人間の美意識というのは平安美人の例のように変遷し、それは音楽にも当てはまる。古い時代の楽器の製法・奏法を完璧に記していた書物があっても、それが現代の人々に受け入れられるかはまた別の話。隆盛を極めたいわゆる古楽奏法はコンテンポラリーな文脈からは逃れられない。古楽奏者というのは常に新しい響きを追求する新しいモノ好きでもあるのだ。今回のアルバムは現代の作家ナイマンと、16~17世紀エリザベス朝の音楽がコンセプチュアルに実に絶妙に並べられており、そういった文脈からするとスルリと聴き通せる。英国の天気のような憂い、ヴィオールの繊細な響きに身を委ねたい。