バーンスタイン生誕100年、DGが音楽劇2作のCD&DVDセット再発
レナード・バーンスタインは1990年夏、札幌市で国際教育音楽祭PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)を立ち上げた。開会スピーチでは同年6月末に亡くなった1歳年下で親交のあったマエストロ、渡邉暁雄を追悼して「私も間もなく、君のところへ行く」と言い、周囲をギョッとさせた。バーンスタインの予感は正しかった。帰国後にボストン交響楽団と共演(ベートーヴェンの《交響曲第7番》などで、ライヴ盤がDGから出ている)した後、引退を表明。「残された時間はすべて、次代を担う若い音楽家たちの教育に充てる」と宣言したが、10月14日に渡邉の後を追ってしまった。当時の私はドイツに駐在していて、現地紙の1つが「世界楽壇最大の問題の1つが解消してしまった」と、実に絶妙な見出しでバーンスタインの死を悼んだだのを覚えている。
「問題」の1つは「指揮者と同じかそれ以上に作曲家として名を残したい」と考えていた、本人の作風だった。サイモン・ラトルが「生前は一線の専門作曲家に比べ、スタイルの古さをしばしば指摘された」と振り返ったように、交響曲やオペラの伝統分野で〈わかりやすい〉作品を書き続けたバーンスタインの分は悪かった。だが「没後30年近くを経た今、スタイルの新旧は超越され、作品を純粋に味わう環境が整った」(ラトル)
LEONARDO BERNSTEIN バーンスタイン:ウェスト・サイド・ストーリー(全曲) Deutsche Grammophon(2018)
LEONARDO BERNSTEIN,LONDON SYMPHONY ORCHESTRA バーンスタイン:キャンディード (全曲) Deutsche Grammophon(2018)
米国人指揮者で初めて、自国の大オーケストラの常任ポストに就いた前年、作曲家バーンスタインはブロードウェーのミュージカルで「ウエストサイド物語」の大ヒットを放ったが、結局、クラシック音楽中心のキャリアを選んだ。生前は「この作品以外も聴いて欲しい」と言い続けたが、DGが84年にホセ・カレーラス(テノール)、キリ・テ・カナワ(ソプラノ)ら当時のオペラの大スターによる全曲盤の録音を提案すると快諾、スペイン訛りが抜けないカレーラスをシゴキまくる映像でも明らかなように〈立派な作品〉として残すことに執念を燃やした。確かにこの録音が転機となり、交響楽団と名歌手による演奏会形式上演も当たり前になった。今年3月にはNHK交響楽団が首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィとともに、東京・渋谷のオーチャードホールで全曲演奏に挑む。
LIVE INFORMATION
〈レナード・バーンスタイン生誕100周年記念ウエスト・サイド・ストーリー〈演奏会形式〉~シンフォニー・コンサート版(原語上演・字幕付き)~〉
○3/4(日) 3/6(火)15:00開演
出演:パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)NHK交響楽団
【マリア】ジュリア・ブロック
【トニー】ライアン・シルヴァーマン
【アニタ】アマンダ・リン・ボトムス
【リフ】ティモシー・マクデヴィット
【ベルナルド】ケリー・マークグラフ
会場:Bunkamuraオーチャードホール
www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/18_wss/