさせ、昨今の世界的なトレンドを鑑みれば、日本のリスナーにも親和性のあるサウンドと言える。彼らは2014年に『20』、2015年に『22』と、2枚のミニ・アルバムをリリース。それぞれのタイトルは楽曲制作時のメンバーの年齢で、当時の考えや自我を、作品を通して表現した。地元の韓国ではすでに高い人気と知名度を誇っている彼ら。すでに2度の来日も果たし、今年は〈SUMMER SONIC〉に出演するなどで、日本でもじわじわと注目を集めている。

HYUKOH 『20』 HIGHGRND/トイズファクトリー(2016)

 ヒョゴの結成は2014年の秋頃。もともとは中心人物でソングライターのオ・ヒョク(ヴォーカル/ギター)のソロ・プロジェクトとして始まったが、その時に集まった4人で現在のバンド・スタイルになっていったという。

 「一人でやるのはあまりおもしろくないし、バンドでやるほうがカッコイイんじゃないかって思ったんですよね。僕ら4人はみんな好きな音楽が違っ て、それでバンドを組んでいるので、それぞれの好きな音楽を作っていこう、という気持ちでやっているんです。ひとつのスタイルに固まってしまうとつまらな いと思うし、やりたいことをやるという気持ちでいけば、そのなかでおのずと独自の色が出てくると思うし」(ヒョク:以下同)。

 彼が言うように、ヒョゴの音楽はロック、ファンク、AOR、R&B、ソウル、ヒップホップなどの要素が混ざっており、曲ごとのタイプも多様。そこが彼らのおもしろいところなのだが、特に際立っているのがダンサブルでファンキーな曲だろう。たとえば『20』に収録の“Lonely”は、グルーヴィーなベースやリズミックなエレピを軸としたミディアム・ファンク・チューン。『22』の“Settled Down”も、弾けるリズムとメロウなファルセット・ヴォイスが、クールで妖しげなムードを醸し出す。さらには“Comes and Goes”の無駄を削ぎ落としたファンキーなグルーヴなどには、日本で言うところのシティー・ポップやAOR的なテイストが感じられる。

 「ダンサブルな音楽はもちろん好きです。でも〈ダンサブル〉といってもいろいろあって、すごく盛り上がって踊る曲があれば、ジャンプしてしまうような曲、あるいはちょっと身体を揺らすような曲もある。僕らの場合、ちょっと身体を揺らすくらいの……いや、揺らすまでいかないくらいかな、軽く身体を動かすようなものが好きなんです」。

  勢いで聴き手を踊らせるようなものではなく、自然と腰を揺らしてしまうようなグルーヴはヒョゴの大きな魅力だ。そうした彼らの指向は、例えばSuchmosなど、優れた温故知新のセンスを持つ近年の日本の新世代バンドに通じるものがある。それは同時多発的な現象というべきだろうか。

 「それはあると思いますね。世代論的な話になりますけど、僕らの世代は子供の頃からインターネットがあって、過去の良質の音楽やパフォーマンスを身近に接することができた。その頃から聴いていたいろんな音楽がミックスされて、新しい音楽が作られていって、そのスピードも速くなってきていると思うんです。だから日本や韓国に限らず、欧米でも、音楽の作り方の流れが変わってきている気がしますね」。

hyukoh 『22』 HIGHGRND/トイズファクトリー(2016)

 ちなみに現時点は、彼らは『23』と題された最新アルバムの制作途中。11月には『20』『22』の日本盤がリリースされ、3度目の来日も決定している。新作と合わせて楽しみに待ちたい。

 「新作は、いままで僕らが表現してきたものに、ひとつ終止符を打つようなアルバムになるんじゃないかと思います。僕らのアルバムは『20』『22』という数字に表れているように、その時に感じたこと、空虚感だったり不安だったりを表現してきたんです。でも『23』には、それまでにはなかったような感情も表しているし、ターニング・ポイント的なアルバムになるかもしれないです」。