ドビュッシー自身の演奏も聴ける、良いとこどりの凝縮版!

 2018年、フランスの作曲家、クロード・ドビュッシー(1862~1918)が没後100年を迎えた。すでにワーナー・クラシックスからは、CD33枚からなる世界初のドビュッシー作品全集のボックスセットが発売され、クラシック・ファンの間で大きな話題を呼んでいるが、ここでご紹介するCD3枚組は、さらに幅広い層にドビュッシーの魅力をアピールするために、そのエッセンスを凝縮したものである。ジャケット・デザインも、ドビュッシーの肖像と月と海をあしらった親しみやすいイラストとなっている。このイラストは彼の代表作《月の光》を想起させるが、実はもっと深い意味を含んでいるようにも思える。海に浮かぶ月は、ドビュッシーと同時代の画家たちが好んで取り上げた題材で、例えばパリで活躍したアレクサンダー・ハリソンが1892~3年に描いた《海景》は、夕闇の微妙な色彩といい、穏やかに波が打ち寄せる海辺の佇まいといい、ドビュッシーの音楽との親近性が感じられる。

VARIOUS ARTISTS [ドビュッシー没後100年]印象派~ドビュッシーの世界 WARNER MUSIC JAPAN/ワーナー(2018)

 収録曲はドビュッシーの名作群から良い所採りがされており、最も長いトラックでも10分35秒、殆どの曲は3~4分に収まり、しかもフェイドイン、アウトが一切ないのが良い。ピアノ曲では 《月の光》《アラベスク》《喜びの島》などの名作を、ウーセ、ベロフ、フランソワなど歴代の名手たちに割り振っていて、次々に個性的な演奏を披露してゆくのが何とも楽しい。CD1のラストで、ドビュッシー自身が当時の自動ピアノのために収録した演奏が聴けるのも貴重だ。CD2の室内楽では現代のエベーヌ弦楽四重奏団やフルートのパユがセンス抜群の演奏を披露。歌曲《艶なる宴》での名ソプラノ、デセイの絶唱も胸を打つ。CD3はオーケストラ曲集でマルティノン指揮の《牧神の午後への前奏曲》、パイヤール指揮の《小組曲》など最高の名演で味わえる。ボーナス・トラックでドビュッシーが編曲したサティの《ジムノペディ》第1番が、我らが佐渡裕の指揮で入っているのも嬉しい。