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4人の個性と物語があってこそ

 エレクトロニック・ミュージックとバンド・サウンドのクロスオーヴァーがストーン・ローゼズやプライマル・スクリームに大躍進をもたらしたセカンド・サマー・オブ・ラヴ。その遺伝子を隔世的に受け継いでいる彼らのサウンドは、クールで洗練されたタッチと濃縮されたポップ感覚が特徴的だ。

「僕らが考えるポップスは、〈これ〉という具体的な特徴があるわけではないんですけど、自分たちが伝えたいことをリスナーに届けるために、一番広く、深く届けられる方法を意識することでポップスは生まれると思いますし、今回のアルバムを作るにあたっては、今の時代にやるからこそ説得力を持たせられる音や、普遍的に伝わる歌詞、そのテーマを僕らなりに突き詰めたつもりです」(杉本)。

「〈SNS世代のリアルな日常〉というテーマを掲げた作品の歌詞は、SNS世代、つまり僕らの日常や感覚を投影するべく4人が分担して書いたんですけど、個人的にはyahyelとDATSは〈陰〉と〈陽〉の関係にあって、人との差異に苦しむ様子、怒りや悲しみを映し出しているyahyelに対して、DATSはSNS世代の日常を風刺して批判するんじゃなく、今の時代のネガティヴな状況をポジティヴなものに昇華して、人を巻き込んでいこうとしている。そうしたバンドのムードは、ネガティヴな要素がなく、いつも楽天的な、この4人が集うことによって生まれているんだと思います」(大井)。

〈いいね〉やスワイプで人と人が繋がったり切れたり、リアルとヴァーチャルが混在するSNS世代の日常。そこで良い/悪いの判断を下すのではなく、虚実をそのまま描き出すと共に、DATSの作品はその先にある確かな手触りのある世界へと聴き手を誘う、目に見えないアプリのようなものかもしれない。リスナーの音楽ライヴラリに一端インストールされたら、その響きがもたらす一体感は、ライヴの現場においてさらに増幅されることになる。

「リスナーの日常に溶け込めるように、DATSには〈ソリッドで洗練させた音源〉と、〈ライヴ〉という2つの軸があって。ライヴにおいて、僕らがDATSであるためには、アルバムの曲をただ再現するんじゃなく、4人それぞれの個性やストーリーが必要で。例えば、僕はルーツにラウド・ロックやメロコアがあるので、ライヴではバンドTシャツを着て、頭をぶんぶん振り回してポジションの低いベースを演奏していますし、4人が楽曲に込めたパーソナルな部分を増幅させることで、より熱いものになっている。音源を聴いたうえでライヴを観てもらえれば、DATSのすべてがわかってもらえると思います」(伊原卓哉、ベース)。

「今は何を伝えるかより最新の手法やマーケティングなんかが先立っていますけど、例えば、かつてオアシスがネブワース・パークのライヴで25万人ものオーディエンスをそのギター・サウンドで強襲したように、人間が人間としてできることを突き詰めて、それを最大限に活かせる場がたくさんあると思うんです。そういうスピリットを忘れずに、これから活動していきたいですね」(杉本)。