違うフィールドで活躍する友人同士がデュオを結成
ピアノ2台のアンサンブルはよく耳にするけれど、ヴァイオリン2本、あるいはヴァイオリンとヴィオラのデュオはなかなか出会わない。実際にやってみるとかなり難しいからだろうが、それに挑戦したのがTSUKEMENのリーダーTAIRIKUと東京交響楽団のコンサートマスター水谷晃だ。
「桐朋学園音楽大学の入学生オリエンテーションでたまたま隣に座ったのが縁で、それから一緒に弦楽四重奏をやったり、アンサンブルをしたりするような親しい友人になりました」と水谷。学生時代からお互いをよく知る友人同士だった。その後、活躍のフィールドは違ったが、いつでも連絡を取り合う仲であった。
「たまたま僕が〈異種格闘戯〉という多ジャンルの方とのコラボレーションをする機会があり、その時に水谷君にも出てもらったのですが、その時のデュオがプロデューサーの耳にとまり、いつの間にかレコーディングするところまで話が進みました」とTAIRIKU。そのアルバムが『MIZUTANI×TAIRIKU』である。
ヘンデルの《パッサカリア》に始まり、モーツァルトの《ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲》など、これまでに書かれた二重奏曲もあるが、このアルバムのために編曲されたプッチーニ《誰も寝てはならぬ》やスメタナ《モルダウ》などが並ぶ。
「探してみると、ヴァイオリン2本、あるいはヴァイオリンとヴィオラの2本の編成はとても少ないんです。そこでクラシックの名曲を編曲してもらうことになりました」(TAIRIKU)
「僕の場合は日々オーケストラで活動しているので、《モルダウ》のようなオーケストラ楽曲が違った目線から見えることが新鮮でした。実際に他の楽器が出している音をヴァイオリンで出さなければならないので、かなりヴィルトゥオーゾっぽい難しい部分もたくさんあって、実際の演奏はなかなか大変でした」(水谷)
録音は軽井沢の大賀ホールで。録音の雰囲気はどうだったのだろう?
「録音というよりも、何度もテイクを重ねて行くと、生演奏に近い感じになって行きましたね」(TAIRIKU)
「だんだん音楽の中に入って行くと、あ、そっちがそう来るなら、こっちもこう反応するよ、みたいな音楽的なやりとりがあって、それが録音の中にもライヴのような感覚を作り出していると思います」(水谷)
録音楽曲はその他、フォーレ《シチリアーノ》、チャイコフスキー《アンダンテ・カンタービレ》、ドヴォルザーク《ユモレスク》など名曲ばかり。弦楽器2本による意外な音の世界が広がるアルバムとなっている。