民族音楽もK-POPも〈ワールドミュージック〉の棚にCDが押し込まれていた時代も今は昔、近年、アジア各地のポップミュージックが日本で注目されるようになりました。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、〈SUMMER SONIC〉を中心にフェスの出演者にもアジアのアーティストが増えています。
そんななかタワーレコードは、渋谷店が〈台湾音市〉〈香港音市〉といったライブイベントを積極的に開催、7Fのアジア音楽特設コーナーを拡張リニューアルし、〈KNOW MUSIC KNOW ASIA ~アジア音楽旅~〉キャンペーンを実施するなど紹介に力を入れています。そこで今回は、タワレコ各店のスタッフによるアジア音楽の推薦盤をお届け。ポップ/ロックを中心に多様なジャンルの作品が集まっています。ここからアジア音楽を掘ってみてはいかがでしょうか? *Mikiki編集部
熊谷 祥(東浦店)
ギターポップバンドで活躍したバビと女性シンガーのゲピによる韓国男女デュオ・ポップグループ秋休みの2020年リリース作『世界はハンカチ』。男女デュオということで世間一般が想像するK-POPサウンドはここには微塵もない。あるのは素朴でお日様がぽかぽか照らしてくれるよく晴れた昼下がりを思わせる優しいサウンド。
彼らを知ったのはプロダクション・デシネがリリースする作品にはまっていた頃で2015年の『3番目の季節』が初体験だった。どこか80~90年代の日本の歌謡曲のような雰囲気を感じさせながら、日本にはない大陸的な音や風景に魅力を感じて愛聴していた。
本作はレコードでA面の①からゲピの優しいボーカルがすっと心の中に入ってくる。田舎の木造の小さな小学校の風景を想像させるA②やボッサ調のA③。日本人の自分からすると少し中華っぽい始まり方をするB①など懐かしさと新鮮さが折り重なって耳に入ってくる。Kiroroや初期My Little Lover、懐かしいコンピだが『Beautiful Songs〜ココロ デ キク ウタ〜』とかが好きな方にはオススメですね。
具嶋美保子(福岡パルコ店)

2組ともコーチェラに出演するなどその実力は海外で証明済。韓国のロックバンド、HYUKOHはUKロックとSuchmosを足して割ったようなサウンドを展開、『20』『22』『23』はタワレコでも実績があり。対するSunset Rollercoaster(落日飛車)は台湾のバンド。アーバンでサイケでメロウな音楽性を展開。その2組がコラボしたアルバムなので、当たり前に良いです。気持ちいいです。〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉のGREEN STAGEで観た⑤“Young Man”の多幸感たるやもう、本当に感動もの。この曲のMVも素敵なのでぜひチェックを!
伊藤博明(明石店)
トップシェルフからリリース、シンガポールのインディーロックバンドSubsonic Eyeによる5thアルバム。シンガポールにもアツい音楽シーンあり! Sobs、motifsなど、インディーロック、ドリームポップ、シューゲイザーの優れたバンドがディグればディグるほど見つかる。
そんな中でもSubsonic Eyeは特筆すべきバンドのひとつ。シューゲイザーといえば、いわゆる〈マイブラ奏法〉と呼ばれるような、ギターのアームを用いながらコードストロークを行うことで、ギターの音をベンドさせたり、轟音で文字通りフロアを〈揺らし〉たり、〈揺れ〉というものに一家言あるもの。
このバンドはその〈揺れ〉を歌で表現している。マレー語訛りの英語で、マレー語特有のピッチ感をボーカルのメロディラインに援用しており、歌自体をベンドしているのである。それによって、轟音、耽美的なコーラス、ギターのアーミング、エフェクターによるトーンの揺れに収束しがちなジャンルの閉塞感を打ち破ることに成功している。インディーロックのフォーマットにありながら、どこまでもエキゾチックでワクワクさせてくれるバンドである。