タンゴからアラブ音楽まで得意とするだけでなくその国際色豊かな音楽性を独自の音楽観に昇華するヴァイオリニスト、喜多直毅。彼がジャズピアニスト田中信正と組み、産み出したのはあまりに熱っぽい南米ラテンの歌曲集。ラテンだからという理由だけでは説明できないこの熱情はどこから来るのかと考えると、ヴァイオリンの音にあった。敢えてガット弦(羊の腸を使う弦、現在は利便性の観点からあまり使われない)を用いることで、我々は現代では馴染みのない生々しい弦の音に遭遇する。音が途切れた余韻にすら感じる熱量は尋常ではない。歌詞集も収録されているので、歌の世界とこの弦の音を併せてお愉しみいただこう。