民族音楽もK-POPも〈ワールドミュージック〉の棚にCDが押し込まれていた時代も今は昔、近年、アジア各地のポップミュージックが日本で注目されるようになりました。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、〈SUMMER SONIC〉を中心にフェスの出演者にもアジアのアーティストが増えています。
そんななかタワーレコードは、渋谷店が〈台湾音市〉〈香港音市〉といったライブイベントを積極的に開催、7Fのアジア音楽特設コーナーを拡張リニューアルし、〈KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~〉キャンペーンを実施するなど紹介に力を入れています。そこで今回は、タワレコ各店のスタッフによるアジア音楽の推薦盤をお届け。ポップ/ロックを中心に多様なジャンルの作品が集まっています。ここからアジア音楽を掘ってみてはいかがでしょうか? *Mikiki編集部
熊谷 祥(東浦店)
ギターポップバンドで活躍したバビと女性シンガーのゲピによる韓国男女デュオ・ポップグループ秋休みの2020年リリース作『世界はハンカチ』。男女デュオということで世間一般が想像するK-POPサウンドはここには微塵もない。あるのは素朴でお日様がぽかぽか照らしてくれるよく晴れた昼下がりを思わせる優しいサウンド。
彼らを知ったのはプロダクション・デシネがリリースする作品にはまっていた頃で2015年の『3番目の季節』が初体験だった。どこか80~90年代の日本の歌謡曲のような雰囲気を感じさせながら、日本にはない大陸的な音や風景に魅力を感じて愛聴していた。
本作はレコードでA面の①からゲピの優しいボーカルがすっと心の中に入ってくる。田舎の木造の小さな小学校の風景を想像させるA②やボッサ調のA③。日本人の自分からすると少し中華っぽい始まり方をするB①など懐かしさと新鮮さが折り重なって耳に入ってくる。Kiroroや初期My Little Lover、懐かしいコンピだが『Beautiful Songs〜ココロ デ キク ウタ〜』とかが好きな方にはオススメですね。
具嶋美保子(福岡パルコ店)

2組ともコーチェラに出演するなどその実力は海外で証明済。韓国のロックバンド、HYUKOHはUKロックとSuchmosを足して割ったようなサウンドを展開、『20』『22』『23』はタワレコでも実績があり。対するSunset Rollercoaster(落日飛車)は台湾のバンド。アーバンでサイケでメロウな音楽性を展開。その2組がコラボしたアルバムなので、当たり前に良いです。気持ちいいです。〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉のGREEN STAGEで観た⑤“Young Man”の多幸感たるやもう、本当に感動もの。この曲のMVも素敵なのでぜひチェックを!
伊藤博明(明石店)
トップシェルフからリリース、シンガポールのインディーロックバンドSubsonic Eyeによる5thアルバム。シンガポールにもアツい音楽シーンあり! Sobs、motifsなど、インディーロック、ドリームポップ、シューゲイザーの優れたバンドがディグればディグるほど見つかる。
そんな中でもSubsonic Eyeは特筆すべきバンドのひとつ。シューゲイザーといえば、いわゆる〈マイブラ奏法〉と呼ばれるような、ギターのアームを用いながらコードストロークを行うことで、ギターの音をベンドさせたり、轟音で文字通りフロアを〈揺らし〉たり、〈揺れ〉というものに一家言あるもの。
このバンドはその〈揺れ〉を歌で表現している。マレー語訛りの英語で、マレー語特有のピッチ感をボーカルのメロディラインに援用しており、歌自体をベンドしているのである。それによって、轟音、耽美的なコーラス、ギターのアーミング、エフェクターによるトーンの揺れに収束しがちなジャンルの閉塞感を打ち破ることに成功している。インディーロックのフォーマットにありながら、どこまでもエキゾチックでワクワクさせてくれるバンドである。

渡邉リサ(渋谷店)

元UNIQ、X1で活躍したのチョ・スンヨンのソロ名義。マルチな才能の持ち主、オールラウンダーシンガーソングライターWOODZの5枚目のミニアルバム。
今作のリリースは2023年だが、2024年に出演した韓国の人気音楽番組での〈軍服Drowning〉の熱唱が多くの人々の心に響き、韓国のチャート逆走となった楽曲”Drowning”を収録。”Drowning”はWOODZ自身が作詞作曲、愛する者が去って以降、悲しみの雨に溺れる心を繊細でありながらも力強く表現。消え入りそうな冒頭から、サビでの力強さには心が震えます。
もう一曲オススメしたい楽曲は“Journey”。バンドサウンドがさわやかな旅立ちの歌。自身の心と対峙した心に刺さる歌詞、そしてWOODZの繊細ながらも力強い歌声、メロディ、全てがステキです。
是非アイドルという枠にとらわれず、アーティストWOODZに出会っていただきたいです!

韓国の音源女王、赤頬思春期(볼빨간사춘기/BOL4)の1stミニアルバム。
音源女王と呼ばれる彼女たちは元々高校の同級生のアン・ユジンとウ・ジユンの2人組(2020年にウ・ジユンが脱退し現在はアン・ユジンのソロとなっています)。
今作のオススメはなんといっても名曲“私の思春期へ(나의 사춘기에게/To My Youth)”が収録されていることです! 誰もが通った、なにものでもない自分に絶望し息が心が苦しくなる心情、思春期に抱く思いが描かれている歌詞と美しいメロディと表現力が相まって、何度聴いても涙があふれてしまいます。そして、もう1曲“サムになろうよ(썸 탈꺼야/Some)”は、友達以上恋人未満の片思いをする女の子の気持ちを歌った楽曲です。
ユニークな歌詞の世界、おしゃれでポップな音楽がいっぱいつまった1枚。ぜひあかほほちゃんの世界に浸ってください😊
吉田凪沙(アリオ川口店)
韓国国内だけでなく、台湾、日本、インドネシアなど海外でも話題沸騰中! バイオリン、ボーカル兼ギター、ベース、ドラムで構成された韓国の4人組バンドLUCY。
2019年、JTBCで放送されたバンドサバイバルオーディション番組「Superband(슈퍼밴드)」で誕生。番組内で準優勝と好成績を残すが、当時ボーカルを担当していたメンバーは元所属バンドに戻ることになる。後任として番組に参加していた、チェ・サンヨプがボーカル・ギター担当として合流。2020年5月20日にシングル『DEAR.』でデビュー。
2024年8月14日に5枚目のミニアルバム『FROM.』をリリース。ベース・プロデュース担当のチョ・ウォンサンが作詞作曲した4曲、ドラム担当のシン・グァンイルが作詞作曲した1曲を含む、合計5曲で構成されたミニアルバム。5曲目に収録された“Falling Flower”は、デビュー曲“Flowering”の後続曲。美しいバイオリンとピアノの旋律。後半に行くにつれダイナミックになり、これまで歩んできた4人の旅を振り返るような情景や、舞い落ちる花びらが連想される。ファンにとって涙なしには語れない曲でもあり、初めて聴く人にとっても深く印象に残る曲。
2024年5月にワールドツアーで初来日、2024年8月にワールドツアーのアンコールライブを開催。今年7月には日本で3度目となるコンサートを開催。大成功を収める。
ウォンサンがLUCYのほとんどの作詞作曲を担当。LUCYが奏でる音楽は、日本人に聴き馴染みあるアニメソングやボカロ、J-POP寄りの音楽。バイオリンが取り入れられたバンドも珍しく、多様なジャンルを弾き、歌いこなすLUCYにぜひ注目してほしい。
今大注目の韓国の4人組バンドDragon Pony。キャッチフレーズは〈不完全な少年たちの熱い音楽〉。デビュー前から数々の路上ライブやライブハウスで経験を積み、2024年9月26日にデビュー。デビュー後は韓国、マレーシア、台湾各地で開催されるフェスティバルへの出演や、新曲のリリース、韓国国内での単独コンサートの開催など、引っ張りだこな彼らを見かけない日はない。今年5月には、台湾で初の海外での単独コンサートを開催。満員御礼、チケットは即完売。海外でも着々と人気を集めている。
2025年3月19日、2nd EP『Not Out』をリリース。今作のタイトル曲である“Not Out”は、夢に向かって挑戦する若者たちの姿を表現。失敗と絶望の中、〈まだ終わっていない!〉と諦めない強い意志で突き進めば、夢を叶えることができるといった希望と情熱が込められた曲。エネルギッシュで力強いサウンドとアン・テギュの歌声が心に響くこと間違いないだろう。ロックからバラードまで、満遍なく音楽ジャンルを楽しむことができる。
また、2025年7月29日にはデジタルシングル“地球少年”をリリース。デビュー前の練習生時代に作られた曲。闇の中で互いの光となり、傷を乗り越えて成長する4人の姿が描かれたメッセージ性のある同曲にもぜひ注目してほしい。
メンバー4人は幼い頃から様々な楽器に触れ、それぞれが優れた実力の持ち主。楽曲制作や自身の曲のプロデュースに携わるなど、音楽に対する情熱が溢れるバンド。今年、デビューから1年を迎える。若々しくエネルギッシュなサウンドに、新鮮さと青春を感じ取ることができるDragon Ponyの音楽をぜひ楽しんでほしい。

石黒大貴(渋谷店)
2009年にデビューした台湾の3人組ロックバンド。サマソニや単独公演など日本で何度もライブを行っており、過去には日本盤のCDも発売されていました。ポップでファンキーなサウンドは日本の音楽ファンにも馴染みやすく、幅広く受け入れられるはず。
2022年発売の最新作である今作も、そんな宇宙人の魅力が詰まった傑作。ポップなメロディにシンプルなバンド編成だからこそできる、各楽器が映えるアンサンブルが最高。星野源やヒゲダンが好きな人にもオススメしたい完璧なポップス!!
オススメは②③④⑥⑫
台湾から現れた超新星! インディーポップやオルタナティブR&Bの要素を昇華させたサウンドスケープ。魅力的な歌声とメロディーが、独自の世界観を彩る。
日本、世界でも注目を集めること必至の台北出身の新鋭アーティスト。初のアルバムである今作は彼女の才能をひしひしと感じられる記念碑的作品。可愛らしい佇まいと歌声にもかかわらず、どこかヒリヒリとした感覚が独特。トラックも多彩かつクセになる。聴けば聴くほど引き込まれる異次元の才能。宇多田ヒカル~ビリー・アイリッシュを繋ぐような大注目の存在。絶対今から注目しておいたほうがいいですよ。
オススメ⑫③④⑤⑩⑪

早瀬 翔(仙台パルコ店)
韓国インディーシーンの新たな旗手、Meaningful Stoneによる2ndアルバム『Angel Interview』は、単なるジャンルの横断ではなく、その全体の構成においてひとつの物語性を描き切った稀有な作品である。キム・ジミンのボーカルは、韓国語特有の丸みを帯びた発音が織りなす柔らかな響きによって、楽曲の質感をパーソナルかつ温かみのあるものへと昇華させている。
オープニングの“Supernova”では、内省的なオルタナティブフォークで静かに幕を開け、続く“Mikael”では空間的な浮遊感と抑制されたシューゲイザーサウンドが重なり合う。そこから“I open the window instead of the closed door”や“Red car”では、一転して堂々たる轟音が全体を包み込み、アルバムは徐々に外向的なエネルギーを帯びていく。
終盤の“Esc”では、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを思わせるヘヴィなリフとラップ調のフロウに、スクラッチ音が鋭いアクセントを加え、シームレスに繋がる“_()_”ではクラブミュージック的な高揚感が展開され、サウンドは都市的な熱気を帯びながらクライマックスへと向かう。
フォークからシューゲイザー、ラップ、クラブミュージックまでジャンルを自在に横断しつつ、計算されたノイズは単に音数が多いという訳ではなく、音の質感を高め、すべてをポップミュージックとしてまとめ上げた。その統合力は多くの音楽ファンが知る価値のある作品である。
本作は、ジャンルを超えた創造性と、アルバムという形式の魅力を改めて証明する一枚である。
前作『To See The Next Part Of The Dream』で、シューゲイザーとエモを巧みに融合し、日本映画やアニメの台詞のサンプリングを取り入れたParannoulは、韓国から瞬く間に世界中のシューゲイザーリスナー、さらにはインディーファンまでも魅了した。あの2021年を代表する名盤から2年。期待は否応なく高まり、同時に〈前作を超えられるのか〉という不安もあった。しかし、その心配は再生ボタンを押した瞬間に霧散する。
Parannoulは進化した。『After The Magic』でParannoulは、より広がりと奥行きを持ったサウンドへと踏み出したのだ。
本作は、前作の核であったシューゲイザーとエモの質感をそのまま引き継ぎつつ、ストリングスを導入し、壮大なスケールで描き出している。これまでコラボレーションで垣間見せたポテンシャルをさらに押し広げ、予想もつかないサウンドスケープを創り上げた。美しい旋律とポップス的な開放感、そして決定的な場面で鳴り響く歪んだギター。その瞬間、感情は一気に爆発し、涙腺を刺激する。
また、女性コーラスの積極的な導入によって、前作のアンダーグラウンドで閉鎖的なトーンから一転、今作はより外向的で、世界と共鳴するオルタナティブな輝きを放つ。振り切ったサウンドは、Parannoulの新たな可能性を示している。
約1時間に及ぶ本作を聴き終えたとき、リスナーが見ている世界は少し変わっているだろう。すべてが儚く、やがて壊れる運命にあったとしても、Parannoulはその刹那をキラキラと輝かせながら、世界と共鳴する音を鳴らし続ける。素性を明かさぬ匿名性の奥で、Parannoulは確かに語りかけている。
タイトルに冠された〈魔法〉の言葉どおり、この作品は聴き手の世界に魔法をかける。それも、アルバムが終わった後にさえ残り続けるほど強力な魔法を。

小畑雄巨(神戸店)
〈韓国ロックの新しい顔〉と評され、インディーバンドとしては異例の人気を博したSE SO NEON。そのフロント、ソユンによるキャリア最高傑作と言えるソロ2作目。
前作で感じられた〈バンドとソロ〉〈ロックなイメージと自身が志向するエレクトロやR&B〉の狭間での葛藤や試行錯誤は完全に払拭。その意思は冒頭の意表を突く90年代ワープ〜IDM風インストに表れており、まさに固定されたイメージからの脱却を告げているかのようだ。
その後は90〜00年代以降のR&Bを底流に、曲ごとに音楽的テーマを設け、ネオソウル、AOR、トリップホップ、エレクトロポップなどを丁寧に深掘りしている。そしてそこに彼女ならではのエッセンスと、表現の幅を大きく広げ一層艶やかになった低音ボイスが融合することで、見事に〈So!YoON!の音楽〉として結実しているのだ。
韓国の伝統楽器と、エレキやドラムを組み合わせたポストロックサウンドで異彩を放つJAMBINAIが、2019年に発表した目下最新の3作目。
本作は、轟音シューゲイザー的ブラックメタルの没入感を、伝統楽器とポストロック的構造で置き換えたかのような作品となっている。日本の篳篥(ひちりき)や琴、胡弓に似た伝統楽器にディストーションなどのエフェクトを大胆にかませ、不思議な音色と轟音を生み出すその手法は健在だが、前作までの原始的な衝動性や暴力性は精緻にコントロールされ、各楽器はより空間や間を意識した演奏へと変化。
バンドアンサンブルと音響面が重視され、アンビエント的要素やトゥールを想起させるプログレッシブ性を取り込むことで、かつてなく壮大でドラマティック、そして神秘的な音の波を作り上げている。
活動初期の自主制作時代から、それまでのフィリピン音楽史では異例の世界的な注目を集め、今年はコーチェラへの出演も果たした国内インディーシーンの憧れ、Eyedress。そんな彼がプレフューズ73の後押しで契約したレックス・レコーズより2020年に発表した通算4作目が本作だ。
ドラムマシンが打つパンキッシュなビートと淡いサイケデリアが作り出す音世界は、ザ・キュアーといった80年代のポストパンク~ニューウェーブやネオアコを想起させる。その一方で、ドリーミーな質感はどこか〈ストリートで見る夢〉のように親密で刹那的で、ベッドルーム仕込みのざらついたローファイサウンドが繊細で複雑な感情を生々しく浮かび上がらせている。
Spotifyで10億を超える再生回数を記録した“Jealous”を収録し、彼を世界的な成功へと導いた代表作にしてアジアンインディーの名盤。
インドネシアって昔から伝統音楽と何かのクロスオーバーが盛んで、感覚的によくわからんぶっ飛び方をした音楽をぽんぽん産み出してきた国なんだが、このThe Panturasもまさにその系譜。
現行バンドながらザ・ベンチャーズや60年代のサーフロックをベースにしているのは、まぁ渋いセンスだなといった感じだが、やはり伝統音楽をぶち込んできて、本作もジャワ島西部スンダの歌唱や伝統へのオマージュがテーマになっている。で、さらにエコバニやザ・スミスっぽいギターやらスカやらディスコやら環境音楽やら、他ジャンルもてんこ盛りのカオス寸前。終始驚きしかない。

夜や夜闇をテーマに、それらが浮かび上がらせる恋や孤独といった感情を内省的に綴った、アルージ・アフタブのメジャーデビュー作。余白や音の余韻を大切に、感情を静かに積み重ねていくような歌い口は瞑想的で、深く倍音豊かな歌声はまるで夜の安らぎを閉じ込めたようだ。
パキスタンの伝統音楽にECM的ジャズ、ニューエイジ、アンビエントを溶け込ませ、ギターやストリングス、南アジアの楽器が最小限の音数で神秘的な音像を形づくる。コーシャス・クレイ、ムーア・マザー、ヴィジェイ・アイヤーら精鋭が、ジャンルの垣根を越え、繊細にアルージの世界観を描き出している点も秀逸。
様々な方面から絶賛され、2024年を代表する1枚となった傑作。
田中優軌(池袋店)
Gym and Swimはタイ・バンコク出身の5人組バンド。〈スペースシャワー列伝 ASIA TOUR 2017〉に出演するなど、日本での支持も厚い。
今年5月、9年の時を経て『SeaSick』のLPが発売された。9年経った今聴いても彼らの音楽は新しい。アルバム1枚、楽曲1曲を通じて、リスナーを楽しませるギミックが多数仕掛けられている。
ギターのカッティングや音作りは80年代の日本のシティポップを彷彿させ、ギターだけではなく全楽器の音数のバランスが心地よい。また、コーラスの作り込みも素晴らしい。男性ボーカルのチャルームに絡む、ドラムのマットミーの女性コーラスが特徴的である。特に3曲目の“Bunny House”はサビで合唱のように他メンバーの複数の声が重なる。
任(渋谷店)
中国・山東省済南発の新世代ロックバンド。
このアルバムを知ったきっかけは、渋谷店で海外のお客様からの問い合わせが多く、発売と同時に即完売となったことでした。実際にじっくり聴いてみると、その繊細な構成に圧倒され、誰にも真似できない独自のサウンドと抜群な表現力に魅了されました。
では、なぜここまで支持されているのでしょうか。
私の考えでは、彼らは現代ロックを代表する万能ユースホステル(万能青年旅店)、そしてその影響を受け大ヒットしているNo Party For Cao Dong(草東沒有派對)と同じ方向性を持つバンドです。この3つのバンドの共通点は、今の世代の人々の心を掴み、思わず身体が動き出すようなグルーヴィなロックと、胸が張り裂けそうなほど切実に生活を描き出す歌詞です。
しかし椿(The Tree Of Heaven)はさらに大胆に〈中国戯曲〉の要素を取り込み、より豊かな表現を実現しています。70〜80年代のロックを好むファンにも響きつつ、伝統的なロックとは異なる新鮮さを感じさせます。暗色系のサウンド、力強いエネルギー、哲学的で奥深い歌詞、そして民謡や伝統楽器の響きが重なり、アルバム全体に独特の味わいを加えています。
アルバム全編はまるでピンク・フロイドの『The Wall』のような〈演劇性〉を持ち、音楽以上のDramaを体験させてくれます。圧倒的なドラム、中国伝統楽器・嗩吶の鋭い響き、そしてボーカルの魂を揺さぶる叫びが胸を打ち、全体は一本の映画のように流れていきます。
その中に①“引子(Intro)”、⑦“嫁殇(Marry And Mourn)”が必聴で、代表曲⑨“野草(Weeds)”の高揚感あふれるサビと力強い歌声が、壮大なフィナーレを飾ります。
アジア音楽といえば、ぜひ一度は聴いてほしい圧巻の一枚です。
イチャノク(池袋店)
今回紹介する韓国のアーティストは、チャン・ギハ。彼の魅力の一つは、まるで話すように歌うスタイルだ。歌っているのか、話しているのかよく分からない。曖昧で、奇妙な感じだ。彼は歌手であるかのように見え、また演劇の俳優のようにも思える。いや、彼はただ独り言を呟いている隣のおじさんのようにも感じられる。
彼はジャンルの境界を越えて、自分だけの色を作り上げていった。彼が選んだ音楽スタイルは、伝統的な音楽要素と現代的なアプローチを組み合わせた独特なハイブリッドスタイルを示している。“それは君の考えでしょ”という曲ではパンク的要素を取り入れたロックンロールスタイルが展開され、また“俺たち 今会おう”ではトロットの影響を受けつつも現代的な感覚を大衆に提供してきた。彼がどんなジャンルの音楽をやっているのかを決めるのはとても難しい。強いて言うならインディーロック、オルタナティブロック、フォーク、パンクと表現できるが、このジャンルでは彼の音楽を表現しきれない。なぜなら、彼自身がジャンルだからだ。
彼の数えきれない魅力の一つは歌詞。彼は日常の些細な出来事や人間関係を歌詞でうまく表現する。彼の歌詞を見ていると、思わず笑ってしまうことがよくある。しかし、そのユーモアの裏には真摯で哲学的な要素がある。
“それは君の考えでしょ”では、社会の問題を鋭く指摘している。韓国には〈オジラプ〉という文化がある。〈この年齢になったら就職しなきゃ、就職したら結婚しなきゃ〉といった比較文化に、韓国人はかなり疲れている。彼はこの問題に曲ですっきりと言い放つ。〈君が僕として生きてみたか? 違うだろ。だから、君は君の道を行けばいい〉と。魅力的なメロディーに加えて、人々がしっかりと共感できる歌詞を彼はしっかりと書いている。
彼と似たような歌手が誰かと言われても、それに答えるのは難しいだろう。なぜなら、彼自身がジャンルだからだ。
天野龍太郎(Mikiki編集部)
以前からずっと店頭で推されてるなー、と思っていた李志(リージー)の作品。実際にタワーレコードですごく売れているそうです。
〈中国の近代ロック史にその名を刻むシンガーソングライター〉と紹介される李志は、同地で若者を中心に大人気なカリスマ。中国での支持の厚さは社会や日々の生活、鬱屈や挫折といった内省を表現した歌詞(当局に禁止されているものもあるとか)でしょうけれど、センチメンタルでノスタルジックなメロディを歌う声、シンプルなフォークロックサウンドは、たとえ言葉がわからなくても胸に迫ってくるものです。
そんな彼のベストセラー作品が、日本を拠点に中国文化を発信しているレーベルPANDAが編んだこのベストアルバム。ライブ盤との2枚組で、特にLPがベストセラーで、入門編にぴったりな作品です。
韓国R&Bの名盤としてとても評価が高いSUMIN & slomの『MINISERIES』。2024年に第2弾が発表され、2025年にはPヴァインが本作をCDとLPでリリース、未だに評価を高めつづけています。日本の新世代バンドHALLEY(ボーカリストのてひょんさんは韓国ルーツ)に取材したときも、メンバーが影響が受けたことを明かしていました。
さてこのアルバム、slomのエレクトロニックなプロダクションとSUMIN(STUTSやSIRUPなどとの共演でもおなじみ)の巧みなボーカルが、高い洗練度で溶け合っていて素晴らしいんですよね。曲によってヒップホップやダンスミュージックにもアプローチしていて、独自の自由なジャンルのクロスオーバーが聴ける傑作。〈R&B〉と一括りにできない多彩さで、アメリカにも日本にもない個性的な音楽だと思います。
2022年のお気に入りのアルバムの一つが、シンガポールのバンドSobsの『Air Guitar』でした(For Tracy Hydeの最後のアルバム『Hotel Insomnia』と交互によく聴いていたのが懐かしい)。ギターポップやインディポップが好きなリスナーには絶対に聴いてほしい名盤です。
セリーヌ・オータムのボーカルと、あまりにもスウィートでハートを鷲掴みにされるメロディが本当に素晴らしく、耳を持っていかれます。そして、ギターのフレーズと音作りの妙にも惚れ惚れとしてしまう。ハイパーポップに接近した“Friday Night”が好きすぎて、一時期ずっとリピートして聴いていました。
ほかにも台湾のネオソウルバンド問題總部 It’s Your Faultが大好きで、ボーカリスト丁佳慧のソロ作品も愛聴しています。タワーレコードではCDの取り扱いがないのが残念ですが、過去にTOWER DOORSがインタビューした記事があるのでぜひチェックを。中国や韓国のヒップホップでも好きな作品がいっぱい。紹介しきれませんね。
なおMikikiは今年、台湾R&BのYufu、中国フォークの宋冬野など様々なアジアのアーティストの作品を紹介しています。下記の関連記事もあわせてご覧ください。
INFORMATION
KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~
タワーレコード渋谷店は移転30周年を記念して〈アジア音楽の特設コーナー〉を大幅にリニューアルし、〈KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~〉として展開。古家正亨などの著名人を招いたトークショーなど、渋谷店限定企画を実施します。
渋谷店が神南に移転してから30周年を記念し、今年3月にスタートした〈アジア音楽の特設コーナー〉を2025年8月30日に大幅リニューアルし、〈KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~〉としてリブートさせます。ラック数は3倍、さらに在庫数2,000枚以上を新規で取り扱い開始と、日本最大のアジア音楽専門フロアとして生まれ変わります。より便利で快適なショッピング体験を提供するため、インタラクティブなディスプレイやプロモーションエリア、内装も刷新。アジア音楽の魅力を最大限に引き出す空間をご用意します。
また、3月にもおこなった各種キャンペーンの第2弾も実施。古家正亨を中心とするゲストを迎えたトークショーや、ライブ配信およびチケット販売の大手プラットフォームmahocastと協力したインディーズバンドのスペシャルライブ、渋谷店限定の商品販売などでアジア音楽を盛り上げていきます。
〈KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~〉は、〈音楽でアジアを知る〉をコンセプトに国や言葉の壁を越え、リズムやメロディから見えてくる景色を五感で楽しんでほしいという思いからスタートしました。ここで出会ったお気に入りの曲が次の旅先になるかもしれない。プレイリストを聴くたびに新しい街、新しい声、新しい物語に出会える――そんな〈音楽で旅するアジア体験〉をお届けします。
■KNOW MUSIC KNOW ASIAトークショー
アジア音楽に精通する専門家やアーティストをゲストにお迎えし、今ホットなシーンを語っていただくトークショーを不定期企画として実施します。MCとして数々のラジオや番組でMCを務める古家正亨が登壇。初回はゲストにインディーズ音楽シーンにおいて中心的な役割を果たすレーベル、ミラーボールミュージックの創業者、現ディオーションミュージック代表のイ・チャン・ヒと、ABTBのベーシスト、チャン・ヒョクジョをお迎えし、韓国の音楽を深堀りします。
■TOWER RECORDS SHIBUYA × mahocast
場所:タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
開催日:2025年10月12日(日)
1部集合時間:15:30/2部集合時間:18:30
集合場所:1F階段前
1部開演時間:16:00/2部開演時間:19:00
出演:Shin In Ryu
イベント内容:ミニライブ&サイン会
対象商品:
・アーティスト名:Shin In Ryu
・タイトル:Shining Strike(KOR)<イベント対象商品>
※2025年6月2日(月)発売の商品は対象外です
参加方法:対象商品入荷時よりタワーレコード渋谷店7Fにて対象商品ご購入の方に先着で整理番号付き入場券をおひとり様1会計1枚、サイン会参加券をご購入枚数分お渡しします。なお、サインを入れるのはご購入いただいたCDのみです。
■渋谷限定スペシャルプライス
渋谷限定で一部商品をディスカウントして販売。人気商品をお得にゲットできるチャンスです。
■TOWER RECORDS SHIBUYAレコメンド
タワーレコード渋谷店スタッフが自信をもっておすすめするCDを店頭でパワープッシュする企画。なかには渋谷店でしか手に入らない貴重なCDもあります。
■Big Romantic Records渋谷限定販売開始
東京と台北を拠点に世界の浪漫溢れる音楽を紹介するレーベルBig Romantic Recordsの一部タイトルを渋谷店限定で販売。今チェックすべき台湾のアーティストの作品を各種取り揃えます。
■ロゴステッカーキャンペーン
2025年7月より開催していた韓国アーティスト5組のロゴステッカーキャンペーンの第2弾を開催します。ロゴステッカーキャンペーンの第1弾はこちら(https://towershibuya.jp/news/2025/7/4/215826)。
第2弾対象アーティスト:
・Broccoli, you too?
・no reply
・KIK
・TOUCHED
・SURL
特典:スマホサイズロゴステッカー(全5種)
対象商品:タワーレコード渋谷店にて対象アーティストの音楽作品(CD/LP)をご購入の方に先着でスマホサイズロゴステッカーをお渡しします。
配布期間:対象商品入荷時~予定数量に達し次第配布終了
※対象商品1枚のご購入につき、特典を1枚差し上げます
※ご購入商品と同アーティストのスマホサイズロゴステッカーをお渡しいたします
※特典は数に限りがあり、予定数に達し次第配布終了となります
■記念限定CD:Andr『shhh, it’s under my bed』販売
台湾の有名な音楽賞である〈Golden Melody Awards(金曲奨)〉にて〈Best Newcomer(最優秀新人)〉部門にノミネートされた実力を持つシンガーソングライターAndrの1stアルバム『shhh, it’s under my bed』を日本で初流通。さらに同作が、タワーレコード渋谷店30周年を記念して限定の帯付きCDとして販売されることが決定しました。
【商品情報】
Andr『shhh, it’s under my bed』
販売開始日:2025年9月14日(日)
品番:FCCD420309
価格:6,300円(税込)
■フリーサンプラー募集
7Fのアジアコーナーにフリープロモーションコーナーが登場。CD-RやQRコード、ステッカーやライブのフリーペーパーなど、宣伝できるものは何でもOKです。直接店頭への持ち込み、海外からの発送も可能です。設置次第、タワーレコード渋谷店の公式X (@TOWER_Shibuya)、Instagramアカウント(@tower_shibuya/@tower_shibuya_tc)でも宣伝します。国内アーティストの方もアジアへプロモーションできる機会なので、〈自分たちの曲を聴いてほしい! 知ってほしい!〉という方のご参加をお待ちしています。
【発送先】
住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-22-14 タワーレコード渋谷店 7F アジア担当
TEL:03-3496-3661
【発送方法】
プロモーションエリアに置きたいものをタワーレコード渋谷店7F宛てに送ってください。その際にアーティスト名やアカウント名がわかるものを同梱してください。
※送料はご自身のご負担いただきます。着払いはお受けできません
※自由に無料でお持ち帰りいただけるものとしてください
※当店にて不適切と判断したものは設置できません
※品名には〈Gift(ギフト)〉、もしくは〈Free Sample(フリーサンプル)〉と記載をお願いいたします
■ハッシュタグキャンペーン
タワーレコード渋谷店のSNSアカウント(Instagram/Threads)をフォローし、ハッシュタグ〈#KNOWMUSICKNOWASIA〉を付けて投稿した方に記念ノベルティの缶バッジをお渡しします。どの絵柄が出るかはお楽しみ。一部当たりとして限定の大判ステッカー、ミニ巾着があります。
【参加方法】
2025年9月1日(月)以降、タワーレコード渋谷店のInstagram(@tower_shibuya/@tower_shibuya_tc)、もしくはThreadsアカウント(@tower_shibuya)をフォロー、〈#KNOWMUSICKNOWASIA〉のハッシュタグを付けて店内の様子や購入した商品などを投稿した画面を7Fインフォメーションでご提示いただいた方にガチャガチャを回せるコインを1枚お渡しします。7Fアジアコーナー内に設置されているガチャガチャを回すと記念缶バッジが1つもらえます。
※お1人様お1つとさせていただきます
※コインは当日限り、7Fに設置されている専用のガチャガチャのみ有効です。他の筐体には使用できません
※コインのお持ち帰りはご遠慮ください
※なくなり次第終了、または予告なく終了する可能性があります
詳細:https://towershibuya.jp/news/2025/8/26/218197
タワーレコード渋谷店
営業時間:11:00~22:00
休業日:不定休
アクセス:JR渋谷駅ハチ公口を出て交差点を渡り、徒歩3分
駐車場:なし
電話:03-3496-3661(TOWER RECORDS CAFE:03-3496-3672)
住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-22-14
※休業日/営業時間は変更する場合がございます。詳しくは店舗へお問合せください
オフィシャルサイト:https://towershibuya.jp/

















