世界初SACD化! 過去最高の高音質で蘇るコーガン絶頂期のステレオ名盤

 今、世界の中古レコード市場で価格が急騰しているのが、旧ソ連の巨匠コーガン(1924~1982)が英仏のコロムビアからリリースした6枚の初期ステレオLPである。発行枚数の少なさ、録音と製盤の素晴らしさ、そして何よりコーガンの鬼気迫る演奏の物凄さが人気再燃を呼び、完全に需給バランスが崩れたことが1枚数十万円から百万円という異常な高値の理由であろう。その6枚分の音源を、英仏本国のオリジナル・マスターテープより世界初SACD化したのが、今回のタワー企画盤である。

LEONID KOGAN,CONSTANTIN SILVESTRI,PARIS CONSERVATOIRE ORCHESTRA ベートーヴェン/チャイコフスキー/メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲/モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲第3番/ 他 〈タワーレコード限定〉 TOWER RECORDS DEFINITION SERIES(2017)

LEONID KOGAN,KIRILL KONDRASHIN,PHILHARMONIA ORCHESTRA ブラームス: ヴァイオリン協奏曲/ラロ: スペイン交響曲/他 〈特別収録〉ヴァイオリン・デュオ〈タワーレコード限定〉 TOWER RECORDS DEFINITION SERIES(2017)

 コーガンは1951年にベルギーで開催された第1回エリザベート王妃国際コンクールに優勝して、一躍世界に名を轟かせたヴァイオリニストである。1955年から西側での本格的な活動を開始し、1958年に初来日。親日家となり1978年まで計8度も来日している。コーガンは非常に小柄だったが、ひとたびヴァイオリンを手にしてステージに立つと圧倒的な演奏を聴かせた。現代のトップ・ヴァイオリニストにもひけをとらない超絶技巧、多彩かつ鮮やかな音色美、人並み外れた集中力、端正な造形美、そして音楽の内側から溢れだす類い稀な情熱。これだけ素晴らしい芸術家のLPが希少盤となったのは、彼の表現主義的とも言える演奏が、当時の時代精神に少し合っていなかったためだろう。同じ旧ソ連なら彼の先輩にあたるオイストラフ(1908~1974)の揺るぎない安定感と穏やかな情緒の方が人気を博していた。もっともオイストラフとコーガンは私生活では大の仲良しであったのだが。しかし、コーガン没後の人気再燃は彼の芸術がいかに魅力的で優れたものであったかを証明している。ベートーヴェンやブラームスでの雄大なスケールと高貴な音楽性、チャイコフスキーやラロでの濃厚な民族色と圧倒的な技巧、そして妻エリザベータとの美音と美音が交錯するヴァイオリン・デュオの愉悦。極上の名演の数々が、オリジナルLPに勝るとも劣らない高音質で眼前に蘇っている。