「前作『Crystals』からの2年間は、膨大なツアーと膨大な曲作りを繰り返す日々だったよ。新曲は『Crystals』が完成したほぼ直後に書きはじめたんだ。出来たものがしっくりこなかった時はしばらく寝かせてみたりしてね。今回はいままでで一番ストレスが少なかったかな。素晴らしいツアーをするために曲作りのプロセスから何度か離れる必要があったけど、もしかしたらそれも良かったのかもしれない。『Crystals』のツアーは本当に楽しい時間でさ、俺ら史上もっとも規模が大きくて、もっともエキサイティングなショウができたんだ」(ケヴィン・ラタイチャック:以下同)。

 人を喰ったようなグループ名、トランスやダブステップといったエレクトロニック・ミュージックの要素、聴けば一発で覚えてしまうほどキャッチーな歌メロ、オマケにメンバーの愛嬌たっぷりなキャラクター――いわゆるエレクトロニコア系のバンドのなかでも際立ってチャラい個性を発揮し、特異なポジションを確立中のエスキモー・コールボーイ。当然(?)ピュアなヘヴィー・メタル/メタルコアを信奉するも人たちから、槍玉に挙げられることだって少なくない。しかし、本国ドイツのレッドフィールドより2012年にデビューして以来、そんなアンチの存在も糧に快進撃を続け、2015年にはユニバーサル傘下のスパインファームへ籍を移して世界デビュー。そして、これまでで最長の丸2年間をかけて作り上げた4枚目のニュー・アルバム『The Scene』は、何とメタル・ファンご用達の泣く子も黙るビッグ・レーベル、センチュリー・メディアよりリリースされる運びとなった。

ESKIMO CALLBOY The Scene Century Media/ソニー(2017)

 「ニュー・アルバムのソングライティング方法はさまざまだったよ。ビールやジンといったアルコールを伴う、典型的な夜のセッションのなかで書かれたナンバーもあれば、ただただ大人しくスタジオに腰掛けて柔らかい色の小さな灯りを点け、曲を聴いて、新しいアレンジを試したり、新しい楽器を演奏してみたり。そう、いろんなスタイルに挑戦してみた。ソフトな曲も書いてみたいって前からずっと思っていたしさ。やっとそれが実現したんだ」。

 果たして、ブロステップやトラップなどのスパイスを練り込んだ十八番のアグレッシヴなナンバーに加え、リンプ・ビズキットやコーンを彷彿とさせるニュー・メタルのテクスチャーを散りばめたもの、わりと正調なメタルコア(このバンドが演ると新鮮!)、トロピカル・フィーリング漂う“Frances”に、テンポを下げてドラマティック&エモーショナルに迫った“Calling”など、今回のアルバムではいつも以上にヴァラエティー豊かな楽曲が揃っている。

 「俺たちにとっては、〈古いものを終わらせて新たに始める〉というテーマが大きかったよ。『The Scene』はさまざまな形で解釈することができるんだ。これまである一定の〈シーン〉と呼ばれる狭い枠組みで語られることが多かったけど、そこにちゃんと収まれたことって一度もなくてね。メタルコア・ファンにしてみたらメインストリームのポップに寄りすぎているし、メインストリーム・ポップ好きにはメタルっぽすぎる。ラップ、ヘヴィー・メタル、クラブ・ミュージック……何でもいいけど、いろんな音楽ファンがひとつのショウを一緒に楽しまない手はないのにな。どこかに溶け込むためだけに、特定のファッションや話し方、振る舞いをしなきゃいけない理由なんてない。俺たちはそういうのに一切共感できないね」。

 枠からハミ出すことを恐れず、ボーダレスに自分たちらしさを追求するエスキモー・コールボーイ。PassCodeらが出演する〈SCREAM OUT PARTY〉を含めた9月のジャパン・ツアーでも、ひと皮剥けた姿を観せてくれるだろう。

 


エスキモー・コールボーイ
セバスチャン・バイスラー(ヴォーカル)、ケヴィン・ラタイチャック(ヴォーカル/シンセサイザー)、ダニエル・ハニス(ギター)、パスカル・シロ(ギター)、ダニエル・クロッセック(ベース)、デヴィッド・フリードリッヒ(ドラムス)から成る6人組。2010年にドイツで結成。2012年に『Bury Me In Vegas』でアルバム・デビューし、2013年にはARTEMAの作品に客演して日本でのファン・ベースを固める。その後、欧州やアジアを中心に精力的なライヴ活動を行いながら、2014年に2作目『We Are The Mess』、翌年には3作目『Crystals』をリリース。このたびニュー・アルバム『The Scene』(Century Media/ソニー)を発表し、9月13日にその日本盤がリリースされた。