存在感と深みを増したフランスの若手No.1シンガー・ソングライター

 空を覆う重たい雲の間からひと筋の光が差し、次第に太陽が現れてくる。ジュリアン・ドレの日本デビュー盤『&~愛の絆~』を聴いていると、音の向こうからそんな光景が見えてくるようだ。

JULIEN DORE &~愛の絆~ RESPECT RECORD(2017)

 「太陽は南に隠れていて、パリにいると見つけるのが難しいんだ」と彼は笑う。2010年のアルバムデビュー以来、端正かつワイルドなルックスと、ヒップホップからの影響をオリジナルに昇華させたミニマムでダンサブルなサウンド、そして表現力豊かなハスキー・ヴォイスで着実に人気を集める。その評価を決定的にした前作『Løve』のツアーでは疲労によるストレスに苦しむこともあったが、故郷の南フランスに向かい、壮大な自然や気の置けない仲間たちに囲まれて過ごすことで克服した。そして、幼少の頃に幾度も訪れた祖母の山小屋で制作したのが本作だ。

 「周辺に多く残る雄大な自然からインスピレーションをもらって、都会にいたら書けなかった曲ができた。そして子どもの頃の想い出がたくさん蘇ってきて、ここが僕のルーツなんだと改めて思ったよ」

 軽やかなサウンドはより研ぎ澄まされ(特に要所を締めるピアノの響きが印象的だ)、艶やかな声には深みが増した。そして大自然と女性や愛する人がシンクロする歌詞とともに、まるで官能的な叙事詩のように聴く者に迫ってくる。

 アルバムのタイトルにも、大きな意味が。

「『&』という記号は、何かと何かを結びつける“絆”を象徴しているんだ。僕とオーディエンスだったり、人間と自然だったり。そしてジャケットは絆の象徴でもあり、鍵穴のようにも見える。向こうに光が見える扉のね。現在が暗い時代だとしたら、その扉を開けて光をもたらすのがアーティストの仕事だと思うんだ」

 美術学校で学び、絵画や映画、演劇に大きな影響を受けているドレ。YouTubeで観られる彼のPVはどれも自身が制作に深く関わっているという。そして「直感なんだけど、自分と価値観をシェア出来る何かがある」と日本に大きな関心を持っていて、ボーナス・トラック《ラ・ジャヴァネーズ》(セルジュ・ゲンズブールのカヴァー)はすべて日本語で歌っている。

 「5月に日本でライヴを行うんだけど、その頃にはもう2~3曲、日本語で歌えるようにしたいと思っているよ。フランスと日本との距離を超えて僕たちの絆は近いものなんだ、とアルバムを聴いて感じてくれたら嬉しいな」

 アーティストとしての存在感と深みを増した彼が日本でどんなステージを観せてくれるのか、期待は膨らむばかりである。

 


LIVE INFO

JULIEN DORE & TOUR in Tokyo
○5/18(木)18:30開場 /19:30開演
会場:UNIT(東京・代官山)
www.unit-tokyo.com