クラシック・現代音楽・ポップスの垣根を軽々と越える室内アンサンブル

 ブルックリンを中心に活動を続ける6人組のコレクティヴ、yMusicは、技巧的な冴えと実験的ポップさを馳せ持ち、「インディークラシック」シーンの中核的な存在となって久しい。yは思春期をネットの発展とともに過ごしたY世代 (1980-90年代生まれ)に由来し、クラシックの垣根を越え同世代の音楽を演奏する。その結成は、人気バンドのナショナルのコンサートで演奏したメンバー達が互いにアンサンブル以上のバンド的な音楽的相性を見出し、意気投合したことがきっかけとなった。

 St.Vincentことアニー・クラーク、ボン・イヴェール、ダーティー・プロジェクターズ、ホセ・ゴンザレス、ベン・フォールズなどコラボレーションしたアーティストの名前は豪華だが、そこには確かな一貫性が感じられる。また、メンバーは演奏のみならずときに編曲にも関わり、インディーポップの音風景に大きく貢献している。例えばベン・フォールズのレコーディングでは楽譜が用意されていない状況から相互的に制作に携わった、とのことだ。

YMUSIC Beautiful Mechanical New Amsterdam Records(2017)

YMUSIC Balance Problems New Amsterdam Records(2017)

YMUSIC First Communal Table(2016)

 ポップの現場で培ったリズミカルなフローと音響センスは自作品にも反映され、それはポストミニマルを演奏する従来のアンサンブルの域を大きく超えている。2011年の『Beautiful Mechanical』では、マイ・ブライテスト・ダイヤモンドことシャラ・ウォーデン、アニー・クラーク、そしてインディークラシックのレーベルNew Amsterdam Recordsの作曲家達を、2014年の『Balance Problems』ではサフジャン・スティーヴンスやクラシックの作曲家ニコ・ミュリーなど実力者たちを主に迎えたショウケース的な作品だったが、これらはいずれもタイム・アウト・ニューヨークにて《クラシック・レコード・オブ・ザ・イヤー》の一位に選ばれている、今年2月発表の『First』では、今までも関わりのあるソン・ラックスのライアン・ロットが全曲を手がけ、「ロックアルバムに流れるフローや構造と張り合う室内楽」というコンセプトで統一された、エネルギーに満ちた意欲的な作品に仕上がった。