LAだからこそできることが集結した新作『アップライジング』
カマシ・ワシントンの『ジ・エピック』やケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』に参加した他、ローリン・ヒルのバンド・メンバーとして音楽監督を務めるなど、八面六臂の活躍を見せるLAのベーシスト、マイルス・モーズリー。ソロ作『アップライジング』はソウルやファンクの要素が色濃く、スライ&ザ・ファミリーストーンを連想させたりもする。どのような音楽が滋養となっているのか、カマシのライヴのために来日した彼に話を聞くと……。
「歌詞の面ではジョニ・ミッチェルやレナード・コーエン、ハーモニクスの面ではオーティス・レディングやテンプテーションズ、ホーンのアレンジはアース、ウインド&ファイアー、ジェームス・ブラウンなどから影響を受けている。それを全部ひっくるめるとこういうサウンドになるんだ」
『アップライジング』はエフェクトをかましたアップライト・ベースを筆頭に、生々しい質感が印象的だ。カマシ・バンドのドラマーで、本作のプロデューサーのトニー・オースティンによれば、「リスナーがすぐそばで演奏を聴いているようなサウンドにしたかった」という。なお、『アップライジング』の参加メンバーは全員LA出身。「LAならではの特徴が出たアルバムだと思う」、とマイルスも言う。
「LAならではの良さは、まずスペースが広いっていうこと。20人プレイヤーが欲しいなっていうアイディアが浮かんだ時、その20人が揃うだけのスタジオがLAならある。しかもアップライト・ベースみたいな大きな楽器でも車で運べて、駐車場もばっちりある。だから、僕もアンプが二台欲しいなとかペダルを増やそうとか、制約なしに発想を広げられるんだ。もうひとつ、LAって映画のスコアとかCMの音楽とか、あらゆることをこなせないとミュージシャンとして生き残っていけない。そういう意味ではジャンルにこだわっていられないし、ここまで高度なことを要求される街もないと思う。皆プロフェッショナルなんだ」(マイルス)
マイルスはそのLAでレイ・ブラウンやジョン・クレイトンに、トニーはビリー・ヒギンズに師事した経歴を持つ。そして今は、カマシやテラス・マーティンも参加するLAのジャズ集団、ウエスト・コースト・ゲットダウンの一員として活躍している。
「『アップライジング』のレコーディングの際にまとめて曲を録音したんだ。だから、ツアーを周ったあとで、ベースとドラムと歌だけで成り立つBFIっていうデュオの作品を出そうと思っている。楽しみに待っていて欲しいよ」(トニー)