「子どもたちに聴いてほしい名曲を集めました。私も子どものころからクラシックの小品や名曲をずっと聴き続け、心が癒され、自分でも弾いてみたいと思い、いまでも大好きな作品が多いものですから」

 三浦友理枝は、幼いころはからだが弱かったという。よく風邪をひいて寝込んでいた。両親はそんな彼女がベッドで退屈な時間を過ごさないようにと、枕元でいつもピアノの名曲を集めた録音をかけてくれた。それはショパンの《小犬のワルツ》だったり、シューマンの《トロイメライ》だったり…。

 「ピアノのレッスンに通うようになってからは、自分が勉強しているもの以外に友だちが弾いている曲にも惹かれ、いろんな作品に出会うたびに楽譜を買い求め、いつか弾いてみたいと思う作品が増えていきました」

三浦友理枝 Miniatures avex-CLASSICS(2014)

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 彼女は演奏するプログラムに非常に凝る人である。今回の選曲は、三浦友理枝がこれまでアンコールなどで弾いてきた曲、他のピアニストの演奏に触発された曲、子どもがコンクールやグレード試験などで演奏する課題曲、いつか弾いてみたいと願っていた曲など、さまざまな曲が選ばれている。さながら、三浦友理枝のピアニストとしての軌跡を垣間見るようだ。

 ここに登場する各作品に彼女の思い出が詰まっている。小学生のころに弾き始めた曲はもちろん、国際コンクールに参加するようになり、何度もその場で演奏した曲、留学先のロンドンで学んだ曲などもある。

 「ドビュッシーの《ゴリウォーグのケークウォーク》は、小学校1年生のときに自分から弾きたいといった曲です。リャードフの作品は中学生のときに岡田博美さんのリサイタルのアンコールで聴き、本当にオルゴールが鳴っているような響きに魅せられました。グリーグの作品はレイフ・オヴェ・アンスネスの演奏で開眼し、あの空気感が出せればと願って演奏しています。今回収録した曲は、すべて楽譜がそろっていました。いつか弾きたいと思っていた曲が多かったので、用意万端でしたね(笑)。ですから、10年から15年ほど弾き続けた曲も多く、まさに思い出が詰まったアルバムです。ひとつこだわったのは、5分以内の曲でまとめたこと。小品集ですから長い作品は入っていません。いろんな色彩や物語や風景などが感じられる、カラフルな選曲になったと思っています」

 彼女の演奏は確固たる主張をもち、常に自分にきびしく前向き。演奏からは小品でもけっして手を抜かない真摯な気持ちがただよい、作品への愛着と作曲家への敬意が感じられる。手芸が好きという彼女は、手を使ったこまかい作業を好む。それがピアノにも反映し、精緻でぬくもりに満ちた音色が聴き手を温かく包む。